グリーン成長戦略④電力の本気度を問う 自らゴールポストを遠ざける

「環境適合性」の意識が先行し過ぎ?

 結論としては世界のカーボンニュートラルの潮流のなかで、「環境適合性」に対する意識が先行し過ぎていたと認識し、「これまで以上にS+3Eのバランスが求められるのではないでしょうか」と締めています。

 資源エネルギー庁のHPによると、「S+3E」を以下の通り、説明しています。

  安全性(Safety)を大前提とし、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時達成するべく、取組を進めています(S+3E)。
日本は資源に恵まれない国です。全ての面で優れたエネルギーはありません。エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが補完されるよう、多層的なエネルギー供給構造を実現することが不可欠です。

 電力業界は生活、企業活動を支える電気を供給する責務を負っています。停電や電気の周波数の狂いなどが発生すれば大きな被害が広い範囲に及びます。原発の再稼働が難しく、新増設がそれ以上に困難な状況にある現況を踏まえ、厳しい需給を乗り越えるためには太陽光など再エネに向かってまっしぐらに進むわけにはいかない。現況を考慮して火力発電の活用が必要。こう考えるのは、とてもよく理解できます。一見、遠回りの道筋を選ぶかもしれないが、日本のエネルギーの現実を直視すれば真剣に考えなければいけないとコラムは訴えているのだと思います。

 果たして、それが遠回りなのか、あるいは先送りなのか。2050年のカーボンニュートラルを掲げている以上、化石燃料の電源に依存した構造を変革せずに日本のカーボンニュートラルが進むとは考えられません。先日、開催されたCOP 27の議論を見て分かる通り、先進国と途上国、あるいは一国の利害を飛び越えて地球の環境をどう守るかが問われ続けます。極端な物言いですが、もともと経済合理性に合わない無理筋のゴールに向かって挑んでいるのがカーボンニュートラルです。

電力のカーボンニュートラルは絵に描いた餅か

 再エネの導入で供給構造に変化が生まれたという指摘も不思議です。再エネの普及が進めば、火力も含めて電源構成の維持に大きな変化と課題が生まれるのは電力の専門家なら当初から予想できるはずです。火力発電や休廃止、老朽化などは突然、現れることではありません。再エネの普及に合わせて電源構成を設計し直すのは当然で、グリーン成長戦略でも反映されているはずです。もし反映されていないのなら、最初から絵に描いた餅といわれてしまいます。

 先日、電力各社によるカルテルが公正取引委員会に摘発されました。その事案はまさに電力小売りの自由化、原発休止などの「Enelog」コラムで指摘している状況が引き金となっています。

 苦境に追い込まれたから、ルールを変える。この発想に固執しているかぎり、日本のカーボンニュートラルは実現しないでしょう。サッカーのワールドカップに例えれば、日本代表がどんなに活躍しても自らゴールポストをどんどん遠ざけていたら、サッカーボールがネットを揺るがすことはないのですから。

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