
トランプ関税の次は知性、米大学に補助金打ち切りで圧力 ハーバード大学は拒否したが・・・
トランプ米政権が理解不能な関税を振り回して世界貿易の秩序を破壊していると呆れていたら、米国の知性をぶち壊し始めています。2000年以上も前に起こった中国の秦・始皇帝が儒家の学者を弾圧した「焚書坑儒」を目撃している思いです。トランプ関税は世界経済の根幹を揺らす大騒ぎとなっていますが、米国経済がその打撃に耐え切れず長続きしないでしょう。しかし、トランプの焚書坑儒は21世紀の知性を大きく損ない、その負の連鎖は計り知れません。2000年以上も積み重ねてきた人類の知性を蔑ろにする取り返しがつかない愚行です。
人類の知性を蔑ろに
トランプ政権は米国の大学50校を名指しで「リベラルに偏向している」と非難し、政府の補助金を取り消すと警告しています。米国で広まっているDEI(多様性、公平性、包摂性)を「逆差別」と説明し、大学の方針変更を迫っているのです。DEIが差別に相当するかを議論する前に、大学には学問の自由が保障されていることが必須です。大学は多くの学者、学生を迎え、さまざまな研究テーマに取り組む一方、次代を担う人材を育てています。最も死守しなければいけない根幹を大きく損なうことに憤りを覚えます。
自身の学びの生活を振り返ればわかると思いますが、権力を握る政府にとって正しい研究テーマ、正しい勉強方法などはありません。人それぞれの思いはばらばら。だから、予想もしなかった結果が生まれ、それが私たちの日々の生活で幸福を感じる力になります。ノーベル賞の歴史がすべてを物語っています。
英国の経済紙「エコノミスト」が2025年4月15日付の記事で警鐘を鳴らしています。
納税者は長年、優れた大学の科学研究に資金を提供し、貧しい学生に金銭面で支援してきました。その代わりに、優れた大学は世界を変える研究成果を上げました。この取引は米国の軍事力と経済力を強化しました。ほとんどの技術革新に貢献しており、それはインターネットからmRNAワクチンまでと広範に及びます。それは磁石となって、米国に優れた才能を持つ人材、野望を持った人々を引き寄せる役割を果たしてきました。今、ドナルド・トランプによって書き直されています。(注;原文は英語。日本語訳は逐字訳したつもりですが、要旨をご理解ください)
当然、ニューヨーク・タイムズなど米有力新聞紙はより詳細に「トランプ焚書坑儒」を取り上げています。ハーバード、イエール、コロンビナなど有名大学がすでに米政府の補助金停止で活動に大きな影響を受けているうえ、直近ではパレスチナ出身で永住権を保有するコロンビア大学の学生がICE(移民・関税執行局)に拘束されるニュースが伝えられています。反ユダヤと批判されると大学活動の縮小や米国に滞在するビザが危うくなる空気が漂っています。学者や大学生は言いたいことが自由に言えなくなるかもしれません。
ハーバード大学は拒否
ハーバード大学はトランプ政権の要求を拒否。米政府は即座に3200億円の補助金を凍結しました。でも、すべての大学が拒否できるのか。大学の学者、研究者には、米国での活動が不自由になることを懸念して、欧州など海外へ避難する動きも出ています。
秦の始皇帝が行った焚書坑儒は紀元前213年ごろ、実用書以外の書物は焼かれ、多数の儒学者が生き埋めにされたといわれています。現代の中国でも習近平主席が情報管理や思想教育を徹底しており、国家の安全に危害をもたらすと判断された人物は拘束されています。日本の医薬品会社社員がスパイとして逮捕、拘束されています。日本政府が解放を求めても事態は何も変わっていません。
トランプ政権による大学、学者、学生らに対す弾圧は、始皇帝、習近平主席の施策と同列に並べても違和感はありません。米国憲法は思想の自由が保障されているにもかかわらず、どうしてメディア、個人に対する直接的な脅しが通用するのか。とても残念です。
日本にとって対岸の火事でも他人事でもありません。学術会議の任命をきっかけに自民党が大学、研究者の世界に介入しています。トランプ焚書坑儒は日本でもありえるのです。