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「下請けいじめ」は日本の弱さの病巣「強い日本」をめざすなら一掃を

 2026年1月1日、中小受託取引適正法(取適法)」がスタートしました。公正取引委員会の伝家の宝刀「下請法」を大幅に改正、強化しており、発注する大企業が下請けする中小企業に不利益な取引を求める「下請けいじめ」を一掃する構えです。

金型の無償保管は増加

 ところが、なかなか先が見えません。公取委は2023年3月から下請法違反の企業名を公表する「勧告」を始め、自動車や流通などで頻繁に摘発していますが、3年すぎても違反件数は減りません。発注する優位的な立場を利用して契約した取引価格を下回る金額を支払う事例が絶えないうえ、本来なら費用を支払うべき金型や部品の保管を無償で求めるなど長年続く商習慣、言い換えれば悪弊が絶えません。

 例えば、金型の無償保管。勧告を受けた企業は2023年は2社、2024年は6社、2025年は20社と増え続けています。公取委が「下請けいじめ」一掃に本気であることを示すため、積極的に摘発していることもありますが、2026年に入ってもすでに2社を数えます。

悪弊は消えず

 製造業では下請け企業に金型や部品を無償で保管させる商慣習が当たり前のように根強く残っています。とりわけ、自動車産業はトヨタなど完成車メーカーを頂点に1次下請け、2次下請けと積み重なるピラミッド形式の「系列」と呼ぶ産業構造ができあがっており、下請け企業が発注する大手企業に抵抗することはほとんど不可能の状態です。結局は1次下請けが2次、3次の下請け企業に将来の発注を念頭に金型の無償保管など下請法違反の行為を黙認するよう要求する事例が続きます。

 公取委はこれまでも違法を犯す自動車部品メーカーなどに勧告を重ねてきましたが、違法行為が絶えないため、2025年10月に自動車産業の頂点につ立つトヨタ自動車、三菱ふそうトラック・バスに対し下請法違反を認定、再発防止を勧告しました。いわば鉄槌を下した形です。違反行為に違いはありますが、摘発する対象は日産自動車、スズキなどと広がっています。

自動車各社は鈍感

 呆れるのはトヨタなど自動車メーカーの下請法違反に対する意識の鈍感さです。公取委と中小企業庁が下請け企業に対する不正取引を盛んに摘発しており、トヨタに限らず自動車各社の購買担当は現在の取引形態が下請法違反に触れるかどうかをチェックしているはず。それでもトヨタや三菱ふそうは是正しなかったのですから、不正行為という認識がなかったのでしょう。

 三菱ふそうの事例をみてください。2024年以降、新たな発注予定が無いにもかかわらず、5000個超える金型を下請け業者50社以上に無償で保管させていたそうです。公取委の警鐘は全く耳に届いていなかったのでしょう。

 自動車産業はエンジン車から電気自動車(EV)への移行が始まり、「100年に1度の変革期」といわれる激動の時代に突入しています。2026年2月に入ってトヨタは佐藤恒治社長をわずか3年で交代させ、代わりに日本の産業改革を指揮するCIO(チーフ・インダストリー・オフィサー)の役職に就け、先頭に立つ覚悟を示していますが、金型の無償保管など「下請けいじめ」の一掃にはどこまで興味があるのでしょうか。

変革を阻む象徴

「神は細部に宿る」。金型無償保管など「下請けいじめ」にこだわるのは、変革を阻む日本産業界の病巣のシンボルだからです。技術革新を連呼しながらも、個別の企業がトヨタ系列など既存の枠組みを超えて突出することを許さない。日本独特の「阿吽の呼吸」を求め、中小企業が人工知能などを使って独自の技術革新で世界の舞台に躍り出ることを封じ込めているのです。これでは、日本経済に新たな活力が蘇るわけがありません。

 高市政権は経済、外交で「強い日本」を謳っています。しかし、日本経済の根幹は、今も昭和から引きずる悪弊がこびりついているのです。「下請けじめ」すら一掃できないで、強い日本経済を期待できるのでしょうか。「強い日本」が空回りしてしまい、知らぬ間に倉庫の奥に無償保管されてしまう末路だけは避けてください。

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