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EVの近未来を透視、VWワゴン「ID.Buzz」家族、友人と楽しむモビリティ空間を創案

 一目惚れしました。フォルクスワーゲン(VW)の電気自動車(EV)「ID.BUZZ」です。

 スバル「フォレスター」が第1位に輝いた2025年の日本カーオブザイヤーでは第5位でしたが、輸入車とデザインの2部門で最優秀の評価を集めました。日本の発売は2025年6月。価格は900万円近くの高額。販売実績は「まだこれから」とVWの販売員が苦笑しているぐらいですから、健闘しました。

カーオブザイヤーの輸入車とデザインで最優秀

 なにしろ、主役の日本車のスターに負けない評価を集めています。第1位のスバル「フォレスター」、第2位のホンダ「プレリュード」には引き離されましたが、第3位のトヨタ自動車「クラウン」、第4位の日産自動車「リーフ」とは僅差。トヨタ、日産が今、注力している車種とほぼ互角の勝負にまで持ち込みました。欧米の販売は着実に伸びています。欧米、日本で高い評価を集めているのも、EVが主役を務める近未来社会が求めるモビリティを体現しているからではないしょうか。

 「ID.Buzz」はVWのワゴンといえば誰も思い浮かぶ「Type2」を継承しています。トヨタ自動車の強面が売りの高級ワゴン「ヴェルファイヤー」と違って、1950年代の発売当初から変わらない愛らしい走り姿は人を引き寄せる魅力があるのでしょう。ランチなどの料理を販売する「キッチンカー」など多様な商業車として利用されています。

 私も1980年代、ドイツの自動車専用道路「アウトバーン」で「Type2」を乗り回した経験があります。ワゴンといっても走りはしっかりしており、どうしても気持ちが入ってしまうベンツやアウディとは異なる移動の面白さを味わった記憶があります。見た目が愛らしいボディのワゴンに乗って長距離を移動することが、楽しく快感になりました。

愛らしいデザインに魅了

「ID.Buzz」との出会いはEVの試乗会でした。米テスラ、ホンダなどに並んでVWのSUV「ID.4」と「ID.Buzz」のEV2台がありました。まず試乗したのは「ID.4」。運転してびっくり。テスラなどはEVならではの低重心を生かしたタイヤが路面に密着する運転感覚でしたが、「ID.4」はいつものVW。エンジン車とそう変わらない軽やかな走りです。自動車メーカーの開発思想の違いなのか、VWはエンジン車もEVも同じ感覚に設定しているようです。

次は「ID.Buzz」とお願いしたら、「こちらは試乗できません」とNG。ワゴン車の運転は慣れが必要ですし、価格が900万円近い高級車ですから、展示だけと割り切っているようでした

 

 しかし、外見、インテリア、座席などの使い勝手はとても気に入りました。まず、遠くから見てもすぐに「ID.Buzz」とわかる個性的な表情に魅了されます。トヨタ「ヴェルファイア」が発する威圧感はゼロ。停車していたら「元気?」と挨拶したくなる笑顔に見えます。

 車内も広々。座席の配置によって自由に利用できます。高級車並みの900万円近いEVとは思えない「普通の車」の雰囲気が充満しています。子育てしながら、家族や友人ら大人数で旅行する年齢だったら、欲しいと心底思いました。もちろん、900万円の価格は念頭にありません。

 EVが主役になる社会を想像してみてください。自動運転は当たり前。運転は搭載する人工知能が位置情報や周囲の状況などをチェックしているので、ほぼお任せ。車内はみんなで映画やゲームを楽しんだり、「目的地に着いたら、何をしようか」などとおしゃべりしたり。座席の配置もリビングルームのように向かい合って座ります。セダンなら堅苦しい座席配置になってしまいますが、ワンボックスのワゴンなら天井の高さも気にならず、車内で移動も楽。荷物もたくさん積めます。車中泊しながらの長距離ドライブも問題ありません。

広く自由に使える車内空間が必須に

 EVが創り上げる近未来のモビリティ社会は、運転よりも家族や友人と楽しみながら移動する空間が主役になります。エンジン車の世界もすでにスポーツやアウトドアなど多用途に利用できるSUVが主流となっていますが、EVが本格普及すればワゴンがSUVを追い抜いていきます。SUVは車の特性から天候や道路状況などに合わせて運転する楽しみがありますが、自動運転が当たり前になれば、運転すること自体の楽しみが失われます。車内空間でどんなエンターテイメントに没頭するか。そうなればワゴンを購入する客層が広がります。

 世界の自動車メーカーが開発するEVをみても、長距離利用のバス以外に近距離用ワゴンが増えています。いわゆる地域で自動運転するコミュニティーカーがEVの進化に伴ってどんどん増えると読んでいるからです。
個人で利用する場合も同じです。基本はワゴン。自動運転を仕切る人工知能を搭載しているので、デザインはインテリジェンス、知的な雰囲気が必須。でも、楽しい空間を演出するため誰がみてもホッとする「ゆるさ」も欠かせません。そのイメージを形にすると、目の前に「ID.Buzz」がニコッと笑って立っているはずです。

◆ 写真はVWのHPから引用しました。

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