Aの時代 あるいはA世代誕生 人工知能が当たり前の社会 それは貧富の格差加速も

 近未来の社会を想像しながら散歩していたら、アルファベットの一文字が突然、目の前で現れました。「A」が立ちはだかっています。ここから先は「A」を避けて前には進めないと言うのです。Aを頭文字にする英単語がすぐに浮かびます。「Artificial Intelligence」(人工知能)。この「A」が支配する近未来社会が迫っているのでしょうか。

「A」が支配する社会とは

 この「A」の先にはもうひとつの「A」が待ち構えている気がします。近未来の社会が人工知能を使いこなせるだけの能力を持つ人間だけを尊重し、その結果として富を一手に握り締める結果になるのではないか。自分自身を選ばれた”貴族階級”のように勘違いする社会です。もうひとつの「A」である「Aristcrat」も待ち受けているはずです。富裕と貧困の2極化が進め、社会を分断するのではないか。

 対話型AI「ChatGPT」が公開されたのは2022年11月末の1年前。人間並みの会話やアイデアなど予想以上に優れた能力とおもしろさが話題になりましたが、ChatGPTに代表される生成AIはあちこちに使われ、日常生活の中にどんどん組み込まれ始めています。ChatGPTを開発したOpenAIの影は早くも薄れ、マイクロソフト、イローン・マスクら世界の有力企業や投資家がAIの世界を押し広げています。日本企業も生成AIを活用しなければ株価が下がってしまうと心配してか、自社のサービスに取り入れる動きが止まりません。

現代社会を根本から崩すマグニチュード

 AIが人間の能力を上回るかどうかわかりませんが、これまでの社会構造を根本から変えるマグニチュードを放っているのは事実です。米ハリウッドで脚本家らが映画のシナリオライティングの仕事を奪われるとストライキしたのはまだ序の口。契約書の作成など多くの法律をチェックしながら進めなければいけない業務の多くはAIに肩代わりしてもらった方が時間効率も高まりますし、担当スタッフの削減にもつながり、会社運営コストの削減に直結します。会社の業務は確実に変わります。

 大学生の論文作成の手助けのみならず博士号取得などより専門的なレベルでもAIは入り込んでいます。手助けに利用したAIが他人の論文を勝手に使う著作権違反を犯す可能性が高いため、AIが作成したかどうかをチェックするAIも登場。人間の存在と価値はどこあるのか見極めるのが困難な時代がすぐに訪れそうです。

 中高校生の頃、愛読したSF作家のアイザック・アシモフが描いた近未来社会がもう到来しているようです。ロボットが人間並み、あるいはそれ以上の能力を持ち、パートナーとして一緒に生活する。アシモフが提唱した「ロボット3原則」を真剣に考える時を迎えています。

アシモフのロボット3原則が現実社会に

 アシモフは3原則の第1番目に「ロボットは人間に危害を加えてはならない、また人間に危害が加わるのを見逃していならない」と定め、これを大前提に人間とロボットの関係を説きます。その第2番目には「ロボットは人間の命令に従わなければならない」、第3番目には第1、第2の原則を下に「ロボットは自分を守る」としました。

 アシモフの3原則が守られる限り、人工知能で作動するロボットは安心です。日本はじめ世界の政府は、生成AIなどの利用についてガイドラインを設け、人間と人工知能の棲み分けを図ろうとしています。なんとか安全安心は死守できるでしょう。

 むしろ、心配なのは人工知能の力を利用する人間の存在です。人間を上回る知力と行動力を持ったロボットを設計、操作できる人間は、近未来社会のエリートとして尊敬されるはずです。人工知能に勝るとも劣らない知能指数を持ち、人工知能が叶わないアイデア、創造力を発揮する人材は、かなり珍重されます。なかには選ばれた存在として自らをあたかも人間社会の頂点に立つと勘違いする人材が現れるでしょう。

世界の金融センター、ウォール街

巨額報酬を当たり前のように受ける金融業界

 現在の金融業界を見てください。投資商品は投資リスクを複雑な方程式などを使って設計され、少数の人間にしか理解できない世界に仕上げています。神のみぞ知る金融リスクをコントロールし、未来を予測できるかのような金融機関のトップは日本円で数百億円の報酬を当たり前のように受けています。神に選ばれた人物と誤解しているかのようです。

 人工知能が跋扈する社会は、自動車、公共交通機関、金融など人間に関わるものすべてが制御されます。自分自身をかつての貴族になぞらえて巨額の報酬を受け、富を膨らませることを当然と考える人間は必ず現れます。その半面、人工知能に制御される人間は、見下され、低い報酬を甘んじることになるでしょう。富と貧困の格差は信じられない勢いで広がり、新たな社会の分断が生まれます。

 果たして杞憂でしょうか。Z世代、あるいはジェネレーションZという言葉があります。1990年代後半、インターネットが誕生した頃に育った若者は、インターネットが空気と水と同じ存在と考えています。ネットサービス、スマホなどは自らの手足。インターネット抜きに生活することは不可能と考え、ネットの否定はかなり少数派でしょう。

自らをAI社会の貴族と勘違いする

 これからは、生成AIなど人工知能が当たり前と捉える若者が増えます。著作権の侵害、考える力・創造力への悪影響を心配する世代は、もう過去の遺物と見做されます。人工知能との共存が空気を吸い、水を飲む行為と同じと考える世代は、どのような社会を築くのか。インターネットと共に誕生したZ世代は、人工知能AIによる新たな新世代の始まりを迎えるのです。

 それはA世代、ジェネレーションAと呼ぶのでしょうか。人類史はZで区切りをつけ、再びAから始める。Z to A。人工知能の「A」は、そう人類に告げているようです。

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