3本の矢よりも青首大根3本の芽、逃げずに生きる力と順応性に驚き、ご馳走さま
野菜や花を育てていると、いつも新鮮な驚きに出逢います。多くの野菜は八百屋さんやスーパーの店頭で見慣れているはず。でも、店頭ではなく露地植えの畑で天を目指す姿を見ると生きる力を感じます。雨や風、とりわけは今年は35度を超える猛暑が続き、ちゃんと育つのか心配になる気候でも、一度根を下ろした場所から逃げることができません。生育に差が出るものの、しっかり実りをもたらしてくれます。感謝です。
今年はカリフラワーがウマイ
今年はカリフラワーがうまい、というか甘い。秋をどこかけ吹き飛ばしたかのような長い夏のせいか、大きな団扇に似た葉にずっと隠れていましたが、12月に入って黄色の花蕾が見えてきました。大きさは広げた手のひらより大きいバレーボールぐらい。花蕾を”根っこ”から切り取ると、結構な重量感。早速、自宅に戻ってちょっと柔らめに茹で上げ、マヨネーズをたっぷりかけたら、ウマイ、甘い。「収穫直後の野菜は、ホントうまい!」と何度も反芻します。
会員制農園に参加してもう9年過ぎようとしています。プロの農家さんに手取り足取り教えてもらいながら、毎年20種類以上の野菜を種まき・苗植えから始め、収穫を経験しています。土壌の手入れは農家さんに頼っているので、自分の作業は野菜の生育を眺め、「もっと大きくなって美味しくなって」と励まし、褒めるぐらい。それでも、おいしく育ってくれるので、ありがたいことです。会費や労力を考えたら、スーパーで買った方がお得だとわかっていても、ほぼ毎朝、畑で野菜の育ち具合を眺める日課が大事です。
1本の青首に3本分の葉が育つ
今年のビッグニュースは、青首大根。1本の大根に3本分の葉が育ちました。初めて見ました。全く偶然です。種を蒔き、ようやく芽が出たばかりの苗の時、2本分の苗が大雨で流されてしまったため、追加の種を蒔きました。その追加した種と大雨で流されたと思った種が合体したようです。(あくまでも個人の感想です)この大根を畑から抜く時、「やけに葉が多く、込み入っているなあ」と思ったのは、3本分の葉が育っていたからでした。
今年の大根は例年とは違うと覚悟していました。後から蒔いた青首大根の種は当初予定より収穫が遅くなりますし、夏と秋と冬が混在する異常な気候が続いたため、早蒔きと遅蒔きで育ちにバラツキが出ます。1ヶ月ぐらい我慢すれば美味しい大根に育つと思っていましたが、後蒔きの2本のうち1本は育ちが悪く、土から青首が出てきません。もう一本はゆっくりですがなんとか成長しており、とにかく「我慢、我慢」と言い聞かせていました。
ところが、猛暑から秋を飛び越えて一気に冬へ移った気候のせいか、大根も身構えてしまい伸びが止まってしまったように見えます。「まあ、ここまで成長したから満足だよな」と声をかけて、まずは1本を抜き取りました。同じ畑で収穫した2週間ぐらい前に食べた大根に比べて歯応えがあり、固いというよりは筋を感じます。丸切りにして数時間、煮込んで鶏ガラスープと醤油少々で味付けしていただきました。それでもちょっと筋が・・・。
追加で蒔いた種と合体?
種まきと苗生育の時期がいつもと違うと味にも影響するのかなと思い、ふと台所の簡易トレーに載せていた青首大根のクビを見てびっくり。大根の葉は刻んで炒め、塩昆布などを混ぜ込んでご飯に一緒に食べる惣菜にしたので、大根の葉はザクっと切られた状態。よく見ると葉の生え際が3本あります。まるで3本分の芽が1本の大根の青首を土台に伸びた感じです。
大雨で流されたと思った2本分の種は後で追加した大根の苗を抱き込むように一緒に育ったのでしょうか。まるでギュッとしがみついて、絶対に生きるぞという執念を感じます。なんか凄い光景です。
「生きる力と順応性があれば、生き残る」。思わず、お経のようなフレーズが浮かびました。種として蒔かれた土壌や気候が生育を阻害しても、なんとか生き続けるぞ。この思いは捨てない。1本の大根に3本分の葉が生えたのも、種が蒔かれた場所が3本分の大根が生育しようとしてもひ弱に育ってしまうから。それなら、3本一緒に1本の大根として成長しよう。3個の種はこう決めたのでしょうか。毛利元就の「3本の矢」の逸話のようです。その場所、時に合わせて融通無碍に育ちを変える。その順応性に驚くしかありません。大根1本からいろいろな教えをいただくことができました。心からご馳走様をいいます。