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東芝は誰ものか 再建応募のファンドと共にメビウスの輪に迷い込み、自らの経営も見失う

 メビウスの輪。長い帯状の紙を切り、片方を捻ってもう一つの端に張り合わせると出来上がります。輪の上を走って1周すると向きは逆転、どんなに走り続けても永遠に輪から抜け出せない。過去から未来へ向かっても、再び捨て去ろうとした過去に戻ってしまう。

メビウスの輪から抜け出せない

 企業経営がメビウスの輪に迷い込む風景を何度か見たことがあります。経営再建計画をまとめてV字回復したとホッとしたら、再び奈落の底へ。日産自動車がその筆頭でしょうか。プラントや造船など昭和の重厚長大産業は経営再建にこぎつけても、V字回復にまで至らず姿を姿を消してしまった企業も。今、メビウスの輪に綴じ込まれているのは東芝です。

 東芝の経営再建計画に新しい動きが広がっているそうです。投資ファンドの日本産業パートナーズが中部電力やオリックスなどに東芝への出資を呼びかけています。東芝の事業は売却や分離などでかなりスリムになっていますが、現在も原子力や火力など発電関連、鉄道などのインフラ、情報技術など多岐にわたり、将来期待される量子コンピューターでは世界でトップクラス。明治から日本経済を担ってきただけに、幅広い業種と深い取引が続いており、成長力はともかく底力はまだ残っています。

 日本の産業力の集積である東芝を海外勢に手放して良いのか。日本企業の出資で再建案を構成しようという声の高まりを反映しているのでしょう。技術力もさることながら、原子力発電の技術や経験は新増設や福島などの原発廃炉に必須です。エネルギーの安全保障の観点からみても、日本の企業として存在してもらう必要があります。

 東芝の再建計画は昨年から3分割案や2分割案などケーキの切り売りのような理解し難い内容が飛び交い、提案しても否定される不甲斐ない経緯を辿っています。現在は再建案を公募方式で詰めている段階で、1次入札を終えて7月に日本産業パートナーズや海外ファンドを含め4グループに集約されています。

 日本産業パートナーズは官民ファンドの産業革新投資機構と組んでおり、いわば日の丸プロジェクトに色合いが濃いグループでした。他の有力企業に声をかけるのもうなずけます。私も日本勢で再建して欲しい一人です。

 ところが日本経済新聞は9月22日付記事で官民ファンドの産業革新投資機構が2次入札で手を組んだ日本産業パートナーズと連携を解消する方針だと伝えています。産業革新投資機構は相手を米国のベインキャピタルに組み替えるそうです。再建計画の公募もメビウスの輪に入り込んだようです。

出資する企業とは将来、利益相反にならない?

 再建計画の行方はますます不透明になりました。ただ、もし日本企業による経営再建が決まった場合、東芝に出資する企業はどう説明するのでしょうか。自社にとって欠かせない技術や製品を保有していることが最大の理由になるはずです。一般株主の多くは納得するかもしれません。東芝の存在自体が産業インフラです。電力、JR、ビル建設、電機メーカーなどの事業継続に欠かすことはできません。

 最終結論がわかりませんから、うかつなことは言えませんが、ファンドや産業革新投資機構と組む出資企業が10社程度まで膨らんだ場合、出資企業と東芝との利益相反が発生するのではないでしょうか。再建途上、あるいは終えた段階で東芝が高収益企業に再生したとします。出資企業は東芝と取引しているわけですから、当然ながら価格交渉などで利益や損失が議論になります。もし再建を優先して出資企業が価格などで配慮したら、本来得るべき利益を失います。逆もあります。東芝が高利益を計上しそうになったら、利益を抑えるためにも価格やコストの決定過程で何らかの譲歩を迫るかもしれません。

 まるでかつての国鉄や電電公社の経営再建を見る思いです。「日本のためにみんなで支えたのだから、国民に利益を還元するのは当たり前」。民間企業であるにもかかわらず、東芝は事実上の公社の道を歩むのでしょうか。株式の非公開、あるいは株式上場の問題ではありません。単純に考えても、東芝は自らの経営を主導して利益を追求する会社に再生できるのかという疑念は消えません。経営が事実上コントロールされるでしょう。東芝の経営は誰が責務を負うのか。従業員や関係企業、取引先のみなさんからみると、不安が残るだけです。

東芝は誰が経営するのか

 メビウスの輪は1周すると、逆向きに立っていることになります。東芝は民間企業として再生しようと走り始めたら、ゴールは「日本のため」という名目で誰が責務を負うのか不明な経営主体だった。再建計画の公募自体が迷走し始めえいます。こんな無限循環の経営再建は目にしたくありません。

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