
「この野郎!」公言のオープンハウス「昭和のブラック」を若者が評価、成長力に
夕方の午後6時過ぎ、オレンジ色のコートを着た若者が近所のスーパーの前に立っていました。周囲は真っ暗。店内から漏れる明かりに照らされ、オレンジ色だけが光り輝います。店員が勧誘しているのかと思い、そのまま店内へ。買い物を終えた後もまだ立っていたので、「頑張っているねえ〜」と声をかけたら、明るい笑顔で「ありがとうございます」。
スーパーや駅前に立ってセールス
彼が抱えているボードをよく見ると「駅から5分」と書かれ、「オープンハウス」の社名も。住宅販売のセールスかと気づき、「良い根性しているねえ」と声をかけたら、笑顔で再び「ありとうございます」。寒い中でも楽しそうに立っている姿を見て、自分自身がバイトや会社で経験した「昭和の働き方」」を思い出しました。でも、「今はブラック企業と呼ばれる」と苦笑せざるを得ませんでした。
そういえば以前も、道路信号機の下、JRの駅前で若いスタッフが首から広告を紐でぶら下げている姿をたびたび見かけました。近所にオープンハウスの販売物件は増えています。狭小地でも取得して住宅をたくさん建設して、営業担当者が猛烈に頑張って売り切る。理屈よりも数を追い求める昭和から続く住宅メーカーの伝統芸を令和の今も踏襲しているのがオープンハウスです。
こんな商売がまだ通用するのかと首を傾げていたら、テレビCMでもっと驚きました。人気俳優の堺雅人さんが「この野郎〜」と叫んで怪物と闘うシーンを見て、「この野郎」って放送禁止語じゃないんだ?と思っていたら、今度は娘役の女子学生も「この野郎〜」と叫ぶバージョンが登場。きっとオープンハウスは社内で「この野郎〜」が互いを励ます合い言葉になっているのでしょうか。
昭和のブラック企業と勘違いされると心配していたら、とんでもない。就職人気ではトップレベル。徹底した実力主義で評価され、年収がどんどん増えるのが魅力だそうです。高市首相が「働いて働いて・・・」と就任挨拶して過重労働への逆戻りを心配する声が上がりましたが、若い世代には抵抗感がないようです。
働き方は令和から昭和へタイムスリップ
令和から一気に昭和へのタイムスリップが始まっています。あくまで参考にしかなりませんが、ある調査によると、オープンハウスは2024年の就職注目ランキングで2位、男子学生に限りると4位。ということは女子学生の方が男子より高く評価しているようです。ランキング上位は有名企業で占められているだけに、異彩を放つオープンハウスの経営が若い世代に刺さっているのです。
確かに経営指標はすごい。株式上場した2013年9月期の売上高は969億円でしたが、10年後の2023年9月期は1兆1300億円。12倍近く増えています。2025年9月期は純利益は1000億円を超えるそうです。
就職活動時に注目する初任給は36万円。就職ランキングトップの三菱商事を上回ります。平均年収も900万円超と同業他社に比べて高い。ただ、人事評価は成果主義のようですから、個人によってばらつきがあるはずです。営業目標の数字を達成した時は楽しいですが、達成できない時は辛いストレスに苦しみます。平均勤続年数が4・2年と短いのも頷けます。
オープンハウスに入社して自分の実力を鍛え、資金を貯めたら新たな挑戦へ向かう。オープンハウスで優秀な人事評価を得ていれば、同業他社のみならず他の業界へ転職するうえで勲章になるのでしょうか。
昔の佐川急便みたい
まるで昭和時代の佐川急便と同じ。入社から2年間、早朝から深夜まで宅急便を運び、開業資金を2000万円を蓄えたら転職する。これが佐川急便の働き方でした。「朝の点呼でハイと答えた従業員が、夕方になっても帰ってこないことがたびたびあった」そうです。オープンハウスも野心を持つ若者を成長のエネルギーとして吸収し続けるのでしょう。若い社員がスーパーや駅前で広告を抱えて販売活動する経験も、鍛錬の一環なのでしょう。昭和に流行った「地獄の研修」を思い出します。
それにしても女子学生に「この野郎〜」と叫ばせる企業は、大丈夫なのかなあ〜。

