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そごう・西武労組のスト決行が問い掛けます ネット時代に勝ち残る街づくりと商業施設の将来

 そごう・西武の労働組合が8月31日、東京・池袋本店でストライキを決行します。親会社のセブン&アイが決定した米国の投資ファンドへの売却に反発しています。その理由の一つが売却後に家電量販店のヨドバシカメラと連携して店舗運営すること。池袋本店は西武百貨店の旗艦店として高級ブランド店を集め、デパートとしての存在感は新宿・伊勢丹本店に並びます。池袋周辺の街づくり、情報発信でも大きな役割を果たしてきました。インターネットによる通販が当たり前になった今、そごう・西武労組のストは大都市圏の商業施設の重みを改めて問いかけているようです。

8月31日にスト

 セブン&アイはスト決行に伴う混乱を回避するため、8月31日は池袋本店を臨時休業することにしました。同店の組合員900人が店舗の前で経営側と睨み合うといった「昭和のスト」風景が再現されそうもありません。ただ、およそデパートとして60年ぶりのストは大きな話題となっており、新聞やテレビ、ネットを通じて幅広く伝わっています。

 西武池袋本店は東京と埼玉などを結ぶ交通ネットワークのターミナル駅と一体化しています。首都圏でもトップクラスの乗降客が利用しているだけに、西武で買い物をするかどうかはともかく普段利用する地域がどう変わるのか大きな関心事となるのは間違いありません。

街としての池袋ブランドはどう変わるのか

 その焦点の一つがヨドバシカメラの出店です。セブン&アイ・ホールディングスは9月1日にそごう・西武を売却することを決めました。買い手は米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループで、ヨドバシホールディングスと連携して既存のそごう・西武の各店をテコ入れする方針です。西武池袋本店に続き、西武渋谷店、そごう千葉店にもヨドバシカメラが出店する見通しです。

 労組が反発する背景には池袋本店が築き上げたブランドの毀損があります。欧州の高級ブランドが出店しているというだけではありません。創業者の堤清二時代から発信し続けた西武の強い個性は三越、高島屋、大丸など老舗デパートと一線を画し、客層も若い世代を中心に開拓してきました。西武ブランドが棄損すれば、従業員の誰もが自らの雇用があやしくなると考えるはずです。

 地域としての池袋も大きな恩恵を受けています。西武のイメージ戦略に合わせて周辺地域に劇場など刺激的な文化イベントを開催し、戦後闇市の興隆に沸いた古い池袋のイメージを払拭。昭和の頃と比べて池袋周辺の街づくりは大きく変わりました。

ヨドバシカメラ出店で客層は?

 その池袋にヨドバシカメラが出店します。ヨドバシカメラは創業の地は渋谷ですが、名前の由来となった新宿・淀橋で飛躍。新宿駅前の「ヨドバシカメラ」を前面に出して家電量販店として全国展開していきました。大阪・梅田や東京・秋葉原に大型店を出店するなど家電量販店からの脱皮にも成功していますが、西武が築き上げた高級ブランドの池袋とはかなり色合い、客層が異なるの事実です。

新宿・伊勢丹はヨドバシと交わらず

 ヨドバシカメラの本拠地である新宿をみてください。新宿のデパートといえば伊勢丹本店です。単独店としては日本最大級の売上高を達成する最強デパートです。新宿駅からヨドバシカメラを過ぎて伊勢丹本店の大通りを歩くと、すぐに気づくはずです。わずかな距離に過ぎませんが、伊勢丹、ヨドバシカメラに向かう人の流れが違うことに。伊勢丹本店はヨドバシカメラが隣接しているにもかかわらず、日本トップのデパートとしての誇りとブランドを毀損しないよう多くの気遣いを配しています。

 売却後、そごう・西武池袋本店はヨドバシカメラが入店した場合、欧州の高級ブランド店が撤退する可能性が高いそうです。新宿・伊勢丹の事例を考えればわかりますが、ヨドバシカメラと高級ブランドの客層はちょっと違うようです。高級ブランドを購入する客が池袋から離れれば、池袋周辺の商業施設にも影響を与えるでしょう。そうなれば、地域全体で小売店やレストランなど商業集積も変わっていくかもしれません。長年築き上げた街としての池袋ブランドが変貌するのは必至です。豊島区役所が今回の売却の余波を心配しているのもよくわかります。

ネット利用者は労組?ヨドバシ?

 そごう・西武労組のストはどこまで意図したのかはわかりませんが、街づくりと商業施設が大きく相互依存していることを改めて教えてくれました。そごう・西武労組?、あるいはセブンアンドアイ? Amazonや楽天を選ばずにわざわざ池袋まで足を運んで商品を選び、購入するお客さんは、どちらを支持するのでしょうか。

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