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再生エネが描く近未来 ベース電源は原発から太陽と風、電気使い放題で仕事と生活は晴耕雨読

 やはり市民講座に参加してよかった。今回も「コロンブスの卵」をいただきました。

コロンブスの卵、いただきました

 講座のテーマは「これからのエネルギーと私たちの生活」。再生可能で環境に優しいエネルギーの現状を理解しながら、生活がどう変わるのか、あるいはどう変えるのかを考える講座です。先生は市内の大学准教授。地域の環境政策にも深く関わっているエネルギー分野の専門家です。とっても優秀です。前回も目からウロコの驚きを教えていただきましたが、今回はコロンブスの卵。

 仕事や日常生活を支えるベース電源に対する発想を180度転換すれば、気候変動、脱炭素、原子力発電など地球環境を巡る目の前の難問が一気に解決するヒントです。毎日の生活に欠かせない発電がどう変えれば、目の前の難問を打開できるか。見えました。

 一応、確認します。企業や日常生活で使用する電気を発電する電源は、石油・ガス・石炭を燃焼する火力発電、太陽光や風力など再生可能エネルギーを利用した発電、そして水力発電、原発が柱です。

 電力事業は気候変動や地球温暖化の主因となるCO2を大量に排出しているため、削減に向けて再生可能エネルギーを利用した発電を急増しています。ただ、太陽や風は天候に左右されるので、発電状況に合わせて火力や水力で需給を調整しているのが実情。本来なら、電力政策を定めるエネルギー基本計画で原子力発電をベース電源としてフル運転したいところですが、それは無理。現在は火力、水力そして太陽光などが需給の過不足を調整する形になります。

今はベース電源は火力、本来は原子力

 福島第一原発事故で原発のほとんどが運転停止に追い込まれ、その後も再稼働した原発はわずか。原発は電力の安定した供給の基盤となるベース電源の役割を離れ、そのベース電源は事実上火力発電が担っています。

 2022年夏に全国で電力不足が心配され、節電が求められました。再稼働が見込めない原発に代わる火力が老朽化などで急停止する可能性が高い一方、太陽光や風力は天候により安定した発電量が確保できない恐れがありました。運良く停電は避けられました。停電寸前の危機的な状況は揚水型水力の緊急稼働で凌ぐことができたからです。

 では、今回のコロンブスの卵は何か。天候に左右され、発電が不安定とされる再生可能エネをベース電源の座に据えるとすべてがうまくいきそうです。太陽光や風力による発電は2020年12月に当時の菅首相が宣言したカーボンニュートラル達成に向けて全国で急速に増えています。建設などで問題が起こっていますが、それは横に置いて議論を進めます。

 意外にも地域によっては再生エネが主電源になっても良いほどの発電量が増え、むしろ需給調整のためにベース電源としての火力発電の運転を維持するために、せっかくCO2を排出せずに発電した再生エネを使用せず、無駄にしているケースが増えているそうです。地域別にみても、東京と関西以外は再生エネルギーを主電源に設定し直して、火力など需要動向を調整する体制する可能性が見えてきました。今後、再生可能エネはもっと発電能力が増えるのが確実です。

再生エネ100%使用を前提にすれば景色は一変

 ようやく仮説の結論です。地域別に再生エネを100%利用すれば、火力や原発に代わる電源体制を再設計できるかもしれません。しかも、再生可能エネルギーは天気次第のこともあるので、発電したら蓄電するよりもどんどん使った方がコストが割安。需要の不足分は火力などで補えば調整でき、燃料費の削減も期待できます。火力や原子力をベース電源にするよりも、太陽光や風力を機軸に据えて電源ポートフォリオを設計し直すと、今目の前の景色が一気に変わります。原発の再稼働問題をゆっくり考える時間も生まれます。

 ただ、変えなければいけないことはあります。

 講座の先生は太陽光や風力をベース電源すれば、節電するよりもどんどん電気を使って消費した方が効率が良いと指摘し、それを100%活かす条件として①蓄電②エネルギーを利用する時間の変更③電力調整力の3点を指摘します。蓄電は技術開発もあってめどが見えています。北海道の稚内市では風力と蓄電設備の充実ですでに市内の需要の7割を再生可能エネルギーで賄っており、近い将来は9割にまで引き上げる計画です。

 課題はエネルギーを利用する時間のピークタイム、それに合わせて電機機器の運転を調整することです。

ちょっと常識を変えてみれば、いけるかも

 最適解は簡単に見つかります。私たちの生活を変えれば良いのです。今までは朝起きて、電車に乗って夕方に帰宅するのが、一つの方程式です。それを太陽光や風力など再生可能エネルギーの発電状況に合わせて変えてみたらどうでしょうか。雨が降って発電量が減りそうなら、今日は出社せずに在宅でリモートワークに。今週は前半、天気に恵まれず発電効率が悪ければ、おやすみ。週後半が効率が良ければ、土日は気にせずに勤務。難しそうですが、コロナ禍で実践済みです。できそうな気がします。

 ちょっと雰囲気を変えて言い換えれば、晴耕雨読の生活です。ただ、それは、なんの手立てを打てない消極的な生活ではなく、自ら設計して生活や仕事を実行できる積極的な生活であり、仕事のマナーです。難問じゃないです。

 全然、夢物語とは思えません。可能性の確率はかなり高く、やってやれないことはないレベルです(笑、でも真剣です)

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