サハリン撤退が是か 日本のエネルギー安全保障は豪米を軸に再構築できるか

日本はエネルギーでも島国 ドイツとは違う

このパイプライン構想からわかるように、改めて日本がエネルギーの地政学的に「孤立した島国」であることを思い知らされます。石炭や水力などエネルギー源があるとはいえ、エネルギーコストの競争力を考えれば海外に依存せざる得ません。だからこそ、原子力発電を推進する必要がありました。資源開発でなんとか自立の可能性を探ろうと、アラビア石油や国際石油開発(現在のINPEX)などが「日の丸利権」を開発しました。アラビア石油は結局、頓挫。LNGはアジア太平洋の安全保障の観点からもオーストラリアの輸入比率が高まり、オーストラリアも日本を蔑ろにすることはないでしょう。

しかし、中国や韓国などの攻勢にあい、調達量の確保に苦労しているのが現状です。サハリン撤退を表明したシェルやエクソンは、サハリン以外に多数の資源カードを手にしています。日本がエネルギーの安全保障ゲームで切れるカードはほとんどありません。日本の周辺に将来のエネルギー源と期待されるメタンハイドロームが無尽蔵にあるそうですが、実用化はみえていません。

ロシア依存が高いドイツはノード・ストリームの調達ルートを断ち切ったかのように見えます。でも、日本のように孤立しているわけではありません。ドイツは東日本大震災をきっかけに原子力発電を見限っており、発電に費やす資源の比率はおよそ再生可能エネルギーが40%、天然ガスが15%、原子力が12%、石炭・褐炭が28%となっています。ロシア産天然ガスの調達中止で電力コストの上昇が欧州経済を圧迫するは確実です。ただ、ドイツは大陸の中で各国と電力融通する市場の一員です。フランスは原子力発電大国としてドイツに原発由来の電力を売電しています。

まして米国は現在、コストと環境破壊などを理由に稼働が低下していますが、地中から算出するオイルシュールやシェールガスを採掘すれば自国でエネルギーを賄えることができます。なにしろサウジアラビアを抜いて世界最大の石油産出国ですから。

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