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オホーツクはうまい!北海道遠軽町で「昭和の空気」を吸いながらコマイ、チカを熱燗で

「おいしいコマイを食べて、熱燗をグイッと飲みたい」。この一心でオホーツク海に面した北海道遠軽町を訪れました。これまでも何度も訪れていますが、仕事絡みの出張ですからどうしても慌ただしい。まだ見知らぬ魅力が必ずある街と直感していましたから、いつかは一人旅でかならず訪れようと決めていました。

偶然、入ったお店がビンゴ!

 お店探しも直感に頼ろうと決め、JR遠軽駅近辺に点在する居酒屋の前に立ち、ピンと閃くかどうかを試しました。日曜日のせいか、お休みの居酒屋もあって迷い、歩き回りました。居酒屋が集まる通りを2回りぐらいブラブラして決めたお店は、構えからして「昭和」。木戸を開けて店内に入ると、映画のセットを彷彿させ、期待を超える「昭和の空気」が充満。私自身、昭和の老人。カウンター席に座っただけでお店の空間に溶け込んだ気分に。

 目の前には竹皮に達筆で書かれたメニュー。たらの白子、ほたてなどオホーツクなら絶対においしいお品書きが並んでいますが、お目当てはコマイ。「かならずある」という根拠なき自信を持って「焼き魚」を眺めたらビンゴ!、即決です。うれしいことになんとコマイの横には「チカ」。思わず「ウヒョ〜」。

 北海道育ちの私には小さい頃から食べた慣れ親しんだ魚で、ワカサギにそっくりですが、身は筋肉質。食感は全く別もの。雑魚と誤解されているのか、居酒屋でお目にかかることはほとんどありません。今夜のメインディッシュはコマイとチカに決定です。

 お酒はもちろん、熱燗。「飲み物」のメニューでは北海道の銘酒「男山」が準備万端で待ち構えていました。

 カウンターの向こうには私よりだいぶ先輩と思われるご主人が立っていますが、こちらに背を向けたまま。「声をかけるな」と背中が語っているようなので、一瞬姿を消した女将さんを泳ぐ視線で探し出して「コマイとチカをお願いします。お酒は熱燗で」。

熱燗は徳利をヤカンに

 女将さんは調理場に入り、注文を伝えると、背中を向けたままだったご主人は無言で魚を焼き始め、続いて徳利に日本酒を注ぎます。お燗はどうするのかなと注視していたら、徳利はカウンター越しに置かれたヤカンの丸い口にドボン。ヤカンで熱燗(アツカン)。なんとも響きが良い。燗酒はお湯で温めたり、焼き場の脇に置いて温める焼き燗などいろんな方法がありますが、ヤカンにドブンと漬け込み、徳利の首がヤカンから出る風景も好きです。

 ご主人と同様、年季の入ったカウンターに並ぶコマイとチカ。男山の熱燗とお猪口。見た目はお焦げが目立ちますが、コマイもチカもちょうど良い焼け具合。コマイは手で中骨から白身を離して、そのままパクリ。チカは頭からパクリ。歯応え、食感は期待通り。つまり、オホーツクの美味が口の中に広がり、大満足。

 なによりも、ご主人の立ち振る舞いが際立っていました。女将さんから注文を受けるのが基本の流れですが、声は発しても聞き取れないほどの小声。なぜかマスクをしているのですが、右耳にマスクの紐をかけてぶら下げたまま。マスクをつけた狙いは不明でしたが、つまらない詮索なんかどうでもいいこと。

 試しに「熱燗ください」と直接お願いしたら、やはり無言でしたが、目線でうなずいて徳利にお酒を注ぎ、ヤカンにドブッ。熱燗の温度チェックは指先を徳利に入れて測り、良しとなったら目線をこちらに向け、無言で「渡すよ」と語りかけます。

 日本的経営の極致ともいえる「暗黙知」を絵に描いたような所作が続きます。お酒が進まないわけがありません。

 残念ながら、興醒めする出来事もありました。「笑点メンバーには親しくしており、〇〇さんや✖︎✖︎さんらといつも・・・」などと大きな声で話すお客さんがいます。聞きたくはなかったのですが、店内に響く大きな声なのでいやでも耳に入ります。どうも芸能関係の人らしく、何かのイベントで招かれたようです。

 相手はイベント開催者の関係者で、感謝の言葉を重ねながらとても良いホテルを予約してありがとうございます。ただ、バスタブがゆったり入れる大きさだったら、もっとうれしかった・・・」といろんなクレームを何回も何回も繰り返していました。

 ふと上を見上げたら、いくつもの寄せ書きが貼られています。誰なのかわかりませんが、きっと芸能人のみなさんが書いたものなのでしょう。テレビなど何度も紹介されているはずです。「有名なお店なんだあ〜」と思いながらも、ご主人がなぜ無言を通す意味を知りたくなりました。

「地元のお客さんにはきっと饒舌に話すかも?」。つまらない詮索が再び浮かびましたが、お酒がまずくなります。「すいません、熱燗をもう1本お願いします」。ご主人は無言で徳利に男山を注ぎ始めました。

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