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27年前の軍事演習が蘇る2 見えない敵を追う多国籍軍  陸はトラック、空はパラシュート 

「もう何時間、揺られ続けているのだろうか」。ぼんやりした頭の中で繰り返し反芻するように考え続けます。兵士を輸送するトラックの荷台に一緒に乗り込み、荷台の端に設置された長椅子に座ってはいます。

 目に映る風景はオーストラリアの赤茶けた広大な大地。オーストラリアの観光パンフレットにも掲載される高さ数メートルの巨大な蟻塚が砂漠のあちこちに見えるのですが、その数が半端ない。蟻が大地を食っているかのように、高くて細長い円錐形の蟻塚が次々と並んでいます。夢見心地のなかで「蟻の生命力は半端ない」と眺めていたのだけを覚えています。

砂漠を突っ走って演習の目的地へ

 トラックはひたすら赤茶けた砂漠を走り続けます。出発時に軍事演習の内容と目的地は簡単に知らされているのですが、かなり遠い向こうにあることだけはわかります。走行距離はわかりません。たとえ目的地までの距離がわかったとしても、オーストラリアの広大な砂漠を突き抜けるのです。どのくらい時間がかかるか想像できるわけがない。

陸の移動はトラックに荷台でひたすら座り続け、蟻塚を眺める

 私ができることはトラックの荷台に座り続けることだけ。時折、カメラで写真を撮影するのですが、風景はずぅーと同じです。しかも、砂漠を突っ走るトラックの揺れが繰り返しますが半端ない。左右に大きく振られ荷台から振り落とされそうになるのは1度や2度ではないです。

 少しは緊張しなきゃと思い直してカメラを構えて撮影しようと思っても焦点が定まりません。何もできないからといって、揺れがすごいので居眠りはとても無理。不思議なことに「危ない!」と思っても、トラックの荷台から落ちない。「いざとなったら、命を守ろうとする防衛本能はすごいものだ」と改めて人間のチカラに感動します。

 参加しているのは軍事演習の取材です。万が一の可能性はありますが、怪我する可能性すらほんとんどないはずです(これは個人の勝手な思い込みと後でわかります)。疑似とはいえ、異常な緊張状態を体感した瞬間はその後何度もありました。実際の戦闘なら、トラックの荷台に乗っている間、あるいは到着した瞬間に闘いが始まるかもしれません。長時間、極度の緊張感に耐えてトラックの荷台に座りながら、軍事演習に臨む兵士の疲労度は想像もできません。

 早朝から走り続けたトラックはお昼前に到着しました。部隊の広報担当者から「これから空挺部隊の演習を見学します」との説明がありました。空挺部隊はインドネシア軍です。軍事演習「カンガルー95」のミッションの一つはオーストラリアとインドネシア両国の軍隊が連携して作戦を遂行することです。

 

インドネシアの空挺部隊が落下傘で降下

 メディアの一行はトラックを降りた後、丸い水平線が見えるのではと思うほど広大な大地を歩き続けます。「もうすぐインドネシアの空挺部隊がパラシュートで降下してきます」。オーストラリア軍の広報官は告げます。空を見上げますが、航空機の姿は見えず、エンジン音も聞こえません。ひたすら待ち続けます。1時間は過ぎたと思います。遠くから軍用機が向かってくるのが見え、最初は豆粒に見えた空挺部隊が次第にパラシュートが広がって白い泡状に散らばり、落下してくるのがわかります。子供の頃に見た映画「史上最大の作戦」で落下傘が降下するシーンがなぜか思い出されました。

着地直後に落下傘をたたみ、陸上戦の準備へ

 

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