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ニデック挫折の教訓 ⑤ 明日は、あなたの会社が「ニデック」に

 ニデックの第三者委員会が公表した調査報告書を読み、「明日はわが身」と恐れ慄いた人は多かったのではないでしょうか。私もその1人です。対外的には人気があり、高い評価を集めている企業でも、その内実はまったく別物。首を傾げながら、友人が褒め称える意見を聞くことすらあります。だれもが心当たりがあるはずです。

過度なプレッシャーが当たり前

 一見、ニデックで繰り広げられた不祥事は、異常事態の連続に映ります。創業者の永守重信氏が無理難題を突きつける「過度なプレッシャー」が当たり前となってしまった企業風土、社内の惨状を知ってか知らずか社外取締役は取締役会で目の前の議題に異論を挟まず頷くだけ。会計監査法人のPwCジャパンは、不正会計が発覚するまで「無限定適正意見」を表明し、事実上見逃し続ける。

 「過度なプレッシャー」の余波は通常業務にも及んでいました。深夜に及ぶ会議を繰り返し、到底無理な目標をあたかも達成したかのように見せかける経理処理など書類を偽造する。外部からみれば異常な風景は、社員の多くにとってはいつも通り普通の風景。なんとか帳尻を合わせようと知恵を絞り、居酒屋で愚痴をこぼす親しい社員を慰め、励ましたことでしょう。

 多くの異常事態は対外的には封じ込められます。言い換えれば秘匿されるのです。多数の社員が経営陣はじめ幹部や社員を巻き込む不正行為を演じる場面を目撃しているのですから、いわゆる「たれこみ」、言い換えればハラスメントなどを公に知らしめる内部通報制度を活用することを考えた人はいたはずです。

内部通報は皆無

 ましてニデックのようにグローバル展開する大企業なら、もっと早い段階で告発があってもおかしくはありません。ニデックの社員数は連結では10万人を超え、日本だけでも9000人近い社員がいます。「これは内密に」といっても、ヒトの口には戸は立てられません。昔は新聞やテレビ、週刊誌、今はネットなどSNSがあります。不満をぶちまけるメディアはいつでも待ち構えています。

「結局、企業統治は機能しない」。天上から奈落に転じたニデックの挫折は断言しているのです。

 2000年代に入って国や東京証券取引所は企業経営者の厳しい倫理に求めるコーポレートガバナンスを徹底するよう求めていました。内部通報制度はその一つです。上場企業は海外からの投資を呼ぶこむために企業統治の体制を整備しましたが、実態は「馬子にも衣装」。「仏を作って魂入れず」では機能するわけがありません。

 仮に告発して企業に是正を求めても、個人が会社と闘っても勝てるわけがない。事実上会社をクビになり、給与がなくなったらどうするのか。家族は路頭に迷うと悩み、諦めたとしても誰も責められません。

予備軍は数多

 ニデックの予備軍は数多あります。創業家が経営の実権を手放さないトヨタ自動車、キヤノンでは社長の椅子は軽く、簡単に首がすげ替えられます。世界的なエアコンメーカーに飛躍した代金は中興の祖が居座り続けています。大人気のニトリも創業者の似鳥昭雄氏が社長に復帰し、全ての業務を取り仕切っています。素敵な笑顔で知られる似鳥さんですが、その素顔は別。一時期、ニデック同様、増益の連続記録達成に固執しましたが、今は修正していますから少しは収まったでしょうか。

 明日、ニデックに変わって新たな「ニデック」が現れるかもしれません。つくづく「会社は誰のものか」と痛感します。

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