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タミヤ ② 世界最強の製造業、NIPPONを体現する

  どのプラモデルでも良いです。タミヤの箱を開けてみてください。美しく成型された部品が何束も重なって、あなたに向かって「さあ、切り取って組み立ててごらん」と声をかけるはず。ビニール袋から部品を手に取ると、きれいに切削され、硬さも微妙に違うのがわかります。そして、ちょっと暖かい。気づきました?とってもフレンドリーなんです。

ボルトもリベットもリアル

 大きくカットされた部品をみてください。表面加工は驚く水準です。小さなボルトやリベットの形状をリアルに六角柱に表現しています。部品それぞれを眺めているだけで楽しめるのがうれしい。

 まずは説明書を熟読!。勢い部品を組み立てちゃだめ。手順に従い、部品を接着、組み立てていけば、「造り上げたい」「見たい」と思ったプラモデルがかならず目の前に現れます。

 初心者でも楽しめるのは、部品ひとつひとつが正確な成型されているからです。ピタッ、ピタッとはまり、どんどん形が仕上がっていく。部品から指先に伝わる感触に刺激され、プラモデルを組み立てる手が止まりません。まるでプラモデルファンの心を見透かしたかのようなタミヤの魔法に敬服するしかありません。

 多くのプラモデルファンを魅了する魔法は? タミヤのプラモデルは日本の製造業がぎゅっと凝縮された結晶です。小学生の頃から当たり前と思っていたことが、実は凄い。この事実を知ったのは大学卒業後、新聞記者として製造業の取材した時でした。

金型など基本技術が頭抜けている

 小さい部品を大量に、しかもわずかな狂いも許さない。用途に適した素材を選び出して、設計通りに部品を成型する金型を製造する。もちろん、部品の成型に相応しい素材開発も一緒です。金型の品質は素材によって裏打ちされています。金型から打ち出した後も、残る狂いを修正するため、より精緻に削り出す技術が欠かせません。すべての工程で製造業の基本の「き」が徹底されなければ、望む製品は生まれません。

 日本経済は戦後、ゼロから復興をめざし、1968年に世界第2位の経済大国となりました。その原動力は、優れた「ものづくり」でした。良いものを造り上げたいという職人気質が「日本のものづくり」の神髄が根底にありました。

 製造業を取材して最も興味深かったのが金型や鋳物。消費者の目に触れる機会はほとんどありませんが、経験と人智が結集され、正確無比のミクロの世界です。例えば金型。工作機械で作り上げた複数の金型をブロック玩具のように組み合わせ、成型する素材に猛烈な圧力をかけます。プレス機械が成型を終え上昇すると、マジックのマントをパッと払ったように完成品が姿を現します。自動車のボディのような大型品も同じです。数百トンという怪力を発するプレス金型で製作しますが、それでも寸法精度はミクロン単位。1000分の1ミリの狂いも許されません。

 鋳物はもっと不思議。金型と同じ発想で成型した砂型やロウの塊に1000度以上の鉄湯を流し込みます。冷えた後、砂型を壊すと桃から生まれた桃太郎のように立ち姿で現れます。繰り返しになりますが、本当にマジックのよう。

 この技術力があるからこそ、自動車、電機など日本製品は世界一とも言われる高い評価を集めました。安価であるにもかかわらず、性能は優れ、故障しない、そして美しいデザイン。匠の世界を大量生産できるのは、日本に工作機械、金型、鋳物など製造業の基礎技術があったからです。

 プラモデルだからといって、手を抜くわけがありません。タミヤは当初、金型を外注していましたが、1964年から金型の自社生産に向けて準備を進め、技術のノウハウと経験を蓄積します。現在はコンピューターなど最先端技術で成型していますが、その根底には日本の製造業なら必須の「ものづくり」への真摯な姿勢があります

今は接着剤なしのモデルも

 今ではボンドなど接着剤を使わなくても、完成できるプラモデルが当たり前になっています。強烈に臭うボンド、楽しいけどちょっと手間なハンダ付けを自虐的に楽しむシニアファンにとっては、寂しい気もしますが、サクッと組み立て、後で新しく修正できる楽しみが加わり、一時期ハマってしまりました。

 でも、タミヤの凄さはこれだけではありません。日本企業ができそうでできなかった世界標準のモデルを実現したことも見逃せません。縮尺35分の1の世界はタミヤが創り上げたのですから。=続く

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