
米騒動 → お米券(5000円支給) → 既得権益死守へ食糧法改正 結局は何も変えない農政
「重要 物価高騰対応生活応援給金支給のお知らせ」と題したはがきが届きました。「なんだろう?」と思いながら、文面を読むと「食料品等の物価高騰に対する家計への負担軽減を図るため」1人あたり5000円を支給するとあります。うれしいお知らせと素直に受け止めたかったのですが、「この5000円って、例のおこめ券の代わりか」と気づいたら、目の前のお金に目眩しされてはいけない「重要な農政の欠落」が目に浮かび、うれしさ半分になってしまいました。
5000円支給のはがき
おこめ券は「令和の米騒動」となった米価格の高騰に対応する高市政権の鈴木農水相が掲げた目玉の政策です。ところが、「おこめ券」を配布した自治体は2026年3月時点でわずかで、多くは現金や商品券などで支給されています。前任の石破政権の小泉農水相が実施した政府の備蓄米の放出と同様、米価格高騰にどれほど効果があるのか疑問視する意見がありましたが、高騰を招いた米需給の根幹問題から目を逸らす目的に打ち出した無策としか思っていません。
なにしろ、「令和の米騒動」はおこめ券が行き渡る以前に収束し始めています。全国のスーパーで販売された米価格は落ち着きを取り戻しており、半年ぶりに4000円を切りました。農水省が発表した2025年産の需要見通しは704万トンと7万トン減少するそうです。供給不足から一転、過多になる恐れがあるため、米卸などは損切り覚悟で手持ちの在庫削減に乗り出したのです。
モノの価格は需給の変化に合わせて上下します。経済の大原則です。米価格の高騰を背景に2025年産米の集荷する「概算金」は前年比で3〜7割も上昇していますが、供給が需給を上回ってしまうなら在庫山積みで赤字を垂れ流すよりも早めに販売してしまおうと考えることは当たり前。
おこめ券は無策の農政を証明
経済の大原則は今後も続く。誰でもわかる理屈ですが、鈴木農水相や農水省には理解できないようです。繰り返しになりますが、5000円の現金支給であるおこめ券が機能する以前に米価格が下落に向かう事実は、価格は需給で決定するという大原則の証明です。農政という限定付きで見る限り、おこめ券は失敗でした。裏返せば、おこめ券以外の政策を明示しなかった農政は、米高騰を傍観していたに過ぎません。
この反省を教訓と受け止めれば、米価格の高騰を防ぐ農政は、農水省がこれまで食糧法を盾に進めてきた生産調整を漸次改め、稲作農家に生産計画を任せることです。米価格の安定化を名目にした食糧法ですが、肝心の需給見通しを農水省では不可能なことが「令和の米騒動」が教えています。消費者、稲作農家の悲鳴は全国に響き渡っており、農相、農水省が聞き逃すなんてことないでしょう。
自然相手の稲作ですから計画通りに進まない事態は想定されますが、稲作農家がリスクを背負いながら、需給見通しや米の品種選定をすれば、経済原則に従って米価格は安定し、米の需要喚起につながります。
ところが、農水省は消費者、稲作農家の利益よりも従来の権益死守を優先します。2026年4月に閣議決定された食糧法改正案では、「需要に応じた生産」を明記しました。前の石破政権では米騒動を受けて米増産に舵を切りましたが、「需要に応じた生産」の明記によって改めて農水省が米価格の安定化を名目に増産方針を撤回、需給に合わせて生産調整する方針に戻すのです。
食糧法改正案はゾンビ?
過剰生産による米価格の暴落に防ぐ。日本の主食ですから、暴落によって稲作農家など農業関係者の経営が立ち行かなくなる事態は避けたいですが、結局は戦後から死守してきた農政をそのまま存続することです。まるでゾンビを見る思いです。
「令和の米騒動」は日本の稲作農政がすでに賞味期限切れ、あるいは制度疲労していることを明らかにしました。そこから得た教訓をまるで無かったかのように再び「すごろくの振り出し」に戻す食糧法改正案には呆れるしかありません。

