グリーン成長戦略①わずか2年で立ち枯れ?!花が咲くまで頑張りましょう

  ちょうど2年前の2020年10月26日、菅首相は10月26日の所信表明演説で、2050年までにカーボンニュートラルをめざすと宣言しました。

清水の舞台が飛び降りるかのような勢いでした

 菅首相は1ヶ月前の9月に就任したばかり。ですが、その3ヶ月後の12月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表します。冒頭には「温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入」と明記し、経済と環境の好循環を為し遂げる産業政策を具体的に示します。経済成長を優先して地球温暖化政策に腰が引けていた日本政府の姿勢が一転、まさに清水の舞台から飛び降りた勢いを感じました。

 菅首相は翌年2021年4月、さらに踏み込みます。米国がオンラインで開催した気候変動に関するサミットでは、「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向けて、挑戦を続けていく」と表明。これまでの削減目標は26%減ですから、20ポイントも底上げしました。

 経産省資源エネルギー庁のホームページも、自画自賛しています。

それ以前の日本の温室効果ガス削減目標は、2030年度に2013年度比で26%削減するというものであり、これを「国が決定する貢献」(NationallyDetermined Contribution:以下「NDC」という。)として2015年5月及び2020年3月に国連に提出しています。また、日本の長期的目標は、今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現し、2050年までに温室効果ガスを80%削減するというものであり、これを「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」として2019年6月に国連に提出しています。菅内閣総理大臣の宣言は、これまでの2030年度の温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げるとともに、カーボンニュートラルの達成時期を大きく前倒しするものと言えます。

 あれから2年。全く予想外だったコロナ禍が世界に広がり、世界の経済活動は静まり返ってしまいます。ようやくコロナ禍の出口が見え始めたかとホッとしたら、ロシアによるくウクライナ侵攻が始まりました。

 この2年間、世界経済は、成長よりも生き延びるのが精一杯。企業活動が縮小したせいで温暖化ガスの排出量は予想以上に減少しています。しかし、コロナ禍の収束に合わせて企業の活動は活発化。2年近い苦境の間に逃した収益を取り戻すためにも、カーボンニュートラルを一度、道脇に置いた企業もあるでしょう。

石炭火力が復活の兆し

 世界のエネルギー需給の構造も変わりました。石炭火力発電が復活する兆しが見えているのです。インドはじめ中国、英国、韓国フランスなどでこれまでの脱炭素化の動きが軌道修正されています。

 石油・ガスの需給が大幅に変わりました。ロシアのウクライナ侵攻によって原油や天然ガスの価格は高騰。安価で手に入りやすい石炭に手が延びます。世界の電力が太陽光など再生可能エネルギーへ移行する傾向に変わりはなく、石炭火力の復活は一時的とみられていますが、これから冬を迎える北半球にとって脱炭素よりもまずは電力確保と考える国がさらに増えても不思議ではありません。

日本は節電節ガスよりも補助

 日本はどうでしょうか。ガソリン、電気・ガス代の値上げが続き、すでに政府はガソリン代の上限を抑える補助金制度を開始しています。電力・ガスについても、年明けから大幅な値上げが予想されるため、値上げ分を吸収する新制度をスタートします。コロナ禍の収束で経済活動の再開も課題です。旅行支援やGo to eatなど観光や飲食などサービス業の支援も始まりました。

 経済に活力が戻らなければ、賃金も増えません。コロナ禍で味わった苦境から抜け出すとともに、ガソリンや電気・ガスなどエネルギー価格に食品など日常生活の必需品の値上げの波を乗り切るしかありません。

「グリーン戦略」は掛け声だけで終わっていないはず

 果たして2030年の温暖化ガス削減の目標は、生きているのでしょうか。こんな素朴な疑問をスタートラインに「グリーン成長戦略」を改めて読み直しみます。世界が経験した激動の2年間のせいで、まさか立ち枯れしているとは思いません。

 最初の掛け声は大きいのですが、次第に小さくなり、忘れ去られた政策も過去にあります。カーボンニュートラルをめざすグリーン成長戦略をこれから改めて手入れし直し、枝葉を広げてかならず脱炭素の花を咲かす努力を忘れるわけにはいきません。2年前に世界に約束したのですから。

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