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ツルハは非上場の道を選ぶか イオンが仕掛ける?ドラッグストアのチキンレース

  大手ドラッグストアチェーンのツルハホールディングスが非上場化を検討しているそうです。ブルバーグなどの報道を受けて、ツルハは検討しているとしていますが、正式に決まるかどうかは分かりません。香港の大株主からコーポレート・ガバナンスを理由に社外取締役の選任や他社との経営統合を提案される恐れがあるため、非上場化で「物言う株主」から解放される狙いがあります。仮に非上場化されたとしても、ドラッグストアは大手による寡占が進むのは確実です。人口減などで国内市場の成長は見込めないだけに、ツルハはじめドラッグストアが生き残りをかけたチキンレースがいよいよ本格化します。

ツルハはおいしい

結末はどうあれ、M&Aの思惑は一気に

 ツルハは非上場化の作業を進めており、11月下旬に一次入札を実施するとの情報が流れています。必要な資金、成功するかどうかなど事の顛末は予測できませんが、上場維持、非上場いずれに転んでもツルハを巡るM&Aの思惑が激しくなるのは確実です。

 発端は株式の13%近くを握る香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメント。ツルハのコーポレート・ガバナンス(企業統治)は機能していないことを理由に2023年8月の定時株主総会で社外取締役の選任などを含む株主提案を行いましたが、否決されました。もっとも、ツルハを支持した筆頭株主のイオンは「大手ドラッグストア同士の再編の重要性を認識している」との発表文を公表、今後の波乱に向けて含みを残し、さまざまな思惑を呼んでいます。

 非上場化に踏み切るのか、それとも上場維持するのか。どちらの結末を迎えても、筆頭株主のイオンがM&Aの号砲を鳴らす役割を果たすはずです。ツルハの株主構成は13%超のイオンが筆頭株主、次いで経営改革を求める香港のオアシスが13%近くを保有。これに対し、鶴羽家など創業家の保有比率は鶴羽家や過去に買収したドラッグストアの創業家などを加えても10%未満といわれています。

イオンが今後もカギを握る

 定時株主総会で賛否のカギを握った筆頭株主のイオンは、ドラッグストア業界第1位のウエルシアホールディングスを傘下に抱えています。ウエルシア積極的にM&Aを進めており、直近の動きをみても2022年6月に大阪の「コクミン」を、12月には沖縄の「ふく薬局」をそれぞれ子会社化しています。

 ツルハも1929年に北海道で創業して以来、M&Aを繰り返して業界2位にまで躍進しました。イオンがツルハの筆頭株主の地位を獲得した意図は正確に知りませんが、冷静に眺めれば、ツルハの筆頭株主としての地位をさらに高め、ツルハを飲み込む可能性は否定できません。ツルハが非上場化を選び、自前の経営に専念すると表明したとしても、筆頭株主を地位に手にするイオンが何の見返りもなく同意するわけがありません。イオン自身、多くのM&Aによってスーパーなど小売業界トップグループにまでのし上がった経緯があります。投資目的でツルハに出資しているわけがありません。

 ツルハは2022年6月、中期経営計画を見直して2025年5月期で22年5月期に比べて16%増の1兆600億円、店舗数は2522店から2750店へ増やす目標を掲げています。営業利益率は5%以上、資本効率を示すROEは10%を達成するとしています。鶴羽順社長は2023年5月中間決算の説明会で「足場固めをしっかり行い、次なる成長フェーズにつなげていく」と話しています。

生き残るなら、自らの経営改革が最優先

 しかし、香港の「物言う株主」の指摘を待つまでもなく、ツルハは規模拡大に専念する以前に経営改革が求められています。鶴羽家の創業家のみならずM&Aの繰り返しの影響でそれぞれの創業家の影響が残っており、業界2位のドラッグストアでありながらも個人商店の色彩が消えていません。過去には薬局として許されないコンプライアンス違反を起こしています。中期計画ではコーポレートガバナンスの強化などに触れていますが、過去の不祥事を踏まえた内部統制の再構築などに関する記述が見当たりません。自ら経営改革しなければ、規模拡大しても販売や人材などを維持できず、自壊の道を歩むだけです。

 そうなれば、結局は自らM &Aの対象として俎上に載ることになります。ドラッグストア業界は人口減などで国内市場の伸びは期待できず、調剤薬局を軸に幅広い小売業へ転身しています。インバウンドなど新たな需要は見込めますが、基本は限られたパイの奪い合い。生き残るためにはライバルのシェアを奪うM&Aが武器になります。ツルハはすでに俎上に載っているのかもしれません。

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