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日生、出向先から内部情報持ち出し 保険会社と顧客の信頼関係はジャンク債並みに

 保険会社の信用力がガタ落ちです。1年前、大手損保が出向先の個人情報を大量に漏洩した不祥事に呆れていたら、今度は生命保険最大手の日本生命保険が出向先から得た内部情報を無断で持ち出していたことが発覚しました。長年、他人のおカネを集めてビジネスしていると、本来は守秘義務が常識の出向先の情報も自社の利益に流用しても良いと勘違いするようです。

内部情報は自社のモノと勘違い?

 もし、日本の保険会社と顧客の信頼関係を格付けしたら、どんな評価になるのか。財務指標だけならAクラスの高い評価でしょうが、顧客に対する倫理観を重視したらジャンク債並み?。日生は現在、経団連会長企業で、金融機関として初めての就任でした。金融機関の最大の後ろ盾は信用と信頼。経済界の企業倫理を率いる経団連会長の出身企業が信用と信頼を貶めるとは・・・。繰り返される保険会社には言葉を失いますが、保険会社のみなさんは自身の言葉でていねいに説明してほしいです。

 無断持ち出しは日生子会社のニッセイ・ウェルス生命保険。三井住友銀行とみずほ銀行に出向した社員9人が2019年4月〜25年4月までの期間、他の生命保険の商品情報などを含む資料943件の内部情報を無断で持ち出しました。このうち102件は親会社の日生と共有していたのですから、かなり悪質です。

 実は、親会社の日生でもすでに社員が出向先の金融機関7社から計600件の内部情報を無断で持ち出す不祥事が発覚しています。親も子も日生ファミリーが一体となって内部情報を無断持ち出しており、足し算すれば1543件。結構な数字です。

会社ぐるみと批判されても反論できる?

 経営陣が知らなかったでは済まないでしょう。真面目な優等生気質の社員集団ですから、出向した社員が勝手に上司にそれこそ無断で持ち出すわけもないですし、内部情報を手にした同僚や上司は一目で常識を逸脱した行為であることがすぐにわかったはずです。一連の不正行為を見逃していたという言い訳は通用しません。会社ぐるみと批判されても反論できるのでしょうか。

 日生は経営陣の責任を明確にするため、担当役員らの減給などの処分を公表したほか、清水博会長、朝日智司社長の経営陣トップ、さらに経団連会長を務める筒井義信特別顧問が報酬の一部を自主返納することも明らかにしました。進退も検討するべきとは思いませんが、日生の金看板である信用と信頼を傷つけたのですから自主返納レベルで禊ぎが済むとは思えません。

 もっとも、もう驚きません。保険会社の不祥事には慣れました。1年前の2024年8月、大手損保4社が個人情報の漏洩状況を公表しましたが、その数字の大きさに驚いたばかりですから。合計250万件。「やらかした」で済むレベルではありません。各社の社員が出向していた保険代理店で得た個人情報を本社へ流したり、自動車保険商品を取引するディーラーから情報を取得していました。

大手損保4社は大量に漏洩

 漏洩を公表した4社は東京海上日動火災保険と損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。個別に件数をみると、損保ジャパンが99万1000件、東京海上が96万件、三井住友海上が33万6300件、あいおいが21万7000件。損保ジャパンと東京海上が他の2社の2倍、3倍となっています。

 とりわけ損害ジャパンは他の損保3社と比べてもビッグモーターによる保険金の不正請求問題でも一敗地に塗れています。ビッグモーターには損保ジャパン、東京海上、三井住友海上が出向者を送り出し、事故車両の修理や紹介などで深い取引関係を持っていました。自動車保険の不正請求が発覚した2022年夏に東京海上と三井住友の2社は取引を中止しましたが、損保ジャパンは中止した後に一時再開。不正請求が発覚した後も再開した損保ジャパンは自ら信用を貶める経営判断を下したのです。

 釈迦に説法となりますが、お客は金融機関を信頼して個人情報を伝えます。損害保険会社は契約者の家族構成や資産などの情報に触れるだけに、他の業界より厳しい規律が求められるのは当然です。ところが、内部情報の流出をみると、個人情報保護というよりは拡散に近い。繰り返しとなりますが、企業倫理の研修を受けた社員なら、だれでも「これはヤバイ」と気づきます。それが止められない。やっぱり顧客との信頼関係はジャンク債並みです。

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