佇む日本が世界経済の荒波をどう泳ぐ 喘ぐ欧州と中国 求められる勇気と発想力
石油などエネルギー高騰は高値圏に入っており、一段と進行するとはみていません。むしろ農産物の影響が大きいと予想します。ロシアやベラルーシからの農産物輸出が急減するため、価格は高止まりする。小麦や食料油の輸出大国であるウクライナの戦禍を加えて考えれば、世界の農産物市況は高騰が続くリスクは大きいと判断せざるを得ません。
米国は石油、ガス、農産物の資源大国です。ガソリンや食品の高騰などがインフレ要因として経済の足かせになるとはいえ、総じてエネルギー価格の上昇はプラス材料ですから経済成長は順調とブラックロックは予想します。
中国は今年に入って予想通りの経済成長が達成できないなか、政府のテコ入れ策で持ち直すとみています。ただ、拡大を抑えられないコロナ禍の影響を注視する必要があるとし、株式市場の重し材料は残ると予想します。
それでは日本はどうか。金融緩和が継続され、景気対策も積極的に実行される見通しです。企業業績が悪化するとはみていないようで、株式市場は継続する自社株買いなどを念頭に置けば依然、魅力的だとしています。私見では、石油やLNG(液化天然ガス)、農産物など輸入に頼る一次産品の圧迫要因は侮れません。インフレと経済成長の鈍化の狭間に押し込まれる窮屈な経済成長を体感するのではないかと考えています。
そこで日銀、政府はどういう展望を示し、政策を実行するのでしょうか。何度も求めていますが、岸田首相は日本の経済状況をしっかりと説明する機会を設けたらどうでしょうか。例えば原発再稼働。エネルギー価格の上昇を踏まえて原発再稼働を再び強調し始めていますが、よほどの事態に追い込まれない限り再稼働の拡大は難しいです。
それでは停電を覚悟するのか、という向きもあるかもしれませんが、まだカーボニュートラルの実現が念頭に残っているのなら、これまでのエネルギー消費をどう見直すのかを並行して加速する政策を提示したらどうでしょうか。ガソリン高騰の補填策も大事ですが、短期と中長期の政策を交えて実行しなければ日本のエネルギーの安全保障はなにも変わりません。こんな表現を使いたくないですが、これをきっかけに国民に理解を求めるチャンスです。
日銀や財務省は足踏みしている状況です。激変する現況をどう対応するのか、これまでも説明しているとは思えません。打開するための政策転換を期待できるのでしょうか。
貧困な産業政策を捨て、新しい政策提示を
岸田首相は産業構造の大胆な転換に向けて明確な方向性を示して欲しいです。半導体の再強化、成長力が期待できるユニコーン企業の発掘などと経産省主導の政策が目立ちますが、これまで実現できず手垢ばかりが目立つものばかりです。移民政策も含めて閉塞感から抜け出せない日本の現況を打ち破る勇気を岸田首相自ら先頭を切らなければいけません。こちらももう触れたくないのですが、ふがいないデジタル庁の現況をみれば日本の産業政策の貧困さはすぐにわかるはずです。DX、デジタルをキーワードで日本の産業を変えるというのは掛け声だけだと誰しもが気づいています。
それでは何を提示したら良いのか。政府などと取材していると、こう切り出す人がいます。マスコミは批判ばかりしていればよいのだからと。まず指摘したいのは、政府や自治体などに何人の役人、スタッフがいますか。給料を支払っていますよね。いずれも税金です。どうして新しいアイデアや政策を実行できないのか。その答を教えてください。今回はそれだけではつまらないので、いろいろアイデアを捻り出したいと思います。それは次回を待ってください。