トヨタイムズにTime ! 😅 (霞だけじゃ辛いけど高楊枝は 編)
トヨタはTV広告をやめる噂が飛び交う
「トヨタはもう新車の広告を出さないんだって」ーートヨタイムズが創刊される前、こんな噂が飛び交っていました。電通など大手広告会社にとって大口宣伝主のテレビCMが脱落するなんて信じられないことですし、テレビや新聞の各社にとってもインターネット広告の台頭に押されて右肩下がりの広告部門に与える打撃は大きいです。若者を中心にネットメディアやSNSから情報を得る習慣が当たり前になってしまい、新聞やテレビはオールドメディアと呼ばれます。若い層へアピールしようと考えたら、テレビ・新聞は避ける。トヨタじゃなくてもテレビ・新聞の広告を減らそうと考えるのは不思議じゃないですよね。
それじゃトヨタの巨額の宣伝費はどこに向かったのか。テレビCMはもう効果がないという厳しい見方がトヨタから聞こえていましたので、向かう先はデジタル、インターネット向けしかありません。それはオールドメディアが乗り越えなければいけない現実です。インターネット広告費は2兆2290億円(約6%増)となり、テレビや新聞などマスコミ4媒体広告費の合計とほぼ肩を並べました。
トヨタイムズは豊田章男社長の思いのまま
トヨタタイムズはまさにデジタルメディアの新時代を投影した産物です。「総1億ジャーナリストと言われるくらい誰でも情報を発信できる時代」(豊田章夫社長)のなか、メディアの新旧代替わりの流れに乗ってデジタル・ネット向けを拡充する一方、トヨタイムズという手法でテレビやデジタル媒体に広告を出稿し続けることで「傲慢を感じる」(同)テレビ・新聞への影響力をさらに増しています。記事体広告の形態とはいえ、トヨタブランドを冠しているだけに広告でありながら注目度や信頼性で編集記事に負けないコンテンツに仕上がっています。人気の無料ニュースサイトを見てもトヨタイムズはトップ記事の2番手に掲載されるのを目にしますし、直近の「水素エンジンで24時間レース参加」の話題はNHKなども取り上げ、思惑通りの成果を挙げているのではないでしょうか。
デジタルが日本よりも遥かに速いスピードで進化している米国では新聞経営が苦境に追い込まれ、買収が相次いでいます。ワシントンポストはアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が2013年に買収したほか、セールスフォース創業者のマーク・ベニオフ氏が2018年にタイム・マガジンを買収しました。タイム編集長のエドワード・フェルゼンタール氏は買収について2020年6月22日号で「where we stand」とのタイトルで編集方針について書いています。要約すると、「私たちは常にすべての人の公平ために闘う。それは特定の主義や政策的立場ではなく基本的な人間的な価値だから。タイムの創刊97年間のうちベニオフ氏に買収されてから19ヶ月過ぎただけ。同氏からは長期的視点でタイムが何を人々にできるかを考えているよう言われている。私たちは引き続き人々の公平を守っていけるよう取り組んでいく」。どこまでが建前と本音なのか正直わかりりませんが、ジャーナリズムの基本姿勢は崩さないぞ、という意思は感じます。
2018年富豪の医師に買収されたロサンゼルスタイム本社前に立った時はちょっと楽しくなっちゃいました。経営は依然かなり苦しいのですが、玄関に掲げた大きな幟(のぼり)には「REAL JOURNALISM 」「REAL IMPACT」とあります。日本流にいえば「霞を食って生きてはいけないが真実を追求する信念は変えないぞ」と。「武士は食わねど高楊枝」と書いているのかと勘違いしちゃたのです。
既存のメディアはトヨタイムズに負けられない
トヨタイムズには「オールドメディアはデジタル時代を乗り越えろ」と励まされているようなものです。新聞もテレビも過去の歴史にあぐらをかかず、無料ニュースサービスなどデジタル時代の新しいメディアと競い合いながら購読料、広告料をしっかり確保できる経営に転進できるのか、と挑まれているのです。人気タレント出川哲郎の言葉を借りれば「ヤバイよ、ヤバイよ」、でも「リアルガチ」で競い合いたいですね。