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針江地区の水車

東急不動産が小規模の水力発電 ソフトエネルギー・パスの時代の扉を開くか

 東急不動産が小規模な水力発電事業に参入します。河川などの水流の落差を利用して水車のようにタービンを回し、発電した電気を販売する事業です。通常のダムや火力発電、原子力発電と比較にならないほど小規模ですが、実は山地や川が多い日本の国土にとって最適な電源開発です。地方の過疎化と大都市の人口集中の2極構造が加速する日本にとって挑む価値がある”エネルギー革命”です。

挑む価値があるエネルギー革命

 日本経済新聞によると、東急不動産は森とみずのちから(奈良県下市町)と提携して、最大出力1000キロワット以下の小規模な水力発電を開発します。28年までに岐阜県高山市で稼働させ、東北や北関東でも増やす計画です。

 小規模な水力発電は2030年までに500億円以上を投じ、既存の発電所の買収も加えて発電能力を3万キロワット程度まで増やす目標を掲げています。3万キロワットは一般家庭3万世帯以上の電力需要に相当します。集落ごとに小規模な水力発電装置を設けてネットワークを広げていけば、地方の市町村にとっては使い勝手が良いのではないでしょうか。

 東急不動産は2014年に太陽光や風力発電など利用した再生可能エネルギー事業に進出しており、すでに発電設備の合計で130万キロワットを超えています。東京電力の柏崎刈羽原発1基分に相当しますから、電力会社と呼んでも良いかもしれません。ただ、再生可能エネルギーは太陽光が山地の多い日本ではすでに適地の確保が難しくなっており、風力も資材高騰で採算コストが悪化。天候に左右されず安定して発電できる水力が改めて見直されています。

 しかも、小規模な水力発電所を建設するためには、地域の農水産業と連携して電力を利用する基盤整備が欠かせません。再生可能エネルギーの拡大とともに、地域の活性化に参画する形になるので、不動産会社としても新たな事業創出につながります。

電力の地産地消

 ソフトエネルギー・パスという言葉をご存知ですか。太陽光、風力や水力など再生可能なエネルギーを使い、電気を消費する場所近くに中小の発電所を設置して電力を賄う発想です。1970年代に提唱されました。わかりやすいイメージなら、水車を使って米を脱穀するする風景を考えてください。もちろん、現代の水車は効率が向上しており、自然のエネルギーを多方面で活用できるネットワークを構築して地域の集落全体が潤う事業として具体化しています。

 ソフトエネルギー・パスのモデルの好例は、北海道の「あばしり電力」。日本ガイシと網走市が出資した地域電力会社で、太陽光発電と日本ガイシのNAS電池を組み合わせて周辺地域に電気を供給しています。太陽光は天候によって発電量が左右されますが、発電した電気は世界でもトップクラスの蓄電量を実現したNAS電池に蓄え、地域の需給に合わせて公共施設などに供給します。

 エネルギーの地産地消ですね。自然環境も極力、傷つけません。山林などの伐採はせず、市が所有する施設や用地に太陽光発電のパネルを設置します。太陽光発電は森林など自然破壊する工事が増えた結果、批判を浴び、設置反対の声も高まっています。東急不動産が本格化する小規模な水力発電事業も、地域の自然と共存しながら、日常生活や企業活動を支えるインフラとなって欲しいです。

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