震災前の風景

計画停電 その場しのぎか、日本のエネルギー消費を根本から変えるのか

30年以上も前に計画停電をワシントンで取材

 計画停電は実はもう30年以上も前に取材して記事にした経験があります。当時はバブル経済の真っ最中、電力消費量が伸びる一方。原子力発電所はフル稼働の時代です。それでも需要に供給が追いつかない。東京電力に営業部があるのですが、「電力を供給できないので、電気を売らない営業部」と言われた時です。それでも夏の甲子園の時期はエアコンがフル稼働するため、電力が不足してしまい、東京電力の本社が真っ暗になるほど節電して企業や日常生活での節電を求めたことがありました。

 計画停電の”先進事例”は米国のワシントンでした。湾岸戦争が勃発した1990年に石油など他のエネルギー取材に合わせてワシントンの政府関係者や電力会社を回りました。計画停電は街区ごと、時間帯など停電にローテションを組んで実施する仕組みで、できるだけ影響を抑えるため状況や地区の事情に合わせて設計することを知ります。

 しかし、日本の電力会社は「電気の品質の高さ」と安定供給を自負していましたから、その計画停電がまさか日本で再現されるとは思いもしませんでした。それが11年前の東日本大震災は東京福島原子力発電所の事故などをきっかけに実践されます。

 日本が直面するエネルギー状況は改めて説明するまでもないでしょう。ロシアによるウクライナ侵攻で世界のエネルギー戦略は一変しました。ロシアの天然ガスに頼ってきたドイツはじめ欧州などは代替できる調達先を求める一方、原子力発電の位置付けを見直す動きも出ています。日本はロシアのサハリンから天然ガス・石油を輸入していますが、先行きは見通せません。原子力発電の再稼働もまだまだ見通せません。太陽光や洋上発電は日本の国土や自然環境から行って欧州のレベルに追いつけるかどうか。世界でも脆弱な国のひとつです。

経産省や電力会社はしっかりと説明を、私たちも耳が痛いのをがまんして聞きましょう。

 この1年はもっと日本のエネルギー消費の変革を議論する時間と政府も企業も国民も共有しなければいけません。節電という言葉で表せる努力で済むのか、もっと踏み込むのか、どこまで踏み込めるのか

 世界のエネルギー事情が好転する楽観は許されません。計画停電をこれから10年間、経験し続ける覚悟があるのか。まだ危機感が浸透していませんが、実は大きなエネルギー危機が待ち受けています。経産省や電力会社は原発再稼働を前提にした発電力の確保を唱えるだけでなく、国民にどう電気を使い、制約するかを説明し議論を広げる努力を始めて欲しいです。耳が痛いことですが、私たちもしっかりと受け止めざるをえないのです。

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