いすゞの古いバス

ティアフォーのロボットドライバーが過疎化を救う 自動運転が日本の地方を変える

 2030年、ロボットドライバーが全国でタクシーやバスを運転している風景があちこちで見ることができるかもしれません。

「三田評論」で開発の行方を語る

 自動運転のOS「Autoware(オートウェア」の開発を主導するティアフォーの最高技術責任者、加藤真平さんが「三田評論1月号」で、インタビューに答える形で開発の行方について語っています。OSの開発はすでに運転席に人がいなくても様々な自動車を走行できるロボットタクシーを走らせるレベルにまで到達しており、実用化に向けてロードマップを描いているそうです。事業採算や法規制面などに対応する必要から、実現できる環境が整うのは2030年ごろと予測します。加藤さんは「ティアフォーのこれからのミッション」を次のように説明します。

 具体的なイメージとしては、地方や海外の公共交通機関がないところでの実用を考えています。(中略)例えば、もし東京で人手不足によってロボットタクシーが必要になった場合、既存のタクシー業界は再編を余儀なくされますが、それは見方を変えれば、その時点でタクシー産業は回っていないと言えます。その時は僕たちが責任を持ってロボットタクシーの事業を担うことにもなる。

 ティアフォーの会社説明は次のアドレスから参照ください。https://tier4.jp/about

地方の公共交通機関の経営は厳しさを増すばかり

 日常生活を支える交通機関の自動運転は、深刻さが増す地方の疲弊に対する処方箋のひとつと期待しています。人口が集まり、路線網が充実する東京など首都圏はまだ安心ですが、過疎化が加速する地方の交通機関は苦境に追い込まれているからです。まだ経営が健全なJR東日本を見てください。2022年7月、利用客2000人未満の地方路線の収支を発表しましたが、対象となる在来線66路線のうち35路線が赤字で、その合計は693億円。

 厳しさが如実に現れているのが北海道。JR北海道は路線で利益を期待できるのは札幌ー新千歳空港ぐらい。残る路線は走っても走っても赤字を生むだけ。札幌駅前のホテル・ショッピングモールなど非鉄道部門で稼ぐにしても、限界があります。JRの相次ぐ廃線北海道の交通の主力はマイカーかバス。バスは通学時間帯は混み合うものの、それ以外の日中はガラガラ。昨年冬、オホーツク地域を回りましたが、バスの乗客は私を含めても1人か2人。

 北海道は全国でも人口減が進んでいる地域です。1997年に570万人でしたが、2040年には420万人を切る予測もあります。150万人が消えたのです。26%も減少します。驚いたのがバスの運転手が不足していること。北海道の最北端の浜頓別で旭川市のバス運転手の募集広告を見た時はショックでした。交通のインフラを支える人材そのものが危うくなっているのでした。

過疎化でも買い物や病院通いの足は必要

 人口減で過疎化が進んだからといって、交通そのものの需要が消えるわけではありません。少子高齢化を反映して、過疎地域に住む住民は病院や買い物でバスやタクシーなどを利用せざるをえません。ティアフォーの加藤さんが予測するロボットタクシーによる自動運転は、地方交通を根本から変える力になるのは確実です。

 自動運転は電気自動車の普及と比例して全国に広がっています。政府も福井県で自動運転の実証実験を始めており、さらに件数を増やす計画です。これに伴い自動運転を事業化する動きも相次いでいます。三菱商事は名古屋市のアイサンテクノロジーと共同出資会社を設立して、自動運転に関するコンサルティングを始める計画を打ち出しました。今後も全国で同様な事業化は増えるはずです。ティアフォーも自動運転のコンサルティングに力を入れる方針です。多くのアイデアと経験が積み重なって、自動運転が当たり前になるインフラが整い始めています。

移住するブームにのってロボットも増える日が

 過疎地域に移住するブームが静かに広がり、テレビや新聞、雑誌で大きく取り上げられています。集落に最近引っ越しきた新住民の中にロボットが一緒に暮らす日はそう遠くないはずです。

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