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総合商社の終焉 「フライドチキン」より「バフェット」

 ローソンを巡る三菱商事の「やる気の無さ」。ようやくわかりました。今度は「ケンタッキーフライドチキン」を運営す日本KFCホールディングスを売却します。海外投資家らが企業価値の向上を求める意見を念頭に、収益力が低い事業のリストラが始まっていたのです。

 三菱商事など総合商社は財閥の資金力を背に日本の経済成長を支えてきました。しかし、現在は株価を押し上げるウォーレン・バフェット氏ら投資家の視線を最優先しています。「ラーメンから航空機まで」と言われた日本独特の事業形態の総合商社。英語でも「ソーゴーショーシャ」と呼ばれていました。その役割を終えようとしているようです。

三菱商事、日本KFCを売却

 日本KFCは1970年、三菱商事と米KFCが設立し、2007年に三菱商事の子会社となりました。三菱商事は35%の株式を保有しており、全株式を売却する方針のようです。業績は快調です。2024年3月期の見通しは売上高が前期比10%増の1100億円、純利益が53%増の38億円。

 1980年代、現在の日本ケンタッキーの基盤を築いた大河原毅社長をよく取材していたので、KFCには個人的な思いはあります。大河原社長は大日本印刷出身。鶏など食材を扱う三菱商事と違い、大日本印刷がなぜ参加したのか不思議でしたが、「パッケージを美しく印刷する技術が必要なんですよ」とその理由を笑って教えてくれた思い出があります。日本のケンタッキーは米国に比べて店舗が清潔で客層も大きく異なるため、米国人は日本の「ケンタッキー」を見ると驚くそうです。大河原さんの功績の一つです。

バフェット氏の商社買いが日経平均を押し上げ

 ファーストフード・チェーンとして手堅い経営を維持しています。しかし、日本国内の事業が限定されているため、急成長する余力は小さいのも事実です。天然ガスなど資源エネルギーでガンガン稼ぐ三菱商事の事業内容を考えたら、売却するのもわかります。

 日経平均が34年ぶりに最高値を更新した背景には米有名投資家ウォーレン・バフェット氏の総合商社の「買い」があります。「ラーメンから航空機まで」と言われた経営構造は、裏返せば収益力の低い事業も内包しています。バフェット氏の慧眼から見れば、収益力などを尺度に事業の取捨選択を徹底すればこれまで以上に業績は改善され、これに伴い株価は上昇すると読むのは当たり前でしょう。

 日本経済新聞によると、三菱商事の総資産利益率(ROA)は5%。23年3月期を参考に事業別にみると、日本KFCなど食品は3%、ローソンなどコンシューマーは0・6%。資源エネルギー、自動車がはるかに上回るROAを達成しているのがよくわかります。日本KFCの売却が伝わる直前、三菱商事がローソンをKDDIと折半出資の子会社に切り替え、非上場化する事業改革を発表しましたが、株価の尺度となるROA重視を考えたら、ローソン、日本KFCと続くのは納得できます。

総合商社はオーガナイザーだったが・・・

 

 総合商社を代表する三菱商事、三井物産は戦前から日本経済を牽引する原動力でした。それぞれの財閥グループ企業と連携して、エネルギー、自動車、農作物など多くの分野で事業を興し、輸出入を拡大する調整役、オーガナイザーの役割を果たしてきました。それが「ラーメンから航空機まで」と言われるほど幅広い業種を手掛け、日本のGDPを押し上げて、日本の日常生活を変えてきました。日本全国でマグロを食べられるようになった流通網の構築などがその一例です。

 総合商社はオーガナイザーの役割を終え、1980年代には「商社冬の時代」と呼ばれる苦境も体感しています。現在は、国内外で新規事業を開発し、投資する事業が主力になっています。商社というよりはむしろ投資会社、ファンドの事業展開と重なります。

 総合商社の終焉はすでに始まっているのです。ローソン、日本KFCは「終わりの始まり」の一例に過ぎないのでしょう。

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