サハリン撤退が是か 日本のエネルギー安全保障は豪米を軸に再構築できるか

Îサハリンプロジェクトが再び風前の灯火に戻ってしまいました。ロシアによるウクライナ侵攻に対する制裁として経済的な封じ込めが加速しています。金融面ではSWIFTからロシアを締め出す一方、ロシア経済を支える石油・LNGの輸入を停止する動きが広まっています。

天然ガスの輸入でロシアに依存していたドイツでさえ、ロシアを結ぶパイプライン「ノード・ストリーム2」の稼働を停止する決定を下しました。三井物産、三菱商事が深く関与する「サハリン」プロジェクトでも「サハリン2」からシェルが、「サハリン1」からエクソンがそれぞれ撤退を表明。日本国内では欧米に並ぶ厳しい姿勢を示すためにも日本の商社2社によるサハリン撤退の意見が出ています。

それが是なのか非なのか。エネルギーの安全保障については欧米に比べて極めて貧弱な日本です。欧米と同じ視線で判断するわけにはいきません。自らの国を守るために冷徹な視点を確認してエネルギー安保を考える時です。

サハリン・プロジェクトはまさに酷寒と暴風の歴史

サハリン・プロジェクトはまさに酷寒と暴風を切り抜けて実現にこぎつけた歴史があります。サハリンのすぐ真向かいに位置する稚内市のホームページでプロジェクトの詳細を記載・説明していることからわかるように、樺太(からふと)時代から日本にとっても巨大な資源が目の前に眠っているのがわかっていました。

しかし、冬季は流氷に覆われ、海洋も大荒れが続きます。海洋での開発・採掘技術はじめ仮に採掘できたとしても需要先に輸送する技術と手段が確保できません。1980年代後半にソ連が崩壊してロシアが西側にも資本を開放する政策へ転換したことで、サハリンの資源開発はようやく動き始めます。

日本にとっては地政学的に難しい地域とはいえ、喉から手が出るほど欲しいプロジェクトです。英国のシェル、米国のエクソン・モービルなど世界的な資源開発企業が参加すれば、豊富な資源開発技術と経験、巨大な資金と信用力が期待できます。日本側から石油やLNG(液化天然ガス)の開発、輸入で海外利権を持つ三井物産と三菱商事が参加するのは自然の流れですし、その後ろ盾として日本の産業金融の象徴である当時の日本興業銀行、通産省など政府が控えていました。

1990年代はもう資金が枯渇していたロシアです。サハリン・プロジェクトは貴重な「金のなる木」です。日本は足元を見られませす。日本は石油のほとんどを中東から輸入していましたし、LNGもインドネシア、ブルネイ、マレーシアなどに頼り、ようやくオーストラリアやカタールなど新しい調達先を増やしている時期です。

サハリンは日本の目と鼻の先にあり、石油とLNGなど豊富なエネルギー資源があるのがわかっています。「三井物産、三菱商事が撤退するわけがない」のを承知の上で何度も頓挫しかねない交渉の駆け引きを繰り返し、ようやく2000年代に入って事業化にこぎつけました。

実現はしていませんが、当初からサハリンから北海道へパイプラインを敷設して本州まで運搬するルートを築こうという構想があります。早い段階から構想を聞きつけて記事化も考えましたが、あまりにも稀有壮大なので記事を見送った記憶があります。資源のない日本にとってサハリンは手放すわけにはいかない太い命綱の一つであることがわかあります。

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