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Chat GPTは経営コンサルしない? オープンAIの内紛解決は人知が頼り

  オープンA Iのサム・アルトマン氏が最高経営責任者(CEO)に復帰します。同社の取締役会で突然、解任された後、9割に相当する従業員が解任について猛抗議し、瓦解寸前でした。従業員の要求を受け入れてアルトマン氏の復帰は認められ、なんとか危機は免れました。ただ、あれだけ優秀な頭脳を持つ人材を抱え、しかも世界最先端の人工知能を開発する企業でさえ、過去にアップルなどで起こった「経営陣の内紛」を解決する知恵を見出せなかったのでしょうか。思いがけぬ出来事に人工知能と人間の関係が炙り出てきた印象です。とてもおもしろい”事件”でした。

突然の創業者アルトマン解任

 対話型AI(人工知能)を代表する「ChatGPT」を開発した米オープンAIの取締役会は11月17日、最高経営責任者(CEO)で、躍進の立役者であるサム・アルトマン氏を解任しました。突然の解任に抗議する従業員505人は驚くことに取締役会メンバーに辞任を迫り、それが実行されないなら退職し、マイクロソフトへ転職すると署名した文書を公表しました。

 渦中のアルトマン氏は復帰できないと判断し、オープンAIの出資しているマイクロソフトに転じ、同社が注力する生成AIの開発、事業化に取り組む選択を下しました。もしオープンAIの従業員がアルトマン氏を追って転職すれば、事実上マイクロソフトはオープンAIを丸ごとスカウトした形になり、当のオープンAIはもぬけの殻になるところでした。オープンAIは解任から5日後の21日、従業員の要求を受け入れてアルトマン氏と復帰について合意しました。

生成AIといえばオープンAI

 ChatGPTといえばオープンAI、オープンAIといえばアルトマン。誰もがこう連想するだけに、オープンAIの取締役会がアルトマン氏を突然解任した”事件”は世界を駆け巡りました。その後も予想外の展開が続きます。取締役会の解任提案に賛成した共同創業者のサツキバー氏は従業員が公表した署名に加わり、取締役会がアルトマン氏の後継として暫定的CEOに指名したムラティ氏も署名しています。「人間関係や信頼関係はどうなってんの?」。おもしろがって見物する外野席では、みんな首を傾げるしかありません。取締役会でどういう議論が展開されたのか。とても興味深いです。後日、詳細を知りたい。

 それよりも不思議なのは、世界から注目を浴びる人工知能の研究開発企業が過去のベンチャー企業が経験した経営の内紛をなぞるように躓いたことです。アップルの創業者スティーブ・ジョブスが経営の混乱を招いたとして追い出されたことはよく知られています。彼はその後、コンピューターグラフィックのピクサーなどで成功を収め、アップルに復帰し、歴史に残る経営者となりました。

開発の方向性を巡って神学論争

 独創的なアイデアを持つ創業者は個性が強く、独善的と見られがちです。アルトマン氏はこれまでに登場したメディアの記事を見る限り、独りで突っ走ってしまうタイプではないようです。ただ、人工知能の開発を巡る考え方は、一種の神学論争を繰り返しているようです。

 タイム誌9月6日号で特集した「人工知能の未来に向けたイーロン・マスクの闘い」を思い出します。記事は2013年のイーロン・マスク氏の誕生日から始まり、その後グーグル、アルトマン、マイクロソフトなどが人工知能を巡って議論し、熾烈を極める開発競争を追うドキュメントです。

 誕生日パーティーの席でマスク氏は語り始めます。「私たちがセーフガードを構築しない限り、人工知能システムが人間に取って代わり、私たちの人間を無意味にしたり、絶滅させたりするかもしれない」。グーグル創業者のラリー・ページ氏は反論します。「何が問題なのか。もし機械が人間を上回るなら、それは進化の次のステージに入っただけ」。マスク氏は答えます。「私は人間を大事にしたい」。

 オープンA Iの取締役会でも、開発を推進するアルトマン氏、人工知能の安全性を重視すべきと考える他のメンバーが熱い議論を繰り返してきたのでしょう。原子爆弾の影響で突然、ゴジラが誕生したように人工知能は人知を超える「ゴジラ」となってしまうのか、と。

人工知能と人知の葛藤は続く

 ChatGPTなら、人間と人工知能の未来についてどう答えるのでしょうか。そして瓦解寸前に追い込まれる手前で、オープンAIが内紛を回避するための打開策についてどう助言したのでしょうか。正解かどうかはともかく、取締役会は参考意見として確認することはなかったのか。それとも、まだ正解を提示できるレベルに人工知能は進化していないことを知っており、仕方がなく人間の知恵と経験から「解任」の答を出したのか。

 人工知能と人間、それぞれの限界を改めて思い知らされます。人工知能が当たり前のように経営判断に利用される時代に入ると、オープンAIは経営コンサルタントの先行事例として引用されるのではないでしょうか。

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