ホンダが消える41 利益ゼロ、未来が見えない日産と共倒れするのか
日産自動車が大規模なリストラを発表しました。世界の生産能力を20%も削減するほか、従業員の1割弱に当たる9000人程度を削減します。驚いたのは三菱自動車の持ち株34%のうち10%を売却します。2024年4ー6月期で事実上、赤字経営に追い込まれた窮地に立つとはいえ、なんとも後先を考えない場当たり的なリストラです。内田誠社長がパニックに陥ったのか、内情は予想以上に悪いのか。悲惨の一言に尽きる日産とEVで提携するホンダはどんな視線で見つめているのでしょうか。
リストラを繰り返す日産
日産が大規模なリストラに追い込まれるのは2019年以来。つい5年前です。世界の生産拠点を閉鎖・縮小する一方、約1万2500人を削減する計画でした。1999年に資本提携先から送り込まれたカルロス・ゴーン氏が経営の実権を握って以来、日産を表現する常套句はリバイバルプランでしたが、その結末はリストラの繰り返し。
当初は、V字回復と称賛されていましたが、ゴーン氏が進める世界戦略は身の丈に合わない野望に満ちた拡大だけがその実相でした。当然、数字の辻褄が合わなくなります。2019年当時も生産過剰が仇となり、今回と同じ理由である北米の販売奨励金額が重荷となって経営が危機に。
1980年代から日産の経営を眺めてきただけに、「V字回復→生産・販売拡大→過剰な計画に伴う損金処理」の繰り返しはもう見慣れた風景です。ゴーン時代は良くも悪くもカリスマ経営による求心力をテコに業績の数字を繕ってきましたが、ゴーンを追放し、跡を継いだ西川廣人、内田誠の両社長はそのカリスマ性を持ち合わせていませんから、小手先の経営改革で終わってしまい、裸の数字が表舞台に出てしまいます。
一心同体の三菱株も売却
業績悪化の原因としてゴーン以来、トップダウンに慣れた日産社内に「指示待ち」の風土があると指摘する新聞もありましたが、現場から声を上げても経営陣に聞く耳があったのかどうか。投資家が喜ぶ見栄えの良い経営計画の絵作りに奔走するばかりで、現場を忘れている社長を遠目で見ていたら、諦めの境地に耐える社員が多数占めるのも当然でしょう。
三菱自動車の株式も売却します。厳しい財務状況を補う狙いですが、手にする700億円程度の資金で日産の未来が再び開けるとは思えません。三菱自動車も日産と同様、何度も経営破綻の危機を経験し、生きながらえている自動車メーカーです。経営規模を考えたら、単独で存続するのは無理でしょう。強みは東南アジアなどで人気が高いブランド力と共に、世界で先駆けてEVを開発した経験です。
日産は持ち株比率34%を握り、子会社化しています。三菱は日産傘下に入ることで存続できるというよりは、日産こそ三菱と一体となっているから自らの存続の可能性を維持していると考えるべきでしょう。日産と三菱が共同開発して大ヒットした軽EVがその象徴です。
次代はEVが主力車種になります。ハイブリッド車で大きく遅れをとった日産と三菱はトヨタ自動車がモタモタしているEV開発で先行しているのです。欧米や中国のEVに対抗するためにも日産は三菱を手放すわけにはいきませんし、数少ない生き残りのカードです。
協業見直しは間に合う
ホンダはちょっと不甲斐ない日産・三菱をEVで協業するパートナーとして選びました。狙いは、世界のEV市場を席巻するテスラ、BYDに対抗できるサプライチェーンを構築することです。追い上げるためにも、電気モーターなどの駆動系部品、バッテリーの調達コストを押し下げるしかありません。とりわけ中国のE Vメーカーは政府の後押しを受けて部品を大量生産し、低価格車を軸に輸出を展開しています。ホンダは日産の協業によって中国勢やテスラに追いつく時間を節約する選択をしたのです。
EVの基本ソフト(OS)の開発も急務でした。EVの性能はインターネットや人工知能(AI)を駆使するソフトウエアで決まります。今後の開発・生産投資にどれだけ資金を投入できるかが勝負の分かれ目となります。投資負担を考えれば、ホンダ単独よりは日産と手を組んだ方が重荷もリスクも軽減できます。
しかし、EV市場で勝ち抜くためには、強固なパートナーシップが基盤になければいけません。ホンダはこれからも日産・三菱とガッチリと手を組んで挑戦できるでしょうか。日産や三菱が経営危機を理由にホンダにおんぶに抱っこをお願いする可能性があるかもしれません。ホンダにそんな余力はありません。確実に共倒れします。たとえ日産が経営危機を乗り切っても、EV投資などの負担配分でホンダに頼るのは確実です。協業のはずが経営を支援する立場に追い込まれる恐れもあります。
協業をご破算するのなら、今です。ホンダ単独なら、未来はまだあります。