マイナンバーカード、最大の敵は眼前の行政組織 内なるアナログ岩盤が待ち構える
デジタルの旗振り役であるデジタル庁が発表した「日本のデジタル度2021」が参考になります。
詳細は下記のアドレスから。ガラケーやスマホなどのデジタル機器の普及度合いが詳しく説明されていますが、注目すべき点は窓口手続きの時間を職員が体験している点です。
アドレスはhttps://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20211010_digital_degree_02.pdf
車庫証明は93分間の待ち時間
デジタル庁の職員の体験調査によると、3例が紹介されており、転出手続きは21分、転入手続きが30分。最も長いのが車庫証明の申請・受け取りで93分。手続きごとに待ち時間などが明記されています。1時間半の長時間となった車庫証明の場合をみると、書類記入は2分、窓口での待ち時間は6分と短いのですが、残る85分は窓口以外での待ち時間です。いかに行政手続きが滞っているのかがわかります。
だからデジタル化の推進という結論に乗るわけには行きません。国や市町村の行政手続きは、手書きの書類や印鑑などアナログで築き上げられた岩盤です。デジタル機器を導入したからといって、そう簡単に変わるわけがありません。役所の意識調査などをみると、多くの職員はデジタル化で簡素化したいと考えているそうですが、こうした慣行や決済をひとつ一つ確認しては捨て去り、不要になった職務を廃止して組織を改革する作業にどのくらいの期間がかかるのでしょうか。
行政手続きが変わらなければ、民間がそう簡単に変わるわけにいきません。再び持ち出すのもいやですが、あれだけインターネットを使った決済を進める銀行ですら、過去の遺物と思われたフロッピーディスクを利用しているのです。これまで積み上げれた仕事や決済に慣れ親しんだ組織がこの1、2年で変貌するのでしょうか。
現状を病院の窓口でみてください
試しに病院に行ってみてください。マイナンバーカードを使った健康保険証の確認作業がどのくらい行われているのか。窓口の職員さんがどう作業しているのか。
それよりも高齢化が進む病院に通う患者さんの現状をみて、「健康保険証は廃止になって、これからはマイナンバーカードに切り替りますよ」と話したら、どんな顔をするのか想像してみてください。2年後、マイナンバーカードが寂しそうにアナログの泥沼のそばで立っている姿が見えそうです。