福島第一原発事故の調査報告書

原発再稼働があぶり出す「40年超なにも変わらない」体質、原発事故の教訓はどこに

運転開始から40年を超えた関西電力美浜原子力発電所3号機と高浜1・2号機の再稼働が決定しました。東日本大震災の東京電力福島第一原発事故で「原発の運転は原則40年」となりましたが、結局40年を超える原発再稼働の道筋が決められました。

政府が掲げる脱炭素戦略を実現するためには原発再稼働を軌道に乗せるしかない。また地域経済、電力会社の経営状況などを考慮すれば40年超の原発再稼働は避けられないことはわかっていました。とはいえ、安全性への信頼回復、原発周辺の住民はじめ国民への説明などから改めて考え直しても、国の原発政策は福島第一原発の事故からどんなことを学んだのかという疑問を改めて再認識せざるを得ません。

もう40年近く前ですが金沢市をベースに北陸の原発取材に精力を注いでいました。福井県美浜、高浜両原発には何度も訪ねました。福島県の浜通り同様、農水産業以外に雇用・地域経済を支える柱を抱えていません。若者は仕事もないので地元を去っていきます。

原発建設計画に対し不安はあります。しかし、電源三法による巨額交付金が支払われるうえ、原発建設・運転に伴い新たに生まれる雇用など地域への波及効果は地域独自の頑張りでは及ばない規模です。建設反対の声が高まっても、地域の過疎化や衰退を抑えるためには、原発立地を受け入れるしかないのが実情でした。

国は今回の再稼働を福井県はじめ立地地域に納得してもらうために最大50億円の交付金を支払うそうです。これまで100億円以上を払ってきたそうですから、その5割程度を再度払うわけです。すごい金額です。一方、原発そのものの安全性については原子力規制委員会を中心に耐震性やテロ対策などの新基準が設けられ、格納容器などを守る建屋などのハードウエアは数値などで目で見える形で議論ができているので、ハードウエアはクリア済みというわけなんでしょう。

再稼働の条件は整ったのか、東電の信頼は?

今回の再稼働決定で最も注視しなければいけないのは、原発を安全に運転する電力会社の資質、国の政策が本当に福島第一原発の反省をもとに変わったのかという点です。

私見ですが、東日本大震災から10年かけて議論されてきたにもかかわらず、今回の決定で何も変わっていないことがあぶり出されました。福島第一原発で明らかになったことは後手に回った津波対策などが挙げられますが、なぜ東電はすでに老朽化してきた福島原発を安全第一に運転対策を迅速に具体化できなかったのか。

福島第一原発は1号機の運転開始が1971年ですから2011年の時点ですでに40年を迎えていました。原発の寿命は30年という見方が大勢を占めており、私が電力などエネルギー産業を担当していた1990年ごろにはすでに福島第一原発の耐久性問題や廃炉などいわゆる「その後」をどうするかについて本格議論されていました。

しかし、電力会社の収益への貢献力が大きいうえ、プルサーマルや六ヶ所村の再処理工場など原発からの廃棄物処理対策が遅々として進まず、原発の延命以外に道はないという判断しかありませんでした。この間にも津波などの対地震の改良工事も現場から提案されていたわけですが、電力会社は決定しません。結局は先送りのツケが電力会社の事実上の経営破綻を招くことになりました。

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