COP15「30BY30」遥か彼方の環境論議は防衛とダブってしまう
国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)がカナダ・モントリオールで開催しました。資源開発や農作地の開拓などで自然を破壊し、地球上の生物が絶滅するのを防ぐための施策を議論しています。
陸域、海域の30%を保全
最大の論点は「30BY30(サーティー・バイ・サーティー)」。陸域と海域の30%以上を保護区や国立公園などとして保全する考えを表現するフレーズです。気候変動に乱開発が止まらず絶滅危惧種が増える一方の地球環境を考えると、とても反対する気持ちにはなりません。
ただ、陸域と海域をともに30%以上も保護地域に設定するのはとても困難な目標です。しかも、これほど重要なテーマが日本でどれだけ理解し、議論してきたのか疑問です。西村環境相が意欲的なスピーチを披露していましいたが、突然浮上して増税案まで固まった防衛力強化の論議と二重写しにみえてしまいます。
COP10の愛知目標は未達成
30BY30は自民党の防衛論議ほど突然、浮上したわけではありません。2010年、愛知県で開催したCOP10では 生物多様性を維持するために保護地域を「陸域の17%、海域の10%」とするなど20項目の目標が設定されています。EUが積極的な目業を掲げるのに対し、発展途上国は自国の開発状況を踏まえて対抗。「2020年までに生態系が強靱で基礎的なサービスを提供できるよう、生物多様性の損失を止めるために、実効的かつ緊急の行動を起こす」と明記して「愛知目標」として採択された経緯があります。
このため、愛知目標は2020年までに達成すべき目標とされていました。生物多様性の論議で歴史的大転換と評価されましたが、それは文字通り難問。
やはりというか残念というか、愛知目標の達成度には厳しい評価が下されています。完全に達成されたものはゼロ。一部達成が六項目という厳しい評価がくだされています。その愛知目標が掲げた「陸域17%、海域10%の保全」が未達成だったのですから、30BY30ははるかに遠いゴールです。しかも、COP15は愛知目標を引き継ぐため、2030年までに達成する目標を検討しています。
G7で約束済み
全然知りませんでしたが、2021年6月のG7サミットで、G7は自国での30by30を約束しています。こちらも初耳でしたが、環境省は2022年4月、「30by30ロードマップ」を公表しています。このロードマップでは、国立公園など保護地域の拡張にならんで、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域として2023年には企業の森や里地里山のような土地を「自然共生サイト)として100地域以上を認める考えです。
環境省の「生物多様性に係る主な動きについて (COP15、30by30、国家戦略など)」 https://www.env.go.jp/council/content/i_02/000070204.pdf
環境省のロードマップに異論はありません。ただ、地域の保全に成功するためには多くの関係者が参加して、できるだけ同じ問題意識を共有し、実践に移行するしかありません。
利害関係者が多いだけに、せっかくの目標が棚ざらしになってしまうかもしれません。国民の多くが論議に加わり、目標に向かう土壌を整えるのが先決です。
実行するなら、もっと国民の合意形成に努力を
COP15で合意したのだから、実行しましょう。これは通りません。日本には良い例があります。京都で開催したCOP3を思い出してください。歴史的な成果である京都議定書を仕上げたにもかかわらず、政策の実効性をみれば日本は他の国から取り残されています。
排出権取引をみてください。1997年12月に決定した京都議定書に盛り込まれた京都メカニズムの一つですが、日本でスタートするのは29年後の2026年ごろです。世界ではすでに29カ国が実施しており、さらに増えていきます。
愛知目標は未達でした。だから、30BY30も未達だなんて!?カナダ・モントリオールで京都の二の舞を演じることはありません。