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「ハイブリッド車が秋刀魚になる日」サンマの不漁は、事業改革を促す地球環境からの警鐘  

「秋刀魚とEV」。そろそろ味わいたいと思いながらも、なかなか目の前に現れない。増えそうで増えない。がまんしきれなくなってきました。どちらも日本のお家芸。秋刀魚はその名の通り、秋の味を代表する日本人の大好物で、かつては世界の漁獲量の過半を日本が水揚げしていました。EV(電気自動車)は日本の基幹産業である自動車の次代を担います。いずれも日本の豊かな生活に欠くことができませんが、地球温暖化の潮流に乗り切れない日本のジレンマを映し出していると見えませんか。

秋刀魚は日本が過半を漁獲した時も

 水産研究・教育機構によると、2024年も秋刀魚(サンマ)は期待できそうもありません。8~12月に日本近海で回遊するサンマの資源量は92万トン。昨年とほぼ同じ94万トンにとどまるそうです。21年前の2003年は467万トンですから、5分の1まで落ち込んでいます。資源量の急減に伴い、日本の漁獲量は低減し続けており、水産庁によると2008年の約35万トンをピークに昨年の23年は2万5800トンに。10分の1以下にまで減少しています。魚体も小ぶりです。スーパーなどの店頭で見かける「1歳魚」は、平均体重が90~110グラム台とみられています。

 資源量急減の原因は海水温の上昇です。水産研究・教育機構によると、太平洋を流れる親潮が弱く、北海道東部や東北の三陸沖で海水温が高いため、サンマは水温の低い遠洋域に移動しており、これに伴いエサのプランクトンも減ってしまうので、魚体が小型化するそうです。

 サンマの漁場が北海道や東北の沖合から東のはるか遠方へ移動するため、日本の漁業経営にも打撃を与えています。漁獲量の低減に港と漁場を往復する燃料費増が加わるほか、魚体の新鮮度を保つのが難しくなるので、魚価も下がる恐れが出てきます。

海水温上昇に海外との競争激化

 日本に代わって韓国や台湾など海外の漁船も増えています。日本人は新鮮なサンマを食べるのが普通ですが、海外では冷凍サンマを料理する場合が多く、韓国や台湾の漁船が冷凍を前提に大量に漁獲します。サンマの資源保護の観点から見ても、日本や海外の漁船が争奪戦する形になることもあって、日本の漁獲量が減り続けています。

 秋刀魚と同じ構図を描いているのが自動車のハイブリッド車人気。トヨタ自動車を例に見てみましょう。トヨタが発表した2024年上半期(1~6月)の世界販売台数は516万2442台。前年同期比4・7%減ですが、世界一の座は守りました。内訳はハイブリッド車が絶好調で、191万5023台と全体の4割近くを占めました。燃費が優れ、EVより割安な価格が評価されています。

トヨタのEVは1・4%

 ところがEVを巡る風景は大逆転します。トヨタのEVの世界販売は7万3017台。トヨタ全体の1・4%しか占めていません。トヨタに続く世界第2位のドイツ・フォルクスワーゲンはEV販売で成功しているわけではありませんが、30万台を販売しています。EV市場では米テスラが急速に台頭しましたが、BYDなど中国勢が追い上げ、タイやベトナムのメーカーも駆け上がってきました。海外勢が押し寄せる秋刀魚の漁場と同じ構図です。

 トヨタがEV市場で取り残されている主因は明快です。タマ不足です。欧米や日本ではスバルと共同開発したSUV「bZ4X」1車種だけ。EVが主戦場となっている中国ではセダン1車種。トヨタの高級ブランド「レクサス」では世界向けに2車種を販売しているぐらいです。

 トヨタ以外の日本車メーカーもEVに関してはほぼ同じ状況です。ホンダ、日産自動車、三菱自動車がEVが急成長している中国で脱落寸前に追い込まれるほどEVの戦略車が欠けています。

ハイブリッド車が秋刀魚になる日

 秋刀魚とハイブリッド車を同列に並べることに違和感を覚えますか?どちらも地球環境の変化、気候変動によって市場の中身が大きく変わり、その変化にいかに対応するかで存続が問われるほどの危機感を招いているんですけど・・・。秋刀魚の不良は、太平洋、日本海の魚種の変化を表しているだけでなく、地球温暖化に直面する水産業がビジネスのあり方を根底から見直す必要があることを教えています。秋刀魚に変わってアジやブリが豊漁だからといって喜んでいるわけにはいきません。

 自動車も同じです。直近の世界販売ではEVの勢いが失せ、ハイブリッド車が売れているから安心と構えていては、次代の市場に乗り遅れるのは確実です。EVは自動車だけでなくインターネット、人工知能など電機、情報技術の最先端を結集する製品です。世界の自動車メーカーが邁進する中、ハイブリッド車の好況に酔っていたら、いつの間にかハイブリッド車がサンマと二重写しになっているでしょう。

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