富良野

日本のスキー場が世界のリゾートに 日本人の姿は消え、インバウンドが主役

 外国人の富裕層向けと日本人の家族向け。日本のスキー場のコンセプトは両極端に分かれていきそうです。日本のスキー人口は長期的な減少傾向が止まらない一方、外国からのスキー客が順調に増えています。毎年、北海道と長野県のスキー場へ通っていますが、数字が示す通りの風景を実感しています。正確にカウントしているわけではありませんが、体感としては日本人スキーヤーと外国人スキーヤーは半々。日本人は家族連れか高校生などのスキースクールが目立ちます。1990年代に「わたしをスキーに連れてって」的な雰囲気はもうほとんど見当たりません。日本のスキー場は北海道のニセコのように外国人向けリゾートに変貌してしまうのではないか。案の定、そうなりそうです。

スキーの客層は2極化加速

 オーストラリアのスキーヤーが集めることで話題になった長野県白馬村の八方尾根スキー場近くに高級ホテルの建設計画が浮上しています。シンガポールのバンヤンツリーグループが日本の投資会社を介してホテルの用地を取得し、高級ホテルを建設する情報が流れています。バンヤンツリーは東南アジアや中国など世界各国で高級ホテルをチェーン展開しており、日本も京都に進出したばかりです。今後も箱根など海外でも有名な観光地にホテルを建設する方針で、白馬村もその一つです。

 白馬村はすでにオーストラリア人のみならずアジア各国からもスキー客が訪れており、シーズンを終えた直後から予約しないと希望通りの日程が設定できないという不満の声が出るほどの人気です。白馬村のスキー場は雪質が素晴らしいパウダースノーが高い評価を集めているほか、オーストラリア人ら海外のスキーヤー向けのレストランなども増え、白馬村現地の受け入れ態勢は他のスキー場より整っていることもあります。

シンガポール資本が長野、新潟に高級ホテル

 新潟県の妙高地域も、シンガポールの投資会社がスキー関連に資金を投入するそうです。日本経済新聞によると、シンガポールのペイシャンス・キャピタル・グループが2000億円を投じる計画があるようです。2000億円とは凄い金額です。カナダのウィスラーなど世界的なスキーリゾートに匹敵する可能性があると判断しています。

 日本国内のスキー人口を考えると、シンガポールなど海外からの巨額投資はちょっと信じられません。日本生産性本部の「レジャー白書」によると、スキー・スノーボード人口は1993年に1860万人まで増えましたが、バブル経済崩壊後の景気低迷やレジャーの多様化が強い向かい風となって減少し続けています。2021年は280万人まで落ち込み、「私をスキーに連れって」ブームに沸いたピーク時に比べて6分の1以上も落ち込んでいます。

 なにしろスキーウエアやスキー板やヘルメットなどスポーツを楽しむまでに必要な金額が高すぎます。スキー場にたどり着くまでにマイカーかバスや電車を利用するので、交通費も多額です。スキー場に着いてもリフト券を購入しなけれ行けません。日帰りスキーは往復に時間を費やすため、楽しめる時間もそんなに長くなく、といって宿泊すればホテル代などの負担が増えます。楽しいスポーツですが、そのために必要な金額を想像するとため息が出ます。費用対効果を考えれば、若者がスキーから遠ざかるのは当然です。自然、日本のスキー場の多くは、家族と共に日帰りスキーを楽しめる地元の客が主力になってしまいます。国内のスキー人口が減少するのも頷けるはずです。

日本人は減少、外国人は増加

 これに対し、海外から訪れるスキー客は順調に伸びています。コロナ禍前の2018年は96万人まで増え、4年前の2014年の倍以上の伸びです。1人当たりの支出金額は22万円を超え、平均的なインバンドの旅行客より30%以上も高いそうです。スキー用具店が多い東京・神保町で話を聞くと、購入するほとんどの人が外国人。ウエア、スキー板などひと揃いを一度に購入する人も多く、「日本人の影が薄い」と苦笑していました。

 コロナ禍が収束した2022年末からのスキーシーズンは、北海道や長野県の人気スキー場で外国人スキーヤーの姿が一気に増えています。世界的に有名なニセコはまさに最高級のホテルが相次いで開業し、宿泊料金の高騰などでニセコへ向かう気力が失せてしまいました。

 人気ゲレンデを抱える地域は世界的なリゾートとして進化するのでしょう。スキー場を経営する自治体は多く、海外から訪問客が増えた結果、地域経済が潤うのは大歓迎です。四季を通してインバウンド消費が日本経済を下支えする構造変革は、観光産業だけでなく地域経済の意識の変化も促します。ただ、大半のスキー場は地域の家族連れを中心にした地域のホームゲレンデとして生き残っても、沈滞から抜け出せないかもしれません。スキーが趣味の人間としては、ますます日本人のスキーヤーが減るのではないかと心配ですが、今冬のゲレンデを見てから続きを書きたいと考えています。

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