スペシャルオリンピックス日本冬季大会 名寄ピヤシリで 真髄は「初級」!

 スペシャルオリンピックスをご存知ですか?知的障がいを持つアスリートがさまざまなスポーツに挑み、自らの限界に挑む取り組みです。2024年2月11日、北海道名寄市でスキー・スノーボードなどのアスリートが参加する冬季ナショナルゲームが開催されました。全国から202人のアスリートが集まり、それぞれの力を発揮しました。2008年の山形大会以来、お手伝いしていますが、毎回アスリートが全力で挑む姿に感銘を受け、エネルギーをもらっています。

知的障がいのアスリートが全力で挑む姿

 主催は公益財団法人スペシャルオリンピックス日本。冬季大会は名寄大会で8回目。アルペンスキーとスノーボードは「ピヤシリスキー場」、クロスカントリースキーとスノーシューイングは「なよろ健康の森」でそれぞれ実施されました。北海道では初めての開催で、地元の名寄市はもちろん、北海道各地、大会を支援するスポンサー企業などのボランティアのみなさんが参加し、大会を支えてくれました。

家族、ボランティアのみなさんが支えます

 お手伝いしたのはアルペンスキー。競技は「上級」「中級」「初級」「グライド」などのクラスに分かれています。トレーニングを通じてアスリートの技量と体力に合わせて参加するクラスを決めており、大会では予選の結果を基にさらに細分化して同じ級の中でもいくつのグループを設定します。

 スペシャルオリンピックスの最大の意義はアスリートが日頃、重ねたトレニーグの結果を全力で発揮してもらう場を提供することです。金・銀・銅のメダルは大きな目標ですが、全力を出し切ってその結果をバネに次の高みをめざすことです。

旗門に挑む緊張感が伝わってきます

 スキーの技量、スピード感など総合的にみれば上級の滑走は見応えがあります。大回転仕様にセットした旗門に飛び込む迫力、雪とスキーを馴染ませながら切るターンなどは、私のレベルをはるかに超えます。中級のアスリートは、ボーゲンを駆使しながら旗門をターンするのがほとんどでした。会場となったピヤシリスキー場のポールバーンが結構、急斜面だったため、転倒をせずにターンをするにはやはりボーゲンが必要でした。スキーは自然相手です。滑走する斜面に合わせてスキーを使いこなすのがアルペン の醍醐味です。

名寄市の道の駅でも応援のポスター

 といっても、スペシャルオリンピックスのアルペンスキーの真髄は、上級や中級よりも初級やグライドにあると個人的に考えています。初級の旗門は、上級や中級に比べて少なく、斜面も緩やかです。多くのスキーヤーにとって物足りないと感じるでしょう。

初級は一見、容易に見えますが

 しかし、初級やグランドに参加するアスリートにとっては、自らを鼓舞して一つ一つ旗門をしっかり見極め、ターンを繰り返しゴールをめざす集中力が求められます。

 アルペンスキーのスタートラインに立つとわかりますが、誰でもとても緊張します。目の前の斜面に赤と青の旗門が数え切れないほど待ち構え、「さあ、早く滑ってこい」と呼びかけてきます。赤、青の順にターンすれば良いとわかっていても、スタートを切った瞬間から頭の中は真っ白。緊張感で赤も青も同じ景色に溶け込み、「右、左、どっちだ」と迷っていまします。それは上級、中級、初級いずれも同じです。

競技のバーンは結構、急斜面

 初級のコースは一見、容易に映ります。でも、アスリートにとっては難関そのもの。スタートラインに立った瞬間から緊張する姿に応援する家族やコーチも心拍数は高まり、旗門を1本1本ターンするたびに応援する声が高まります。あと1本越えれば、もう目の前はゴールという場所で転んだり、旗門を見逃したりするアスリートもいます。ゴール寸前まできっちりできたのに勿体ないと思う半面、ここまでよく滑ってきたという努力と挑戦に知らない間に興奮し、感動している自分に気づきます。競技の中でもっとも応援の声や叫びが高いのは初級とグラインドでした。

スキーの醍醐味を感じてください

 ワールドカップのアルペーンスキーを見慣れていると、物足りないと感じると思いますか。そんなことはありません。スキーヤーが全力でプレーし、ゴールしようという気持ちの高ぶりを間近にみれば、「スキー競技の醍醐味はここにある」と感じるはずです。4年後、全国のどこかでナショナルゲームが開催されます。競技に関わらず、挑戦するアスリートは素晴らしい。ぜひ、機会をつくって観戦してください。

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