経済学がおもしろい

ネットを駆け巡る「ひろゆき」「ホリエモン」を超える経済学者の誕生を期待したい

 なぜ日本の経済学者はもっと発信しないのか。今こそ、貴重な見識と洞察を発揮する時なのにとても不思議です。

今こそ、経済学者が活躍する時

 2026年、1980年代は「Japan as NO.1」と呼ばれた日本がインドに抜かれて世界第4位の経済に転落します。しかも、トランプ大統領の復権で自由貿易の枠組みはガタガタ。ロシア、中国の領土拡大の勢いは世界平和を足元から揺るがしています。

 日本は手をこまねいしているわけではありません。世界経済の構造変化に危機感を抱き、なんとか停滞から成長へ転じる政策の創案に努力している最中です。奇跡と評された高度経済成長を果たした日本がどうしてここまで転落するのか。経済学の歴史からみても刮目すべき”事件”であり、その渦中に身を置き肌で感じてきた日本の経済学者だからこそ、求められる「処方箋」を議論し、提示することを期待されています。

話題になるのはマルクス論の斎藤准教授ぐらい

 ところが、この5年間を振り返っても、経済学者は目の前の事実を解説するばかりで、大胆な議論を展開することはありません。最も注目を浴びた経済学者といえば、「人新世の『資本論』」(集英社新書)が大ヒットした大阪市立大の斎藤幸平准教授(現東京大准教授)ぐらい。マルクスの資本論の視点から資本主義経済の問題点を指摘し、メディアにも登場し続けています。どうして本筋である資本主義経済を専門とする経済学者が日本経済の改革論をぶちかまさないのか不思議です。

 その代わりと言うべきなのか、日本経済の問題指摘で活躍するのが西村ひろゆき氏と堀江貴文氏。西村氏はネット掲示板の主宰者とし知られ、現在はスイスに在住する実業家。堀江氏は「ホリエモン」と呼ばれ、ライブドア創業、フジテレビ買収などで時代のヒーローとなり、証券法違反で刑に服した後も宇宙ロケット事業など話題を振りまいています。

 2人に共通するのはネットメディア、SNSで常に発言が注目されていることです。

 例えば、プレジデントオンライン12月13日付「だから高市政権は来年大コケする…ひろゆきが見抜いた「高い支持率に隠された短命で終わる政権の典型的特徴」。西村ひろゆき氏は高市早苗首相の積極財政政策について「ロジックが無理筋」とバッサリと切り捨てます。その魅力はわかりやすさ。記事の始まりが素晴らしい。「結論から言いましょう。高市政権は構造的に長持ちしません」。lineやXなどSNSの短い文章でやり取りする若い世代にとって、とてもわかりやすく単刀直入に結論を提示して、長々しい説明は後回しに。

 堀江氏も「たった一言」が売り。本来は饒舌に語るタイプであるにもかかわらず、SNS上では簡潔な一言を心がけ、政治、経済など幅広い話題について自らの評価を発信して若い世代の気持ちを鷲掴みしています。

ネットは簡潔明瞭な一言が売り

 2人ともネットの世界を熟知しています。複雑でわかりにく経済学を振り回しても読まれるわけがない。心に刺さるフレーズを前面に出して結論を提示することが、あっという間に拡散するネットメディアの真髄であることを知っているのです。

 しかし、経済は残念ながら、複雑でわかりにくく、しかも明快な結論を得られません。経済学が物理学などの科学ではなく社会科学の範疇に入るのも、予想もできない不確実な要因によって結論が変わる可能性があるからです。経済学者のみなさんがどうしても口下手になってしまう気持ちはわかりますが、日本経済を立ち直す処方箋を作成するためには多くの議論が必須です。

 ネットメディア、SNSでもっともっと饒舌に発信してください。時にはネット上で大論争を引き起こしてほしい。それが経済学を身近な存在となり、日本経済の活力を引き出すのです。「ひろゆき」「ホリエモン」を上回る経済学者の登場を期待しています。

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