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相次ぐトヨタ系の不正、自立と個性を消す企業統治のツケ「だろうなあ」の社名が続く 

 日野、豊田自動織機、ダイハツ工業と続くが、デンソー、アイシンは出てこない。「納得できるなあ」。後付けと思われるかもしれませんが、辻褄が合う。率直な感想です。

トヨタ系列で不正が続くのか

 トヨタ自動車のグループ企業による不正行為が止まりません。2021年7月に販売子会社のトヨタモビリティ東京で排ガス成分の検査を手抜きしたほか、パーキングブレーキの数値書き換えが判明。系列販売店以外で高い人気を集める「スピード車検」に対抗するため、車検する整備士の作業と心理的な負担が増加、不正を招いたようです。スピード車検で全国展開するチェーン店の創業者とお会いした時に「車検作業の速さと信頼、費用負担でトヨタなどのディーラーに負けるはずがない」と胸を張っていましたが、まさにその通りの衝撃を与えていました。

日野は22年に排ガス不正

 不正事案で最も驚いたのは日野自動車。2022年にトラックのエンジンの排ガスデータを捏造し、国内販売が事実上ストップしました。トラック最大手でTQC(全社的品質管理)や高効率の生産方式などで自動車業界トップ水準だっただけに、「なぜ日野がそんな不正に手を染めるのか」と首を傾げるしかありませんでした。社内調査によると、不正に異を唱える雰囲気ではなかったと指摘していましたが、あんなに風通しの良い会社がなぜモノが言えなくなったのか。こちらはもっと不思議でした。

23年3月に豊田自動織機

 2023年3月には豊田自動織機でフォークリフト向けエンジンの排ガスデータを差し替えるなどの行為がわかりました。同社はトヨタ自動車を創業した由緒正しき会社です。トヨタイズムが骨の髄まで染み込み、経営トップは創業家出身者が長らく座っていました。不正の原因は社内で開発も認証も実行していたので、第三者の目によるチェックが効かなかったとしています。

4月にダイハツが認証不正

 翌月の4月28日、ダイハツが海外市場向け4車種の側面衝突試験の認証申請で不正があったと発表しました。対象は8万8000台。タイ、メキシコ、マレーシア、サウジアラビアなど14か国で出荷を停止しました。ダイハツはトヨタにとって海外向け小型車を開発・生産する役割を背負っています。認証不正で出荷停止した国々はいずれもトヨタにとって重要なマーケット。大きな痛手です。

トヨタにとって「あってはならない」

 トヨタの強さは、徹底した生産管理に裏打ちされた高品質と販売力にあります。販売子会社から始まる不正の連鎖は、トヨタにとってこれまでの信頼を傷つける「あってはならないこと」。豊田章男会長は「それぞれの部署、それぞれの人に全体が見えてない」、佐藤恒治社長は「トヨタとして認証業務の総点検に全力で取り組む」と話し、第三者の視点も交えてグループの認証業務全体を調べる考えを明らかにしています。トヨタは連結子会社だけで559社もあり、企業統治が行き届いていないとの指摘があります。

日野もダイハツも系列とはいえ独自の哲学で自立

 果たしてそうでしょうか。ちょっと遠目からみると、企業統治が行き届かない理由があぶり出てきます。日野自動車、ダイハツはいずれも独自の自動車哲学を持ち、トラック、あるいは軽自動車で常にシェアトップをめざす会社でした。例えばダイハツの三輪車「ミゼット」。機能性、デザインは今でも記憶に残るユニークな車です。トヨタとの資本関係からグループ企業と呼ばれていますが、日野もダイハツも生え抜き社員の胸の内は「トヨタに依存しなくても生きていける」と独立自尊の思いを堅持し、走り続けていました。

 しかし、2009年に変わります。就任した豊田章男社長は創業家のトヨタとしての求心力と忠誠心を取り戻すため、奥田碩氏ら過去の社長歴任者の影響力を排除するため、グループ会社に子飼いの人材を送り込みます。

豊田章男社長は奥田碩時代を消し去り、豊田家回帰へ

 トヨタそのものが「奥田さんの時代は終わった」と部長クラスが異口同音に語る通り、日野もダイハツもそれぞれ社風刷新を名目にトヨタへの求心力を一気に高めます。社風刷新の成果をどう表すか。口答試験だけではなく経営指標の向上が必須課題です。開発期間の短縮、生産効率、作業時間の短縮、性能アップなどが現場に多くの無理が降りかかる風景がすぐに想像できます。

 ダイハツにとって不運だったのは豊田章男社長はダイハツよりも軽でトップ争いをしたライバルであるスズキに気持ちが向かっています。スズキ中興の祖である鈴木修さんの魅力もあって資本提携を機会にファンになってしまっているかのようです。日野が不正事案を起こした時、豊田章男社長は親会社でありながら、子会社を見放すというびっくりする発言をしましたが、完全子会社であるダイハツも縁を切られるのでしょうか。そうしたら、一気にダイハツとスズキが経営統合するなんて話が飛び出すでしょう。これは余計でした。

 それでは、トヨタ創業の豊田自動織機は日野やダイハツと違って嫌われている訳がないと受け取る向きもあるでしょう。実は違うプレッシャーが掛かるのです。豊田本家とは違う豊田出身者がトップの座を占める歴史もあって、豊田家の事情という他人は知り得ない難題も降りかかってきます。

デンソーやアイシンは部品で世界トップクラス

 デンソーやアイシンでなぜ不正事案が発覚しないのか。日野もダイハツも豊田自動織機も不正に手を染めたのですから、可能性はゼロありません。明言できるのは、これまではトヨタ本体に箸の上げ下ろしまで指示される気はない。きっとこれからもない。これに尽きます。系列部品メーカーとしての立場でありながら、デンソーもアイシンも技術開発、生産などで世界的なメーカーですから。

 豊田章男社長はデンソーに腹心を送り込み、系列部品メーカーの取り込みをめざしたこともあります。万が一、成功していたら・・・。日野やダイハツの二の舞を演じるのでしょうか。

豊田家の求心力と忠誠が裏目?

 トヨタへの吸収力と忠誠を求めた豊田章男氏は13年間の社長時代を終え、会長として経営の実権を握り続けます。グループ企業の個性や実力を奪い、トヨタ一色に染めることに成功したかもしれませんが、それは自らを律する企業統治も消し去る結果を招いています。日野、ダイハツと続く不正事案が止まることを祈っています。

 それにしてもダイハツは今後、どうなるのでしょう。近いうちに別稿で書きます。

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