34年ぶりの高値が鳴らす警鐘 日本経済、変革のラストチャンス

 2023年の大納会の日経平均株価は3万3464円まで上昇しました。上昇率は30%に迫り、大納会としては34年ぶりの高水準に。米国のダウ平均など海外の株価指標も最高値圏を記録しており、2024年の世界経済に対する期待感が高まっています。もっとも、経済の先行き予想は当てになりません。2023年を景気後退と厳しく予想した専門家が大半を占めた1年前を思い出すだけで十分でしょう。しかも、日本経済に世界の潮流に乗って上昇する実力はあるのでしょうか。変革のチャンスは今しかない!株価が警鐘を鳴らしているとしか思えません。 

最高値は1989年12月の大納会 

 日経平均の最高値は1989年12月末の3万8957円。もうだいぶ昔の出来事。当時の私は30歳代の新聞記者。日本の輸出を牽引する自動車担当記者時代に1985年9月22日のプラザ合意に直面。超円高による不況からバブル経済までジェットコースターのような経済の浮沈を経験していた頃です。89年12月時点は、航空や海運、石油などエネルギー産業を取材しており、バブルでウハウハの航空・旅行会社の経営を取材していました。

 今でもよく覚えているのはテレビの経済番組でのあるアナリストの予想です。「日経平均の5万円も見えてきました」と自信満々に話します。すでに空回りし始めていた経済の実相を体感していましたから、呆れたものです。バブル経済が弾けたその後の物語は不要ですよね。

米国は30年間で10倍超

 2023年の大納会で付けた3万3464円。「5万円が見えてきた」との声が再び出始めていますが、89年の大納会の終値より5451円も低く、34年前の最高値を更新するにはまだ時間がかかりそうです。ただ、欧米の上昇力と比べたら、悲しくなりそうです。米国のダウ平均はこの30年間で10倍以上も増加しています。欧州もドイツは7倍以上の上昇率。日本は取り残されているのです。

 そりょそうですよ。1990年代から日本経済はGDPは実質横ばい。年収も横ばい。非正規雇用が雇用者数の4割を占め、年金や福祉など将来への不安が拭えない。日本の企業の実力も衰えています。半導体が好例です。1980年代、日本は世界の半導体シェアの過半を占める先頭を走っていましたが、韓国や台湾に追われ追い抜かれています。ここ数年、政府が1000億円単位の補助金を払って台湾のTSMCを誘致し、復権をめざしているのが現状です。鉄鋼、造船はすでに遠くから韓国や中国を眺める立場。

日本の強さは確実に衰退

 日本の強さを象徴する自動車はどうでしょうか。トヨタ自動車は世界一位の座についていますが、電気自動車(EV)ではスタートが遅れ気味。グループの日野自動車、ダイハツ工業は認証試験での不正が発覚、経営が窮地に追い込まれています。日本経済をした支えしていた基盤がかなり傷んでいます。

 円安も進みました。日本と欧米との金利差が主因といわれますが、果たしてそうでしょうか。日本銀行は2024年春の賃上げ動向を見極めてから金利引き上げへ政策転換する見通しです。一時1ドル150円台まで進みましたが、米国の金利引き下げ観測も念頭に140円台前半に戻っています。日経平均の34年ぶりの高値について、日本が再び巡航速度に戻ってきていると評するアナリストらが増えましたが、現実を正視すればとても楽観できません。

競争力は35位、経営姿勢は60位台

 円安の進行は日本の衰弱を代弁しているのです。日本の国際競争力ランキングは35位で、過去最低だそうです。ランキングを作成するIMDが公表した評価カテゴリーによると、経済状況は26位、政府の効率性は42位、ビジネス効率性は47位、インフラは23位。順位の低下を招いている政府の効率性の低さは説明不要ですよね。

 それよりも注目すべきは「経営に対する取り組む姿勢」。IMDの評価カテゴリー別に見ると、2019年から2023年までの期間では「経営プラクティス」が60位台、「取り組み・価値観」が50位台。評価対象が63カ国程度ですから、最下位に近い評価です。日本企業が自ら挑戦、変革する姿勢の不足が鮮明に浮き彫りになっています。私が現役新聞記者として取材で走り回っていた1980年代後半から1990年代前半は世界1位を守り、96年までは5位以内。当時の空気感と比較すれば、企業の衰退ぶりに納得します。

社会改革も急務

 社会はどうでしょうか。2022年のジェンダー・ギャップ指数で日本は146カ国のうち116位。女性の活用が連呼されながら、まだまだ見劣るのは事実です。だから幸福度も低いのも当然。国連の関連機関が調べた幸福度ランキングで2023年は47位。前年の54位から上昇しましたが、喜ぶレベルではありません。目先はもちろん、先行きの生活に明るさが見えないのですから、驚く順位ではありません。

 日本を変革に向けてリードする役割を負う政治はもうちょっと言いようがない。自民党は裏金作り問題などでヨタヨタ。といって野党に期待するには時期尚早という言葉がすぐに出てきます。

とにかく変革に挑戦

 2024年は世界経済の行方にかかわらず、日本が変革に挑み、一歩でも二歩でも前進しなければいけません。ロシアのウクライナ侵攻、中国の政治経済の不安定化など懸念材料は増えるばかりですが、まずは足元から再生するしかありません。日経平均の34年ぶりの高値は、バルブ経済崩壊前の日本に立ち返り、ゼロから仕切り直すよう警鐘しているのですから。

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