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マイナカードを累計換算で公表、総務省なら人口減の日本も人口増に、難題は計算手法を変えれば解決

 「声を失う」って、こんな時に使うのでしょうね。嘘も方便、カエルの面に・・・と限りなく浮かびますが、最後に思いついたのは「霞ヶ関の皆さんはお仕事、ご苦労様」。これしか言葉がないです。政治家の皆さんがもともと正確に国民へ伝える気持ちが最初から無かったのはよく分かっています。総務省の官僚は、なんとか見た目の数字を増やして政治家が望む仮想現実を演出する辻褄合わせを捻り出すしか手が無かったわけですから。

 誰もが声を失う

 誰もが驚き、呆れたはずです。総務省が公表していたマイナンバーカードの交付枚数約8800万枚が虚偽だったのです。公表数字のうち約500万枚は無効となり、すでに廃止されたものでした。総務省はホームページで2023年4月末時点の交付枚数は8786万枚。人口に対する交付率を69・8%と表示していました。

 しかし、実際にはマイナンバーカードを取得したものの、国内外の転居、死亡、有効期限切れなどで廃止されたカードが含まれており、6月末時点で計492万枚もあったことが判明しました。

累計枚数が実態を反映しているわけが無い

 松本剛明総務相は「集計作業を簡単にするため、累計枚数を公表してきた」と説明しましたが、松本総務相は4月の記者会見で申請件数の増加を披露して「ほぼ全ての国民に行き渡らせる水準までは到達した」と胸を張っています。廃止分を残したまま、膨らまし粉を含んだからこそ達成した実態は承知のうえでしょうから、集計作業の簡素化よりまずは目標数字に手が届く結果を優先したのは明らかです。

 国民にとって知りたい重要な数字は何か。説明する必要もないでしょう。発行枚数の正確な数字です。廃止を含んだ累計枚数を知っても、何の役にも立たないことは誰でも分かります。なぜ総務省は後で必ずばれる稚拙な手法を選んだのでしょうか。不思議です。

健康保険証との一体化でもミスが連発

 マイナンバーカードは政府が「デジタル社会のパスポート」と位置づけ、普及を急いできました。健康保険証としての利用登録や公金受け取り用の口座登録を済ませたら、最大2万円分を配る「マイナポイント事業」を展開、すぐ手にできるメリットもばら撒きました。それでも普及が進まないので、健康保険証を2024年秋に廃止する方針を示し、「マイナ保険証」として一本化する方針も進めています。登録関連ではすでに多くのミスが相次いで発覚しているほか、保険証との一体化にも問題が判明。パスワードを付けないカードを発行する案も浮上し、まさに本末転倒を政府が演じる寸劇となってしまっています。

 ちなみに松本総務相は今後、廃止分を除いて実際に国民が保有している枚数を公表すると話しています。総務省によると、6月末時点で累計交付枚数は9306万枚、廃止分を除いた保有枚数は8815万枚と公表しています。

人口減も自然減を無視すれば人口増に

 総務省の手法を使えば、日本が直面する難題は何でも解決できます。例えば人口減。この20年間、出生数は年間110万人から減り続け、2022年は80万人を割り込む水準まで落ち込んでいます。日本の人口は22年10月現在で1億2500万人を切り、12年連続して減り続けています。背景には少子高齢化の加速がありますが、少子化対策がようやく政府で本格化している段階です。巨額の予算化など難題が控え、対策が功を奏するのはまだまだ時間がかかるのは確実です。

 しかし、総務省がマイナンバーカードで採用した累計方式を選べば、人口減が人口増へ転じすることができます。日本の人口の自然減は16年連続です。この自然減の数字を無視して、出生数だけを加えていれば人口動態が描く曲線は大きく変わります。人口も同じ手法で十分です。日本人が生まれ、増え続けていると政府は主張でき、少子化対策もそれなりの内容に抑えることができます。

稚拙な数字の操作は国民を愚弄

 もちろん、こんな稚拙な数字の操作は全く無意味。誰もがわかることですし、国民を愚弄しています。こんな稚拙な数字操作で政策が実行され、自画自賛する政治は一体、誰のために仕事しているのでしょうか。

 日本は太平洋戦争の敗戦を迎える8月15日直前に戦争関連の資料を大量に廃棄、焼却しました。資料を消し去ることは、過去の真実を次代に継承することを廃棄していることです。細かい事実を記録した資料を保管し続けている欧米と全く対極にあります。

 今回のマイナンバーカードの枚数虚偽公表は、同じ発想です。国民に対し正しい情報を提供する姿勢の欠如だけを、そのまま継承しているのです。公文書の数字を操作できるなら、政府は何でもできます。マイナンバーカードの虚偽公表が氷山の一角だとしたら、政府が公表する数字信頼できなくなります。怖しい。

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