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日本甜菜 脱炭素の航空燃料SAF で北海道に新たな「地産地消」、頑張って!

 日本甜菜が甜菜(てんさい)を原料とする製糖工程の副産物を使って航空燃料「SAF」の実用化に取り組んでいます。SAFは現在の航空燃料に比べてCO2の排出量を抑制できるため、自動車と並んで批判を浴びている航空産業の需要増が見込まれています。一方、甜菜(てんさい)は砂糖の原料などに使われますが、甘さを控える食生活の広がりによって砂糖の消費量は低迷。新たな需要開発が急務でした。

北海道の農業を支える甜菜

 甜菜は寒さに強く、明治の開拓時代から北海道の農業を支えてきた重要な作物です。しかも、北海道の空港は航空燃料不足に頭を痛めています。海外からの観光客が増加しているにもかかわらず、航空燃料の供給体制が間に合わず国際線の離発着を増便できません。甜菜とSAFをキーワードに新たな脱炭素型の地産地消を拓けば、地球環境にも北海道にもやさしい農業の新しい道が生まれるのではないでしょうか。

 NHKのニュースによると、日本甜菜は神戸大学と組んで砂糖を製造する過程でできる副産物と酵母を活用してSAFの製造を研究しています。「油脂酵母」と呼ばれる酵母を砂糖の製造工程で発生する糖蜜で培養し、酵母が細胞内にため込む油を抽出します。実用化の壁は酵母の細胞壁を破り、油を抽出する効率をいかに高めるかにあるそうです。酵母を使ってSAFを生産する試みは国内で初めてだそうです。

航空会社は循環型の燃料で脱炭素

 SAFは「Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)」の略称で、植物などバイオマス由来の原料や、飲食店などから出てくる廃油を利用して製造されています。なぜCO2節約に効果があるといえば、原料と生産が再利用を繰り返す循環型だからです。原料となる植物は、光合成で大気中の二酸化炭素を吸収します。SAFが燃焼してCO2を排出しても、原料となる植物がCO2を吸収して成長し続けます。燃焼→CO2排出→原料の植物が吸収→SAF→燃焼。このサイクルを繰り返すので、CO2排出抑制型の航空燃料と評価されています。

 現在使っている航空燃料は原油を精製して製造していますから、燃焼すればCO2は増え続けるだけ。SAFは従来のジェット燃料と比べてCO2の排出量が6割程度減るといわれており、航空会社からみればSAFへ切り替えれば、大量にCO2を排出しているという批判をかわすことができます。

 日本政府も2030年を目標に日本の航空会社に対し燃料使用量の10%をSAFに置き換えるよう求めています。この目標に向けて国内での開発、生産を後押ししています。石油会社も石油代替燃料としてSAFの開発・生産に注力しており、出光興産、エネオスは2030年までに生産を拡充する計画を明らかにしています。

甜菜の収穫風景

北海道の農業をSAFで支える日も

 SAFの需要、生産拡大の動きは、日本甜菜にとって追い風です。甜菜はビートと呼ばれ、明治から北海道に適した寒冷地作物として奨励されており、広大な農地を使って甜菜が栽培されている風景は北海道ならではのものです。手厚い助成政策を受けているだけに、北海道の作付面積は66000ヘクタール、ヘクタール当たり収量も64トンを超えます。甜菜の栽培が減少すれば、北海道の農業経営には大打撃です。砂糖を補う新たな用途としてSAFが実用化する日が待ち遠しいです。

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