ロケ地巡礼 ハワイでキングコングに出会う 映画をリアルに体感する遊び心 2022.10.18 背丈の2倍以上もある頭蓋骨。きっとキングコングの頭。すぐそこにはトリケラトプスの頭も。遥かな古代にキングコングと恐竜が闘った跡が突然、目の前に現れたかのようです。凄まじい闘いの様子が目に浮かびます。背骨など体中の多くの骨が化石となって目の散乱しています。 キングコングの頭蓋骨が目の前に ここはハワイ島のクアロア牧場。世界的な人気を博した映画が撮影されたロケ地として知られており、世界中から観光客が集まってきます。牧場内に散逸する化石はもちろん、人工の模造品。この牧場を舞台に制作された映画の足跡のようなものです。ロケ地として撮影された映画は「ジュラシック・ワールド」「ジュラシック・パーク」、「キングコング」など日本でも大ヒットした作品、さらに米国で人気を集めた「50回目のファーストキス」など。超大作からコメディ、ドキュメントなどさまざまです。 トリケラトプスの周りには体の骨が散乱 牧場の敷地は東京ドーム450個分、約500万坪。あまりに広すぎて想像できません。高層ビルが立ち並ぶホノルルから路線バスに乗って1時間半、キングコングの映画で登場した山や崖が次第に迫ってくる様は、まるでコンピューターグラフィクで描いた風景そのもの。小さい頃から恐竜とキングコングが好きですから、牧場目の前にある停留所に着く頃は自然に笑いが出ます。 映画のロケ地を体感する驚き 映画のロケ地を回るコースはいくつもあります。大型バスに乗ってガイドさんの案内を聞きながら1時間半で終えるコースから、四輪バギーや馬に乗って自然そのものを体感するコースなど。四輪バギーに乗って駆け回るのも良いかなと考えたのですが、早くから予約が一杯で、結局バスツアーを選びました。四輪バギーのツアーがバスを追い越す時、彼らの楽しそうなこと。う〜ん、残念でした。 ハワイの歴史・文化も紹介 ガイドさんは若いですが、場数を踏んだベテラン。英語の説明は外国人にも理解できるよう簡単な英単語を繋ぎ、内容も簡潔。かゆい所に手が届く。この例えにぴったりと思えるほど。ロケ地訪問がツアーの主眼とはいえ一応クアロア牧場という名前ですから、ツアーの最初は牧場で飼育する家畜を見学し、いかに自然保護に努めているかを強調します。 「映画のロケ地を貸すだけで稼いでいるわけではないよ、牧場の役割を果たし、ハワイの自然を大事にしていますよ」というメッセージのようでした。 観光客の関心は写真撮影 もっとも、バスの乗客の関心はロケ地での写真撮影がほとんど。 そこはガイドさんも十分承知。バスが写真ポイントに近づいたら、映画やロケ地の説明はちょっとだけ。撮影時間をたっぷり手配しています。お客さんも心得ており、撮影ポイントでは順番待ちが常識。時間を無駄にしません。 映画撮影・制作の現場は想像するしかありませんが、ガイドさんの説明を参考に目の前のロケ地でどう撮影したのだろうと夢想する。自ら映画の世界に没入し、主人公とそばに立っている擬似体験を楽しみます。これもツアー演出のひとつ?エンターテインメントだと気づきました。バスの乗客が撮影した写真はツアー終了後、インスタグラムやツイッターなどSNSで世界を飛び回っているはずです。 ロケ地体験とテーマパークは大違い フィルム・ツーリズムはやはりおもしろい。ロサンゼルスのユニバーサル・スタジオで映画の擬似体験が楽しめますが、スタジオのセットと本物の自然では大違い。目の前にある存在感が比べようもありません。 大ヒットした映画を撮影したロケ地を訪ね、映画の感動を新たにするとともに、自身も映画の世界に入り込み、主人公が演じた擬似体験を楽しみます。日本では実写映画よりもアニメ作品のモデルになった現地を訪ね歩く「聖地巡礼」が人気かもしれません。 海外の事例で最も成功したのがニュージーランド。同国出身のピーター・ジャクソンが監督した『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』三部作は同国の北島、南島で撮影され、コロナ禍前までは公開から10年以上過ぎても映画のロケ地巡りが絶えないニュージーランドで最も人気の高いツアーの一つでした。 過去に南島の同じ地域を回ったことがあるので、多くの人々を魅了する自然の凄さは肯けます。「映画を通してわが国の大自然の魅力をふんだんに訴えることができた。フィルム・ツーリズムは長期に渡って観光客を集める力を持っている」とニュージラーンドの観光大臣が自画自賛していたのを思い出します。 アニメ以外でロケ地巡礼を創造したい なにしろロケ地巡りのコースがすごい。南島のクライストチャーチを出発し、雄大な自然に包まれる国立公園を巡り、クイーンズタウンに戻るツアーです。欧州のアルプス山脈、北欧のフィヨルドなどをコンパクトにギュッと圧縮したような自然を目の当たりにすることができます。ホテルに戻れば、美味しいシーフードに世界的に人気を集めるワインが待っています。 日本では北海道のロケ地訪問が根強い人気です。高倉健さんの主演映画、あるいはテレビ「北の国から」の撮影現場は大事に維持管理されています。「駅(ステーション)」の舞台となった増毛は、映画のイメージ通りの建物があちこちにに残っています。ただ、映画の舞台となった留萌ー増毛のJRは廃線、駅そのものが消えてしまいました。 お約束通り、ジュラシック・ワールドの人気者があちこちに ロケ地巡礼の賞味期限はいつまで続くのでしょうか。ハワイのクアロア牧場は映画が基幹産業の米国にあるだけに、次の作品、次の作品と新規の観光客が続きます。 日本はどうでしょう?アニメは世界的に高い人気を集めていますが、アニメ以外は?。「ここがロケ地でした」の案内掲示板で終わっている観光地もあります。 コロナ禍の終わりが見え、海外からの観光客が戻ってきました。日本もアニメ以外の映画で新たなロケ地巡礼を創造したいです。 Net-ZERO economy 関連記事一覧 「新しい大熊町」が生まれる 福島第1原発から最も遠... 2022.10.31 マイナーカード、人口減・・課題は見透せても答を出... 2023.07.27 日本が「大国」か「小国」に悩む前に、目の前の変革に... 2023.08.28 JR宗谷線名寄→稚内・至福の4時間 (下)無人駅、稚内ラ... 2024.02.10 佇む日本が世界経済の荒波をどう泳ぐ 喘ぐ欧州と中国... 2022.05.05