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中国スマホのシャオミが参入 EVのコモディティ化が始まった 

  中国スマートフォンのシャオミが電気自動車(EV)に参入しました。アップルやグーグルなどのスマホを受託生産する台湾のフォックスコン(鴻海精密工業)はすでにEVを発表しており、大手スマホメーカーによるEV進出が加速しています。中国EV最大手のBYDが格安なEVを投入して、先行するテスラを一気に抜き去る勢いをみせており、普及期に入ったばかりのEVは早くもコモディティ化を迎え、消耗戦が続きそうです。

採算度外視の安さ競争が始まるかも

 コモディティ化とは、一言でいえば、安売り合戦。時には利益を度外視して市場シェア拡大を最優先する競争状態をいいます。本来なら技術力、ブランドやデザインなど他の商品に比べて高い価値を持っているにもかかわらず、多くの後発企業が新製品を投入した結果、「革新的な商品」が「ごくありふれた商品」に様変わりしていまうことも。 消費者にとっては割安に手に入る恩恵はありますが、企業にとっては薄利多売が強いられ、勝ち残れなければ市場から立ち去るしかありません。

 EVに参入したシャオミは安さを前面に出したスマホで中国のスマホ市場の上位に登りつめ、今は家電など幅広い製品を生産する総合電機メーカーです。EVとしては後発だけに、価格を抑える作戦に打って出るのは当然でした。シャオミが発売した小型セダン「SU7」の価格は21万5900元(約450万円)から。シャオミは受け付け開始から27分で5万台の予約が入ったと話しています。創業者の雷軍会長は「今後15〜20年で世界5位以内の自動車メーカーになるのが目標」と決意表明しています。

フォックスコンはiPoneの次にEV

 スマホメーカーのEV進出で先行したのはiPhoneなどを中国で受託生産するフォックスコン。2021年10月にEVのコンセプトカーを発表。2023年10月に東京で開催したジャパン・モビリティショーでは3人乗りの小型EVコンセプトカーを公開しました。EVのユーザーが望む性能やサービスに合わせて、車両を改造できるプラットフォームを造り上げ、手軽にEVの用途や乗員数を拡張できるそうです。設計や生産に柔軟性をもたせるため、MIH(モビリティ・イン・ハーモニー)と呼ぶ企業連合を結成し、EVに関心が高い自動車、情報通信などの会社が得意分野を持ち寄って、EVのカスタム仕様に仕上げるそうです。世界から優秀な部品を調達して競争力のあるスマホを生産し、必要な機能は後からアプリで加えるスマホの発想をそのまま踏襲したようです。もちろん、価格は競争力のある水準に抑えます。

 EVのコモディティ化の先駆は、やはりBYD。世界最大のEV市場となった中国でトップシェアを握った勢いそのまま世界各国で販売を広げており、日本には2023年1月に進出。投入した第1号車は「ATTO3(アットスリー)」で、価格が440万円台から。ライバル車のテスラ「モデル3」が560万円台からですから、100万円以上も安い。

世界を席巻する中国BYD

 日本のEVは軽自動車からヒットを飛ばしましたが、その日産自動車の「サクラ」は250万円台から300万円台。EVの場合、実際の購入費用は公的な補助金を利用しますのでもっと低くなりますが、見かけ上の販売競争は値札が決め手。BYDの車種と日本の軽をまとも比較することにちょっと無理はありますが、中国製EVの安さに欧米や日本のEVが足元をすくわれるのは当然です。日産がホンダと中国製EVに対抗するため、基幹部品の共通化などで協業せざるをえなかったのがよくわかります。

スマホと同じ風景が

 EVの普及はこれからが本番です。あと数年も過ぎれば自動運転やエンターテインメントが満載のEVが登場し、運転席が車内にないクルマも現れるでしょう。一方で、そんな高級車を必要としないユーザーを狙い、手軽に購入できる価格のEVも溢れているはず。高級化と低価格化の二兎を追う。5年後のEV市場は現在のスマホと同じ風景が目の前に広がっているでしょう。

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