• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。

シン流通革命 米子のいしかわ、なんか凄かった、北海道のセコマに似た驚き

 ホテルへの帰り道の途中、まだ開店しているスーパーを見つけたので、明日の朝食を買おうと気軽に立ち寄ったら、驚きの連続が待ち構えていました。鳥取県米子市のスーパー「ファミリーストアいしかわ久米店」との出会いでした。

入店の第一印象「清潔感」「店内が見渡せる」

 入店した瞬間の印象が違います。思い浮かんだ言葉が「清潔感」。今は午後8時過ぎ。お客さんの姿は少なかったこともあって、店内は奥まで見渡せます。視線を遮る商品の陳列棚が間仕切りのように立ち並んでいないので、自分が買いたい商品がどこにあるのか、入り口のそばから肉や魚、野菜、冷凍食品などのコーナーが一望できます。

 結構、意外な風景で、新鮮でした。イトーヨーカドーは大きな商品棚が立ち並び、目当ての商品を探し当てるまで店内を迷路のようにぐるぐる回ることがたびたび。関東で高い人気を集めるヤオコーが近所にあるのでよく訪れますが、こちらは店内は暗くて冷房が強くて居心地が良くありません。まるでヨーカドーやヤオコーの短所を知って、店内のレイアウトを考案した印象です。

ヤオコーの短所を知っているかのよう

 商品棚もそれぞれきれい。閉店まで2時間を切っているにもかかわらず、毎日差し替えて新鮮さが売りの、いわゆる日配食品はそれなりに陳列されています。米子で人気の美味しいサバ寿司を朝に食べようと思って入店したのですが、見た目が美味しそうなので思わず日本酒も買ってしまい、ホテルの部屋で飲むことに軌道修正。明日の朝食用は卵サンドイッチに決めて買いました。卵焼きはふっくらして、サバ寿司のあとに食べてしまいそう。ほかの総菜もおいしそうです。ちなみに卵サンドはコンビニのサンドと比べるまでもなく、見た目通りふっくりからしてうまかった。

 レジに向かうと、若いスタッフがおり、閉店が近いので価格は割り引いてもらったうえに「ポイントカードがあれば5%引きです」と訊いてきます。「持っていませんから」と返答すると、「作成に個人情報は不要ですから、ポイントカードをお渡しします」とさらに割引を加算してくれました。当然、安かった。

 後悔したのは1点だけ。夕飯は繁華街の居酒屋に行ったのですが、「今夜はお客さんが多いので、早めに済ませてくれますか」といわれ、注文した料理も忘れ去られる楽しくない経験をしただけに、「このスーパーを知っていれば居酒屋へ行かず、ここで酒のサカナを揃えてホテルの部屋で乾杯したら、米子の夜は大満足だったのに」と悔やんだことです。

創業100年を超える老舗でした

 ネットで調べたら、いしかわは創業100年を超える米子の老舗でした。スーパー以外に他の業態も経営しており、偶然入店したスーパーは2019年12月に改装しています。もう3年経過していますから、お店の手入れが良いのでしょう。品揃えも地方のスーパーらしく、地元の農産物のほかお弁当やお菓子類など幅も広く、日本でもトップクラスの酒蔵が集まる鳥取県らしくお酒も充実しています。ポイントカードをみると、全日本食品と書いていますから、ボランタリーチェーンの全日食に加盟しているんですね。全国からさまざまな情報を集めて利用しているのでしょうが、久米店の素晴らしさはいしかわの担当者の努力の賜物です。

 新聞社の新人記者時代、食品問屋、スーパー、コンビニ、外食など流通業界を取材していました。まだ流通業界は暗黒大陸と呼ばれていた時代です。しかも、右も左もわからない若いだけの新聞記者ですから、とにかく全国を回って店頭現場を見て、流通業界の実態を体感する努力にエネルギーを消耗しました。だいぶセンサーは鈍っていますが、その皮膚感覚が「米子のこのお店はおもしろいよ」と教えてくれました。

セイコーマートと同じ驚き

 この感覚は北海道のセイコーマートを訪れた時にもセンサーが反応しました。北海道でコンビニといえば、セイコーマート。セブンイレブンやファミリーマート、ローソンの全国チェーンが北海道でも多数展開していますが、使い勝手でセイコーマートにかないません。店内で総菜を調理するサービスなどコンビニで当たり前になっているサービスや品揃えはセイコーマートがほとんどパイオニアです。

 しかも、どこにでも出店しています。ちょっと盛りすぎな表現でしたが、北海道は店舗に商品を納入する配送網を維持するには広すぎるため、全国チェーンでは経済効率を考えて出店を手控える地域もあります。それではコンビニエンス・ストアとは言えません。

 セイコーマートは北海道以外に出店していませんが、この広大な北海道で店舗網、商品配送、品揃えを維持する経験が経営力につながり、全国チェーンとして飛躍する力を養います。ニトリはじめドラッグストア、ホームセンターなど北海道から全国チェーンに進化した流通業が多い理由です。

目の前の壁を乗り越えるヒントがあるかも

 スーパーは曲がり角を迎えています。デパートが終焉を迎え、コンビニも過当競争から抜け出すことができません。1970年代から流通革命を主導してきたスーパーも、目の前の壁を乗り越える知恵と術を失っています。米子のいしかわ久米店で覚えた新鮮な驚きに何かヒントが隠されているのかもしれません。

関連記事一覧