ジャニーズの不思議が尽きない 保護者の声が聞こえない 加害者が被害者の補償を審査・・・
ジャニーズ事務所を巡る不祥事を眺めると、素朴な疑問が沸々と湧いてきます。創業者のジャニー喜多川氏による未成年者に対する性被害問題はテレビなどの番組制作、広告スポンサー企業のタレント起用方針の変更など大きな社会問題になって広がっており、テレビ、新聞、ネットで連日伝えられています。大量の情報量が目の前を通り過ぎていくのですが、それに伴い素朴な疑問がどんどん増えていきます。
素朴な疑問が湧き続けます
まず、性被害を受けた少年らの保護者の声が全然、聞こえてきません。ジャニーズ事務所は少年らの教育など如何なる名目であろうと、未成年者の代わりに親など保護者と何らかの契約を交わしているはずです。万が一の事態が発生した場合、責任の所在を明らかにしなければいけないからです。
ネットで検索すると、ジャニーズ・ジュニアの活動に関する説明を見つけました。それによると、保護者同伴の説明会を開き、「タレント活動に関する初回の合意書の締結に際しては、必ず保護者同伴で説明会を実施し、本人及び保護者に署名いただいております。2回目以降の説明会は本人のみで実施していますが、合意書面は持ち帰り、本人及び保護者に署名の上で提出いただいております」と明記しています。至極当たり前のことですが、活動については保護者の承認が不可欠であることを事務所も保護者も理解しているわけです。
保護者はどうして沈黙
被害を受けた当時、元ジャニーズ事務所タレントたちは苦しい思いを抱え込んだままで、家族にも言えなかったとの証言もあります。しかし、性被害が明確になった時点で、親なり保護者なりからジャニーズ事務所へ何かしらのアクションがあって当然です。未成年者への性被害は犯罪です。合意とか金銭的な支払いがあったという理由は通りません。力関係から見て、未成年者との合意が正当かどうかは議論にすら値しませんし、金銭的な支払いがあったなら、それは買春と呼びます。
にもかかわらず、連日のように開催される記者会見では、被害者が中心になって語っているシーンばかりです。すべてのメディアを視聴、チェックしているわけではありませんので見逃しているかもしれませんが、保護者から自分の息子や親族が被害を受けたことに対する怒りなり抗議の発言があっても何にもおかしなことではありません。メディアがもっと積極的に取材し、取り上げる姿勢が必要ではないでしょうか。
性被害に対する補償問題も不思議です。ジョニーズ事務所は被害補償について、新たに設置する被害者救済委員会で補償金額を判断すると表明しています。この委員会は元裁判官の経歴を持つ弁護士3人で構成され、被害者からの申告内容や資料を検討して補償金額を判断するそうです。
同事務所は「被害者の皆様に公平かつ適正な金銭補償を実施するため、被害者救済委員会に、被害者の皆様からの申告内容を検討して補償金額を判断することを一任いたします」としています。 被害者救済委員会の運営・判断は、独立性を維持しているので、補償の決定内容には事務所側の恣意的な思惑が反映されないと言いたいようです。
加害者が任命した委員会が被害補償を査定
しかし、加害者自ら被害査定の委員会を設けて、被害者に対し補償することにどのくらいの合理性があるのでしょうか。刑事罰にならない案件を民事訴訟で損害賠償を争うことはありますが、争う場は日本の法律に従い裁判所で討議され、決定されます。たとえ被害者救済委員会のメンバーが元裁判官であったとしても、今は裁判官の資格はないのです。命に関わる病気にかかった時、「俺は昔医者だったから、手術できる」と言われ、元医者に治療を受ける人はいないでしょう。しかも、選任と任命は加害者です。どう考えると、被害補償の決定内容に正当性を与えることができるのか。どうすれば辻褄が合うのか。この知恵の輪は解けそうもありません。白黒つけずに示談で済まそうというわけですか。
まだあります。ジャニーズ事務所は今後1年間、広告や番組などによる出演料はタレント本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬を受け取らないと発表しました。 事務所の責任を明確に示したつもりかもしれませんが、芸能事務所の業務は契約した所属タレントの仕事を見つけてくることです。
現状は大手広告主がジャニーズとの関係解消を相次いで表明しており、広告や番組などの出演機会そのものが減少する見通しです。広告出演自体が無くなったら、出演料を全てをタレント本人に支払うと言っても、その本人の手元には何も残りません。むしろ、事務所とタレントの雇用契約からみて、事務所が本来業務を履行しないと疑われることも考えられます。もっとも、考え過ぎ、杞憂なんでしょうね。他の芸能プロダクションを見ても、事務所とタレントの力関係は明白です。
素朴な質問を持つなんてトンチンカン?
素朴な疑問は尽きません。あるいは疑問を持つのは、芸能界やテレビの制作現場を知らないトンチンカンな人間だからなのでしょうか。もし、そうならテレビの常識と社会の常識の間にだいぶ距離がありそうです。それが芸能界という声が聞こえますが、今回の性被害はもうそんな常識は通らないことを教えています。