震災前の風景

計画停電 その場しのぎか、日本のエネルギー消費を根本から変えるのか

  経産省が2022年4月12日、年末の冬の電力受給見通しを発表しました。東京電力と経産省は10年に1度という厳しい寒さを想定した場合、東京電力の管内は2023年1月でマイナス1・7%、2月はマイナス1・5%になると予測しています。電力供給が需要に対してマイナス、不足するわけですから想定される事態は停電です。今年の冬は何度も停電する可能性があると予測しているのです。まだ夏を迎えていないにもかかわらず、早くも寒気を覚えます。

首都圏の停電は日本の未来もブラックアウト?

 東京電力管内は首都圏です。首都がブラックアウトすれば、日本の政治・経済もブラックアウト。経産省は最悪の事態を回避するために計画停電が必要との見方を示していますが、日本のエネルギー政策を抜本から変革しなければ日本の未来そのものがブラックアウトに直面します。こればかりはしっかりと先を見通せる事実です。計画停電を一時的な措置で思い込んでしまったら、今夏ですら暗中模索する羽目に陥るぐらいの危機が迫っています。

 ここでちょっとだけ電気の基本を確認します。私たちが使用する電気は交流です。交流はそれぞれ波形を描く周波数で流れ、東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツを採用しています。この周波数を乱れるとどうなるか。発電機や電動機(モーター)などが正常に機能しなくなり、発電所の出力が低下するうえ、工場などで使用する産業機器などで障害が発生します。企業活動や日常生活で問題が起こらないようにするため、電力会社にとって周波数は常に一定に保つことが必須条件です。

 周波数を一定水準に保持するには、電力の供給と需要を常に同じ水準にしなければいけません。ヤジロベエに例えれば、背をぴーんと伸ばす立ち姿を維持する平衡が理想です。電力会社の運転管理室は映画やテレビに登場するNASAのコントロールルームのようです。管内の各発電所の出力状況、需要がずらりと大きく張り巡らされあパネルで表示され、発電量と電力需要がぴたりと符合しているかどうかを24時間体制でチェックしています。それぞれの数字は常にピョコ、ピョコと表示が変わり、繊細な調整が行われているのがわかります。より詳しく理解したい方は電力会社のホームページで図解入りで説明しています。

 計画停電に戻ります。2022年3月の福島沖地震で火力発電所が休止した影響を受け、直後に東京電力、東北電力は初めて「電力需給ひっ迫警報」が発令されました。先ほど説明した通り、火力発電の稼働停止で発電量が低下した結果、需要と周波数が不安定になる可能性が高まったからです。ちょうど天候が荒れたため、太陽光の発電力が低下した不運も重なり、稼働中の発電所だけでは需要に発電が間に合わない恐れが出たため、急きょ揚水発電のフル稼働で停電は避けられました。

 ここまでは先日も書きました。経産省と東電が今冬での計画停電を言い始めたのは、電力不足の事態が短期で切り抜けれないと判断し、企業や日常生活で早めの対応を求めざるを得ないと腹を括ったからでしょう。

 発電量が需要に追いつかない場合、電力会社は相互に供給し合います。周波数の違いから電力供給は東日本、西日本と分かれてしまいますから、東京電力は主に東北電力から融通してもらいます。ところが、東北電力も東電同様に警報が発令されたことから分かる通り、電力受給見通しは2022年1月で2・2%、2月で2・5%とぎりぎりの水準です。日本の火力発電所は多くが老朽化してきていますから、万が一故障で休止したらすぐにマイナスに陥ってしまいます。

 東日本と西日本で融通できないことはありません。周波数を変換して東と西で相互に供給できる変電装置がありますが、その能力はまだまだ期待できる水準ではありません。そもそも西日本の電力会社も安心できるレベルではありません。中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力でも2022年1月、2月は2%台。最低でも3%の発電余力がなければといわれますから、ぜんぜん余裕がありません。

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