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日本電産とジャパネット、経営が継承力なら勝負はついている

 学生の頃から定期的に通う古本屋さんに向かったら、思わぬ休店でした。「あら、残念」と見上げたら、シャッターの上に張り紙があります。

 「新しい本(発売一年くらい)は読んだらすぐに売ってください」

 「古い本(30年以上たった)でも処分する前に御相談下さい」

 日本電産の社長人事を思い出し、噴き出してしまいました。

 

 「外部の人間が内部の人間より優秀だというのは錯覚であり、外部から後継者を探し続けたのは重大なミスだった。今後、社外からトップを迎えることは考えていない」

外部の人間が内部より優秀だと錯覚していた

 日本電産の創業者、永守重信会長は語っています。日本電産は9月2日に関潤社長が退任しました。関さんは2年前の2020年に社長争いに敗れた日産自動車から移り、21年6月にCEO(最高経営責任者)に就任しました。もう何度目か忘れましたが、外部から優秀な人材をスカウトする永守さんの目に叶ったはずなのに、2022年4月にCOO(最高執行責任者)へ降格。過去最高の業績をあげていたにもかかわらず、永守さんからダメを出され、退任するのが確実視されていました。後任の社長は9月3日、副会長の小部博志さんです。

 小部さんは、永守さんと同じ職業訓練大学校(現在の職業能力開発総合大学校)を卒業、1973年に日本電産が創業した当時からのメンバーです。「絶対的信頼の置ける人物」と永守さんは話したそうですが、当たり前です。日本電産を世界企業に育て上げたのは周囲にしっかりした右腕がいたからです。最初から社長に選べば、後継者選びで失態を繰り返すことはなかったのにと考えるのは1人、2人だけではないでしょう。

新社長は創業メンバーで2年の期限付き

 驚いたのは小部社長は2024年4月までの期限付きです。この2年間で新しい社長を育成し、選ぶ考えです。副社長ら現在の経営陣から選ぶそうです。小部さんにすべてを任されないのですかねえ。ずいぶん遠回りする後継者選びだと思いますが、結局は現在は永守さんのお目にかなう人材がいないことを示しているわけです。きっと永守さんのクローン、流行り言葉言えばアバターを創らないかぎり社長は確定しないでしょう。

 企業経営は成長を続け、高収益をあげるかどうかで評価されます。世界で唯一の技術やサービスを持つ、地味ながら誰も製造できない「ものづくり」に長けている、など企業の強さはそれぞれです。創業時から血の汗と涙を流しながら、世界企業に育てた優秀な経営者なら、「もう満足」といえるかもしれません。

企業経営を永続性で評価したら

 しかし、企業は生き物です。誕生したら、生き続けようとする本能を持っています。ソフトバンクグループの創業者、孫正義さんが「300年続く会社を作りたい」と4年ほど前に話していたのを覚えていますか。海外から後任と目される優秀な人材を高額な報酬で集めましたが、次々と短期的に辞めています。企業経営を評価する尺度に企業の永続性を加えたら、ソフトバンクの経営は何点になるのか。

 日本電産も同じです。カリスマ経営者と名を馳せた永守さんです。発言ひとつで日経平均が上昇するオーラーを発していたのですが、株主総会で後継者問題を問われ、「不満があるなら株式を売ってくれ」といった趣旨を発言していました。自らの経営力の弱さを自覚している証拠です。とても残念。

高田明さんの継承は見事

 永続性の視点からみたら、通販のジャパネットは高く評価できるのではないでしょうか。2015年、創業者の高田明さんは社長を息子の高田旭人さんへと引き継ぎ、その後はすべてを任せます。高田明さんが毎日のように通販番組に出演して、長崎のアクセントを巧妙に使った軽快な語り口で商品を紹介。当時珍しかったテレビ通販という販売方法を確立した人です。明さんがテレビ出演しないなら、通販の力は衰え、会社は持つのかといわれたほどです。

通販の枠を超え、新しいビジネスモデルを

 旭人氏は明さんの反対を押し切り、改革に挑んでいます。番組作りや商品企画などの現場を従業員に任せます。創業者を見上げていた従業員のモラルもあがり、企画力も高まります。売り込む商品比率の変更、衣食住や健康食品など新たな商品ジャンルへの乗り出す一方、修理などメンテナンスのサービスにも力を入れます。BS放送の免許を取得し、直近では北九州を拠点とする航空会社に出資します。事業は通販の枠を超え、ジャパネットならではのビジネスモデルが創出されています。

 あと10年後を見てみたいです。日本を代表する企業として気を吐いているのは日本電産かジャパネットか。現時点では勝負はついています。

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