
止まらない高校の統廃合「地域の文化が消えていく」と心配の声が聞こえる
毎年、訪れる北海道名寄市のピヤシリスキー場は「雪質日本一」を誇るだけあって、オーストラリアを中心に欧米やアジアからスキーヤー、スノーボーダーが集まっています。
高校の「スキー遠足」と隣同士に
でも、ニセコなどと違い、ゲレンデの主役は地元のスキーヤーやボーダー。よちよち歩きの頃から北海道でスキーを滑っているだけに、地元密着のスキー場の存在にホッとします。しかも、名寄市はじめ周辺の地域から家族連れや中高生らが「さすが!」と拍手するレベルで滑っています。とても、うれしい。
先日、ある高校の「スキー遠足」とレストランで知り合う機会がありました。バスで1時間程度のかかる町から先生が引率する生徒30人程度のグループです。たまたまフロアに落ちていたスキーグローブを拾ったので「誰の〜?」と声をかけたら、すぐに先生と生徒が駆けつけ「私のです〜」と笑いながらペコリと頭を下げていました。ゲレンデでも、みんな仲良く楽しむ姿を見て、小学生の頃に経験したスキー授業の記憶が蘇り、地元密着のスキー場は外気がマイナス15度でも「なんか暖かいなあ」と勝手にほっこりしていました。
「高校の先生は地域の文化を背負う」
ところが、思わず背筋が寒くなる会話が聞こえてきました。聞き耳を立てていたわけではないのですが隣のテーブルから「高校が無くなると、地域の文化が消えてしまうからなあ」と呟く会話が聞こえてきたのです。
教職員OBのスキー客のようです。道内各地で進む公立学校の統廃合の深刻さを語りながら、「高校の先生は専門的な知識や経験を持っており、地域の文化人だからねえ。高校が無くなると、生徒だけでなく先生も消え、地域の文化を担う人材がいなくなってしまう」と心配しているのです。
確かに地域にとって高校の存在感は大きいと思います。JRの駅や路線バスの停留所に「〇〇高校」を見かけますが、日中はガラガラでも、朝や夕方など高校の通学時間帯はJRもバスも席が埋まるほど混み合います。地域の交通機関を支える主役は、ここでも高校生です。
スキー場で隣同士となった高校の先生・生徒のグループは戦後すぐに開校した70年を超える歴史を持つ公立高校ですが、現在、は全校生徒が30人ちょっと。オホーツクに面した水産業や農業は豊かで地域経済を支えていますが、北海道は全国でトップクラスのスピードで人口減少が加速。道内各地の高校は生徒数の減少に直面しています。
高校は30年間で2割減
高校の統廃合は北海道だけではありません。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2019年にまとめた調査によると、1990年に1つの公立高校が存在していた市町村は1197ありましたが、2019年には245の市町村で公立高校が消滅。約30年間で2割も消滅した計算です。
高校が消滅した市町村は当然、15歳〜17歳の人口層が減少傾向となります。高校がある市町村へ転出するためですが、若い世代の転出人口減と共に、市町村の少子高齢化を一段と加速する引き金となります。高校の存続は市町村にとって人口流出を抑え、むしろ留め置く役割を果たすわけです。
そんな地域の事情を知って、初めて名寄駅の壁に掲げられた高校のポスターの意味が理解できました。就学に関した補助金制度などが説明されており、地元の名寄高校は「自分らしい青春を駆け抜けろ」、近接する美深町の美深高校は「美しき自然と共に、深き学びへ」をキャッチフレーズに入学を呼びかけています。
人口減対策は移住、産業振興だけではない
人口減対策といえば、これまで移住促進や地産地消など産業振興に注目してしまい、高校の存続が地域を支える大黒柱であることをすっかり見逃していました。スキー場で隣同士になった高校生の笑い声が街から消えてしまったら、どうなるのか。想像するだけでも寂しい街になりそうです。自らの不明を恥じ、思い知りました。

