カメラに向かって笑う

南太平洋⑦ ブーゲンビル島 We have a big torch

  ”川風呂”にはまりました。赤道直下の島の気候は日中、汗をたくさん流します。気分転換は川風呂しかありません。夕暮れに涼しくなると、そろそろ川へ行こうかと気持ちがそわそわします。しかし、その時間帯はマラリアを媒介する蚊にとっても餌を求めて飛ぶ時間帯です。蚊が飛び交う川の草むら近くで裸になって、いやパンツははいていますが、川で身体を洗うなんで「翔んで火に入る虫」ならぬ「血を吸ってくれと裸になる人間」です。ですから、「川風呂はこんなに気持ち良いとは思わなかった」と喜びながらも、心の底ではビクビクしていました。

川のお風呂にハマる

 仲が良くなったパプア・ニューギニアの記者は私の心中を察して一度、夜に行こうと時間を変えて誘ってくれました。夜道は暗いから、私は懐中電灯を探そうとガサゴソとバッグに手を入れようとしたら、肩に手をやり「いらないよ」と言います。「いやあ、道に迷ったら、ヤバイから」って答えたら、彼は夜空を指差します。「We have a  big torch」。指差した先には満月が輝いています。周囲に電灯はないので、砂利道ですが表面は月の光で反射して光っています。川までの道筋がスッと光の線で引かれているように向こうへ走っています。この地域は安全と分かっているとはいえ、平和維持軍が設定した中立地帯です。ちょっとは神経は使います。夜は遠くから銃撃が聞こえる時は1度や2度ではありません。でも、満月の光の下を歩けば、わざわざ電池を使わずに自然の光が示す通りに歩くと川へ辿り着きます。当たり前のことを当たり前に気づいただけです。月の明かりがとても明るいのを改めて知りました。夜道を歩く時、電柱と電灯がないと歩けないと勘違いしていることを思い知りました。

 自然に任せれば何も問題がないことを忘れ、そして目の前から消し去っている風景が多いことを教えてもらいました。満月の光の次は雨水でした。南太平洋平和維持軍が設定した中立地帯から歩くと、集落があちこちに点在します。その集落を訪れると家々の屋根に大きなタンクが設置されています。日本の感覚で言えば、直径5メートル程度のタンクでしょうか。でかいです。「これ何に使うの?」と地元の住民に聞いたら、「雨水を溜めるため」と教えてくれました。そりゃそうだよね、目からウロコです。水道が無いんですから。みんな毎日コンビニに行ってミネラルウォーターを買って飲んでいるわけないんです。島に川が流れているとはいえ、川から水を持ってくるのは水道工事が必要です。そんな工事する余裕はないです。だから空から降る雨水を利用するのです。でも熱帯とはいえ毎日雨が降るわけではないです。ですから溜めた雨水が腐る恐れもあるのですが、心配になったら沸騰させて使うそうです。

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