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モビリティの時代 「スペシャル」は車を守れるか マツダ、ホンダのEV市場への新たな挑戦

 ジャパン・モビリティショーのマツダ・ブースは写真撮影する多くの人が集まり、身動きできません。目の前にはマツダが企業ブランドのアイコンとして開発した「MAZDA ICONIC SP」。デザインはイタリアのカロッツェリアに勝るとも劣らない優美なボディを描き、ドアはカモメの羽のように開くガルウィング。エンジンはもちろん、ロータリー。自動車メーカーは地球温暖化を防止する脱炭素が必須命題ですから、動力源は電気。水素などを利用してロータリーで発電して高性能の走りを実現するスポーツカーです。

マツダはロータリー搭載の華麗なスポーツカー

 誰もが一度は乗りたいと思わせる華麗なスペシェルティーカーにロータリーエンジン。車好きなら、現物を目にして写真を撮りたいと考えるのは当然です。 

マツダのブースには人、人、人

 1967年に「コスモスポーツ」を発売して以来、ロータリーエンジンはマツダのアイコンです。石油危機で経営危機に陥り、その後フォード傘下に入るなど経営の屋台骨がふらふらになりながらも、ロータリーエンジンを手放しません。「誰が救済するのか」と揶揄されようが、「われわれにはロータリーがある」との誇りを決して捨てませんでした。

 内燃機関の終焉から電気自動車(EV)へ移行する100年に1度の変革期。マツダにとって逆風から追い風に転じる幸運と映っているかもしれません。ロータリーエンジンは水素などCO2を排出しない多様な燃料を利用できるうえ、駆動系をコンパクトに仕上げられます。EVを増やそうにもバッテリーの蓄電能力や充電設備にまだ不安があるため、一気に増えるわけではありせん。エンジンで発電しながら、脱炭素を実現するクルマ創りは現実的な解の一つです。ロータリーエンジンは再び脚光を浴びる時を迎えました。

 マツダにはロータリーエンジン開発の当時から継承するもう一つのアイコンがあります。 「運転する人間が楽しむために車を創る」という哲学です。毛籠勝弘社長は「移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社として、多くの方々にクルマが好きと言っていただける未来をつくっていきたい。走る歓びは生きる歓び」と強調します。

アイコンは「走る歓び」

 マツダのブースが物語っています。「MAZDA ICONIC SP」を主役に据え、周りには「ロードスター」の初代モデルなどが展示され、さらに幼稚園児や小学生が座れる3分の2スケールのモデルを制作。子供たちに自由に乗ってもらい、車の格好良さを体感する場を設けました。家族連れの皆さんはお子さんをロードスターに乗せて記念写真。この体験からクルマ好きが育っていくわけです。エンジン車からEVへ切り替わろうが、「スペシャル」な気分を満喫できるスポーツカーを創るのがミッション。マツダはこう宣言しています。

ホンダ プレリュード

ホンダも未来を根源から見据える

 ホンダも「スペシャル」から離れられません。三部敏弘社長は無人タクシーや多目的に利用するEV、ビジネスジェット、空飛ぶクルマなど多岐にわたる自社の未来を語った後、ホンダの未来への前奏曲として紹介したのが「プレリュード」。1980年代、大ヒットしたブランドの再来です。私も乗り回しました。走行性能を最大限に引き出すため、ハンドル操作に合わせて四輪が動く4WSと呼ばれたシステムを採用。ライトは初代ロードスターと同じリトラクタブルランプ。日中はフロントボデイに格納され、夜間はボディから蓋が開くように登場、前方を照らし出します。欧州の高級スポーツカーって感じですね。格好良かった。

 ホンダはF1(フォミューラーワン)の強さを市販車にも投射して「NSX」「S2000」など高性能スポーツカーを開発し、発売しました。いずれもホンダブランドを世界に輝かせました。ショーではGMとの共同展開する箱形のタクシーなど多目的に利用できるボディデザインを数多く展示しましたが、ホンダの根源は「レースに勝つ車を創る」という創業以来変わらぬ思いを「プレリュード」に託しています。

日産自動車のコンセプトカー

日産は「GT-R」を前面に

 日産自動車もショーの目玉は「GT-R」。圧倒的な走行性能でマニアックなファンが多くいます。EVの未来を語る5つのコンセプトカーを発表しましたが、最も力が入り注目を浴びたのはマッチョなスポーツカー。見た目はちょっと未来っぽくなっていますが、誰がみても「GT-R」がそこにいます。  

 EVはネットと人工知能によって自動運転、エンターテインメントなど多くの機能を満載します。エンジン車の時代と違う「移動」を再考しながら、進化するはずです。主力のEVは多目的に利用できる「箱形」デザイン。スポーツカーなどスペシャルなクルマはどう位置づけられるのか。

 ギアシフトを思い出してください。50年前は運転しながら、クラッチを踏んでマニュアルシフトで「ロー」「セカンド」などとギアを変え、走行性能を引き出しました。今はオートマチックでギアは変わり、ドライバーはアクセルとブレーキに専念するだけで済みます。

スペシャルはどこまで生き残るか

 EVの自動運転が信頼できるレベルに到達した時、スポーツカーを楽しむ層はどれだけ残るでしょうか。今よりは縮小するのは間違いないはずです。時々、スポーツカーの原型ともいえる「スーパーセブン」を楽しんでいる人を見かけます。燃費や乗りやすさは二の次。自動車の性能を楽しむためには手間やお金など気にしない。必ず「スペシャル」なスポーツカーを購入する層はいます。マツダやホンダが自画像を描くように「スペシャル」に挑む姿はEV時代の市場変化にどう影響するのでしょう?

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