輪島の味が恋しい 柚餅子、岩海苔・・・ 爽やかでちょっと甘い、能登が香る
石川県輪島市には、豊な自然がプレゼントする美味しい海産物や農産物がたくさんあります。どれか一つを選べと言われても、「どれも美味しい」と答えるしかありません。しかも、石川県の金沢市があります。「うまいものはどれか?」を石川県民と話し始めたら、1、2時間はすぐに過ぎてしまいます。ただ、銘菓が多い金沢市でも見当たらない銘菓があります。中浦屋の「柚餅子」です。
中浦屋が避難所で配布
読売新聞が1月14日付記事で「 柚餅子 総本家中浦屋」(石川県輪島市河井町)が和菓子を避難所で配布する支援を行っていると伝えています。中浦政克社長は「少しでも癒やしになれば」と話しているそうです。中浦屋は火災にあった輪島朝市店は全焼したものの、輪島本町店の保管倉庫や製造工場はを屋根の一部が落ちましたが、商品の多くは無事な状態で見つかったそうです。
記事によると、和菓子の配布は7日から軽ワゴン車で巡り、主力商品の柚餅子を中心に約1000個を配布しました。中浦社長は「できるだけ配りたい。朝市も復活すると信じている」と話し、20日ごろまで配る見込みだそうです。
中浦屋の「丸柚餅子」は輪島市を訪ねたら、かならず購入しました。大粒の柚子を丸ごと中身をくり抜き、中浦屋秘伝の餅だねを詰めて蒸し上げて、半年間の自然乾燥を経て出来上がり。
輪島塗の行商がお土産に
大きな柚餅子をちょっと薄めにスライスして食べます。冒頭の写真は中浦屋のHPから引用したものですが、私の場合、写っている一枚の厚さよりもう少し薄めに切ります。それでも結構な歯応えがあるのですが、口に含んで噛んでいるとゆずの香りが広がってくるのがわかります。餅と柚子の表皮が絶妙に絡み合い、柚子やみかんを生のまま食べる感触と全く違うのですが、餅とも異なります。なんともいえない歯応えと舌から鼻へ抜けるシトラスのツンとした香りに魅了され、もう一枚、もう一枚と食べてしまうのですが、一個丸ごとを食べ切るのは無理。3分の1か半分ぐらいで満腹感を覚えるはずです。
丸柚子餅は源平の時代に生まれ、保存食、携帯食として利用されたといいますが、腹持ちの良さを実感すると「なるほど」と納得します。輪島の銘菓となった背景もとても輪島らしい。輪島塗です。輪島塗は全国各地のお客を訪ねる行商で販売します。丸柚餅子は長期間保存ができるので、お客さんに安心してお土産として贈呈できます。輪島塗は高価ですから、お客さんは裕福な家がほとんど。ちょっとやそっとの銘菓じゃ驚きません。見た目がまるで輪島塗の器か茶器の棗のようですから、輪島塗の商談をしながら、「こちらをどうですか」と渡せば、塗り物や焼き物に目の肥えたお客さんも喜ぶはずです。
舳倉島の岩海苔も逸品
実は輪島を訪ねたら、必ず購入する逸品はもう一つあります。岩海苔です。輪島港から約50km北にある舳倉島で真冬に海女さんが手摘みした天然の岩海苔を板のりに仕上げています。磯の香りがそのまま残り、板のりをそのまま食べるとパリパリと音がします。軽く炙ると香りが映え、板海苔の色合いがパッと変わります。炙り過ぎると味が台無しになるので、正直炙りは難しい。袋を開けてパリパリ食べ、日本酒を飲むのが私にとって最高の味わい方。輪島の豊穣な海、そして磯の香りに酔います。
いつもは朝市で購入するのですが、岩海苔は人気が高いのでなかなか手に入りません。朝市のおばちゃんが「売れ切れた」と笑いますが、こちらは食べる前から口の中は岩海苔の磯の香りが充満しているので、血眼になって朝市を歩き回って探しました。「あるよ」と言われた時は、当然ですがすぐに口の中に唾がじわっと溜まるのがわかります。
朝市通りはじめ輪島市内は壊滅状態になってしまいました。朝市がよみがえり、丸柚餅子、岩海苔など輪島、そして能登を代表する特産品がずらりと並ぶなか、多くの人々がおばちゃんとおしゃべりして、笑って楽しむ日が必ず訪れると信じています。