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ワークマン ガテン系から女子までの二正面作戦は成功するか 成否を握るのは人間力

 ワークマンが正念場を迎えています。プロの職人向けの機能的な作業着などの商品開発で成長する一方、「山ガール」などアウトドア関連のファンションでも高い人気を集め、高収益の期待から株式市場でも「ワークマン」ブームが沸き起こっていました。最近は得意の職人市場でライバルに追い上げられ、アウトドア関連も一時の勢いを感じさせません。業績は好調ですが、一時期の輝きが失い始めており、ブランド戦略の軌道修正が迫られています。

新業態に挑戦

 その答えの一つが「Workman Colors(ワークマン・カラーズ)」。2020年から展開する「#ワークマン女子」の銀座店をリニューアルして、商品戦略のテストマーケティングを開始しました。高級店が集まる東京・銀座という立地から、女性層だけでなく男性や若者、さらにインバウンドの外国観光客も訪れているそうです。衣料品が好調に売れるものの、シューズは低調に推移しているため、従来の商品構成に比べデザイン性と機能性をより高め、新たなコンセプトの構築に挑んでいます。

 アウトドア用品メーカーのスノーピークも同じですが、インバウンドの外国観光客が来日の際にアウトドア関連のウエアを購入する動きが広がっているため、銀座店では免税などの手続きを念頭に店舗サービスを充実し、これまでの「ワークマン」と重ならない新たな客層を発掘する狙いです。

 ここ10年間、ワークマンは消費者にとっても投資家にとっても注目株でした。プロの職人以外の客層を取り込むために開始した「Workman Plus+(ワークマン・プラス)」は機能的なウエアが割安に手に入ると評判になり、ゴルフやキャンプなどアウトドアスポーツの衣料としてヒット。女性層の開拓を狙った「#ワークマン女子」も「山ガール」ブームの波に乗り、こちらも大ヒット。株式市場ではすでに「ユニクロ」と並ぶ人気銘柄として買いを集めていました。

 当然、ワークマンだけが美味しいマーケットを享受し続けるわけにはいきません。プロの職人を中心にした高機能衣料やシューズなどでコーナンなどプロ向け専門店が品揃えを拡充し、競合し始めています。職人市場以外を狙う「ワークマン・プラス」や「ワークマン女子」も、他のアウトドアメーカーやショップがワークマンを意識した製品開発を急ぎ、独走していたワークマンもその他大勢のグループに取り込まれる寸前です。

かつての勢いを失う

 業績はまずまずの水準です。2024年3月期の中間期(4月ー9月)は売上高が865億円、前年同期比5・6%増。新規出店を含めているので売上高は伸びていますが、既存店ベースでは0・7%増とほぼ足踏み状態。店舗の販売力が期待通りの水準に達していないため、当初の見込みに比べると1・7ポイント減。営業利益は約120億円で1・4%減。2桁増で疾走していた時期を知っているだけに少し寂しい数字が続きます。

 中間決算時に公表した計画によると、「ワークマン・カラーズ」を橋頭堡にブランドを再構築する考えのようです。プロの職人向け製品は改めて機能性と使い勝手を追求して「強靭化」する一方、女性向けはファンケルと組んで保湿成分を含む高機能肌着を開発します。商品開発も閑散期の生産を利用して価格を抑え、かつ商品の回転数を高めて在庫を抑える作戦です。

真逆の商品開発は難問

 巧みなマーケティングを展開していきたワークマンですから、プロの職人向けと女性など一般消費者向けという互いに真逆な商品開発を成し遂げると思います。しかし、それはなかなかの難問です。ワークマン・プラスやワークマン女子は、アウトドア市場の隙間市場をうまく捉え、成功しましたが、これからの主戦場はまさにアパレルメーカーとガチンコの勝負が待っています。「ワークマンだから、多少デザインに難があっても安いから良いか」で購入するわけではありません。

 ワークマンの戦略を見ていると、衣料品チェーンのしまむらと重なります。しまむらは高級ブランドのデザインを参考に製品を開発し、割安感たっぷりの商品を店頭に並べ、急成長しました。しかし、お客の目は肥え、商品に対する要求は次第に高まります。しまむら離れが始まり、一時期苦境に追い込まれました。

 ワークマンのプロの職人向け、一般消費者向けそれぞれを狙う商品開発は、一つ間違えれば「二兎を追う」落とし穴にはまります。成功するためには、デザイン、生産、販売の各部門にこれまで以上に才能ある人材が求められます。

ユニクロと真っ向勝負できるか

 ユニクロを展開するファーストリティリング創業者の柳井正さんは「より優れた衣料を開発するためには、海外の一流デザイナーと協力するしかない」と社内の人材不足を自覚していました。

 ワークマンはテレビなどに紹介される際、ユニクロとの競合を謳い、自社製品の評価を高めるPRを展開していました。これから始まるのはまさにユニクロと勝負です。強みのプロの職人向け市場もライバルが追い上げています。この二正面作戦に勝利できるかどうかは、ワークマンの人間力次第、勝負の分かれ目です。

◆ 写真はワークマンのホームページから引用しました。

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